業務の廃止手順|やめて困る人を先に洗い出す
改善というと、何かを足す話になりがちです。ただ、現場の負担が重くなっている原因は、過去に足したものが残り続けていることのほうが多くあります。
やめるのが難しいのは、やめて困る人がいるかどうかが分からないためです。この記事では、業務の廃止手順を、やめる判断、影響の洗い出し、周知、様子を見る期間の順にまとめます。作業でも、書類でも、チェック項目でも同じ型が使えます。
この記事の内容(8項目)
- 業務の廃止手順は、影響の洗い出しから
- 「月末だけ使う」を見落とす
- 外部への提出を必ず確認する
- やめる候補の見つけ方
- 過去の対策の残骸がいちばん多い
- 二重チェックは、片方をやめる候補
- 現場に「要らないもの」を聞く
- やめるかどうかの判断
- 対策として入っているものは慎重に
- 「減らす」を選べるようにする
- 法令や契約に関わるものは、確認してから
- 戻せる形でやめる
- いきなり削除しない
- やめた記録を残す意味
- 様子を見る期間を決める
- 周知のしかた
- 使っていた人には、代わりを案内する
- 教育の資料からも外す
- 手順書の改訂とセットで扱う
- やめることは変更点管理の対象
- やめる変更のほうが見落とされやすい
- やめた直後は、通常より注意して見る
- 年に1回、やめた件数を数える
- 業務の廃止でつまずきやすい3つ
- その1:やめる権限が誰にあるか分からない
- その2:やめた理由が残らない
- その3:やめっぱなしにする
- よくある質問
業務の廃止手順は、影響の洗い出しから
やめると決める前に、その作業の出力を誰が使っているかを確かめます。ここを飛ばすと、やめたあとに困る人が出ます。
| 確認すること | 聞く相手 |
|---|---|
| その出力を誰が使っているか | 後工程、他部署、事務 |
| 何のために使っているか | 使っている人 |
| 使う頻度 | 毎日か、月末だけか、年1回か |
| 代わりの情報源があるか | 他の記録で足りないか |
| 外部への提出に使っていないか | 客先、行政、監査 |
「月末だけ使う」を見落とす
毎日見ている人には気づきますが、月に1回、年に1回しか使わない人は見落とされます。やめる前に、頻度の低い使い方が無いかを聞くと、この漏れが防げます。
外部への提出を必ず確認する
客先への提出、行政への報告、監査での提示に使っている書類は、社内の判断だけではやめられません。提出先があるかどうかは、最初に確認します。
やめる候補の見つけ方
やめる候補は、意識して探さないと出てきません。4つの入口から探します。
| 入口 | 探し方 | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 誰も見ていない記録 | 提出後に開かれているかを聞く | 作るだけで使われていない書類 |
| 過去の対策の残骸 | 対策の一覧を見て、いまも要るか確認 | 製品が終わったのに残っている確認 |
| 重複している確認 | 同じことを2工程で見ていないか | 二重チェック |
| 現場からの声 | 改善提案、ヒヤリハット、日々の会話 | 「これ要りますか」という疑問 |
過去の対策の残骸がいちばん多い
不具合が出るたびに確認を足していくと、もう作っていない製品のための確認が残ります。対策の一覧を年に1回見直すと、こうしたものが見つかります。
二重チェックは、片方をやめる候補
同じ項目を2工程で確認している場合、どちらかは形だけになっていることが多い状態です。前の工程が見ているから後ろは軽く、後ろが見るから前も軽く、という形になります。どちらか1つに集約するほうが確実になります。
現場に「要らないもの」を聞く
「改善案はありますか」と聞くより、「これは要らないと思うものはありますか」と聞くほうが出てきます。足す話より、減らす話のほうが現場は答えやすいものです。
やめるかどうかの判断
影響を洗い出したら、判断します。やめる、減らす、続けるの3つから選びます。
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 誰も使っていない。提出先も無い | やめる |
| 使っているが、別の記録で足りる | やめる。使っている人に代替を案内する |
| 使っているが、頻度が低い | 減らす。毎日から週1回へ、など |
| 提出先がある/法令や契約で求められている | 続ける。やめられない |
| 不具合の対策として入っている | その不具合の状況を見て判断。安易にやめない |
対策として入っているものは慎重に
過去の不具合の対策として追加された確認は、やめた途端に再発することがあります。その不具合が最近出ていないのは、この確認が効いているからかもしれません。減らす(頻度を落とす)から始めるほうが安全です。
「減らす」を選べるようにする
やめるか続けるかの二択にすると、判断が重くなります。頻度を落とす、対象を絞る、簡略化するという中間があると、動きやすくなります。
法令や契約に関わるものは、確認してから
法令で作成や保存が求められている記録、契約で提出が定められている書類は、社内の判断でやめられません。該当するかどうかを、所管の行政庁や契約書で確認してから判断します。
戻せる形でやめる
やめたあとに困る人が出ることはあります。戻せる形にしておくと、その場で対応できます。
| やること | 理由 |
|---|---|
| いきなり削除せず、一定期間は保管する | 戻したくなったときに使える |
| やめた日を記録する | いつから無いのかが分かる |
| やめた理由を書く | 次に同じ議論が出たときの材料になる |
| 戻す条件を書く | 「困る人が出たら戻す」でよい |
| 様子を見る期間を決める | 1〜3か月。その間は問い合わせに注意する |
いきなり削除しない
書類や記録の様式は、やめた時点で削除せず、旧版として別の場所に置きます。戻したくなったときに作り直す手間が省けます。数か月経って問い合わせが無ければ、そのとき整理します。
やめた記録を残す意味
1年後に「この確認は無いのか」と聞かれたとき、いつ、なぜやめたかが分かると説明できます。記録が無いと、抜け落ちたのか意図してやめたのかが区別できません。監査で聞かれる場面もあるので、1行の記録が説明の材料になります。
様子を見る期間を決める
やめてから1か月から3か月は、問い合わせが来ないかに注意します。この期間に何も無ければ、やめて正解だったということです。
周知のしかた
やめることも、始めることと同じように周知が要ります。知らずに探し続ける人が出ないようにします。
| 伝える相手 | 伝える内容 |
|---|---|
| 作っていた人 | いつからやめるか。作らなくてよいこと |
| 使っていた人 | やめる理由。代わりに何を見るか |
| 関連する部署 | 影響が及ぶ範囲 |
| 新しく入る人 | 教育の資料からも外す |
使っていた人には、代わりを案内する
「やめました」だけだと、その人の仕事が止まります。代わりにどの記録を見ればよいかを添えると、抵抗なく受け入れられます。代わりが無いなら、その人の仕事がどう変わるかを一緒に考えます。
教育の資料からも外す
手順書からは削除しても、教育の資料に残っていると、新しく入る人が覚えてしまいます。やめたものが載っている場所を全部洗うのは、始めるときの周知より抜けやすい部分です。
手順書の改訂とセットで扱う
作業をやめるなら、手順書からその項目を削ります。やめた記録と、手順書の改訂は同時に進めます。片方だけだと、手順書には残っているのに実際にはやっていない、という状態になります。改訂の進め方は作業標準の改訂で扱っています。
やめることは変更点管理の対象
作業をやめるのは、方法(Method)の変更です。足すときと同じように、変更点として扱います。
| 足す変更 | やめる変更 |
|---|---|
| 確認を1つ追加する | 確認を1つやめる |
| 作業時間が増える | 作業時間が減る |
| 効果を確認する | 問題が出ないことを確認する |
| 届け出て、事前に確認する | 届け出て、事前に確認する(同じ) |
やめる変更のほうが見落とされやすい
足す変更は「新しいことをする」ので意識されますが、やめる変更は何もしないだけなので、届け出が漏れます。変更点管理の対象に「廃止」を明記しておくと、拾えます。
やめた直後は、通常より注意して見る
確認をやめた直後は、その確認で止めていた不具合が出るかもしれません。変更直後の初品を重点的に見るのは、足すときと同じです。変更点管理の進め方は変更点管理の進め方にまとめました。
年に1回、やめた件数を数える
足した件数だけでなく、やめた件数も数えると、現場の負担が増え続けていないかが分かります。足す一方の年が続いているなら、どこかで重くなっています。
業務の廃止でつまずきやすい3つ
その1:やめる権限が誰にあるか分からない
始めた人が異動していると、誰がやめると言えるのか分からなくなります。いまその業務の責任を持っている部署が判断すると決めておくと、動きます。決めた人を探す必要はありません。
その2:やめた理由が残らない
1年後に「なぜこの確認が無いのか」と聞かれたとき、記録が無いと答えられません。やめた日と理由の1行があれば足ります。書くのに1分もかかりません。
その3:やめっぱなしにする
やめたあと、問題が出ていないかを見ないと、気づかないうちに不具合が増えていることがあります。1か月から3か月、問い合わせが来ないかだけ注意します。
よくある質問
- Q. 業務をやめる前に何を確認すべきですか?
- その出力を誰が使っているか、何のために使っているか、使う頻度、代わりの情報源があるか、外部への提出に使っていないかの5つです。とくに月に1回や年に1回しか使わない人は見落とされやすいので、頻度の低い使い方を聞いてください。
- Q. やめる候補はどう見つけますか?
- 誰も見ていない記録、過去の対策の残骸、重複している確認、現場からの声の4つが入口です。「改善案はありますか」より「これは要らないと思うものはありますか」と聞くほうが出てきます。
- Q. 過去の不具合対策として入っている確認をやめてもよいですか?
- 慎重に判断してください。その不具合が最近出ていないのは、その確認が効いているからかもしれません。いきなりやめるより、頻度を落とす(毎日から週1回へ)ところから始めるほうが安全です。
- Q. やめたあと、困る人が出たらどうしますか?
- 戻せる形にしておいてください。書類の様式はいきなり削除せず旧版として保管し、やめた日と理由、戻す条件を記録に残します。1か月から3か月は問い合わせが来ないか注意してください。
- Q. やめることも変更点管理の対象ですか?
- 対象です。作業をやめるのは方法の変更にあたります。ただ、足す変更と違って「何もしないだけ」なので届け出が漏れやすくなります。変更点管理の対象に「廃止」を明記しておくと拾えます。
- Q. やめる判断は誰がすべきですか?
- いまその業務の責任を持っている部署です。始めた人が異動していることも多いので、決めた人を探す必要はありません。責任部署が判断すると決めておくと動きます。
- Q. 法令で定められた記録もやめられますか?
- 社内の判断ではやめられません。業種や取引によって、記録の作成や保存が法令・契約で定められている場合があります。該当するかどうかは、所管の行政庁または契約書でご確認ください。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。