対策と期限

業務の廃止手順|やめて困る人を先に洗い出す

公開 2026-08-30 執筆 改善板 編集部

改善というと、何かを足す話になりがちです。ただ、現場の負担が重くなっている原因は、過去に足したものが残り続けていることのほうが多くあります。

やめるのが難しいのは、やめて困る人がいるかどうかが分からないためです。この記事では、業務の廃止手順を、やめる判断、影響の洗い出し、周知、様子を見る期間の順にまとめます。作業でも、書類でも、チェック項目でも同じ型が使えます。

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この記事の内容(8項目)

業務の廃止手順は、影響の洗い出しから

やめると決める前に、その作業の出力を誰が使っているかを確かめます。ここを飛ばすと、やめたあとに困る人が出ます。

廃止の進み方
1. 候補を出すやめたい作業・書類
2. 影響を洗う誰が使っているか
3. 判断やめる/減らす/続ける
4. 周知いつからやめるか
5. 様子を見る困る人が出ないか
2を飛ばすと、5で問題が出る。誰も使っていないと思っていた書類を、月末に誰かが使っている
確認すること聞く相手
その出力を誰が使っているか後工程、他部署、事務
何のために使っているか使っている人
使う頻度毎日か、月末だけか、年1回か
代わりの情報源があるか他の記録で足りないか
外部への提出に使っていないか客先、行政、監査

「月末だけ使う」を見落とす

毎日見ている人には気づきますが、月に1回、年に1回しか使わない人は見落とされます。やめる前に、頻度の低い使い方が無いかを聞くと、この漏れが防げます。

外部への提出を必ず確認する

客先への提出、行政への報告、監査での提示に使っている書類は、社内の判断だけではやめられません。提出先があるかどうかは、最初に確認します。

やめる候補の見つけ方

やめる候補は、意識して探さないと出てきません。4つの入口から探します。

入口探し方出てくるもの
誰も見ていない記録提出後に開かれているかを聞く作るだけで使われていない書類
過去の対策の残骸対策の一覧を見て、いまも要るか確認製品が終わったのに残っている確認
重複している確認同じことを2工程で見ていないか二重チェック
現場からの声改善提案、ヒヤリハット、日々の会話「これ要りますか」という疑問

過去の対策の残骸がいちばん多い

不具合が出るたびに確認を足していくと、もう作っていない製品のための確認が残ります。対策の一覧を年に1回見直すと、こうしたものが見つかります。

二重チェックは、片方をやめる候補

同じ項目を2工程で確認している場合、どちらかは形だけになっていることが多い状態です。前の工程が見ているから後ろは軽く、後ろが見るから前も軽く、という形になります。どちらか1つに集約するほうが確実になります。

現場に「要らないもの」を聞く

「改善案はありますか」と聞くより、「これは要らないと思うものはありますか」と聞くほうが出てきます。足す話より、減らす話のほうが現場は答えやすいものです。

やめるかどうかの判断

影響を洗い出したら、判断します。やめる、減らす、続けるの3つから選びます。

状態判断
誰も使っていない。提出先も無いやめる
使っているが、別の記録で足りるやめる。使っている人に代替を案内する
使っているが、頻度が低い減らす。毎日から週1回へ、など
提出先がある/法令や契約で求められている続ける。やめられない
不具合の対策として入っているその不具合の状況を見て判断。安易にやめない

対策として入っているものは慎重に

過去の不具合の対策として追加された確認は、やめた途端に再発することがあります。その不具合が最近出ていないのは、この確認が効いているからかもしれません。減らす(頻度を落とす)から始めるほうが安全です。

「減らす」を選べるようにする

やめるか続けるかの二択にすると、判断が重くなります。頻度を落とす、対象を絞る、簡略化するという中間があると、動きやすくなります。

法令や契約に関わるものは、確認してから

法令で作成や保存が求められている記録、契約で提出が定められている書類は、社内の判断でやめられません。該当するかどうかを、所管の行政庁や契約書で確認してから判断します。

戻せる形でやめる

やめたあとに困る人が出ることはあります。戻せる形にしておくと、その場で対応できます。

やること理由
いきなり削除せず、一定期間は保管する戻したくなったときに使える
やめた日を記録するいつから無いのかが分かる
やめた理由を書く次に同じ議論が出たときの材料になる
戻す条件を書く「困る人が出たら戻す」でよい
様子を見る期間を決める1〜3か月。その間は問い合わせに注意する

いきなり削除しない

書類や記録の様式は、やめた時点で削除せず、旧版として別の場所に置きます。戻したくなったときに作り直す手間が省けます。数か月経って問い合わせが無ければ、そのとき整理します。

やめた記録を残す意味

1年後に「この確認は無いのか」と聞かれたとき、いつ、なぜやめたかが分かると説明できます。記録が無いと、抜け落ちたのか意図してやめたのかが区別できません。監査で聞かれる場面もあるので、1行の記録が説明の材料になります。

様子を見る期間を決める

やめてから1か月から3か月は、問い合わせが来ないかに注意します。この期間に何も無ければ、やめて正解だったということです。

周知のしかた

やめることも、始めることと同じように周知が要ります。知らずに探し続ける人が出ないようにします。

伝える相手伝える内容
作っていた人いつからやめるか。作らなくてよいこと
使っていた人やめる理由。代わりに何を見るか
関連する部署影響が及ぶ範囲
新しく入る人教育の資料からも外す

使っていた人には、代わりを案内する

「やめました」だけだと、その人の仕事が止まります。代わりにどの記録を見ればよいかを添えると、抵抗なく受け入れられます。代わりが無いなら、その人の仕事がどう変わるかを一緒に考えます。

教育の資料からも外す

手順書からは削除しても、教育の資料に残っていると、新しく入る人が覚えてしまいます。やめたものが載っている場所を全部洗うのは、始めるときの周知より抜けやすい部分です。

手順書の改訂とセットで扱う

作業をやめるなら、手順書からその項目を削ります。やめた記録と、手順書の改訂は同時に進めます。片方だけだと、手順書には残っているのに実際にはやっていない、という状態になります。改訂の進め方は作業標準の改訂で扱っています。

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やめることは変更点管理の対象

作業をやめるのは、方法(Method)の変更です。足すときと同じように、変更点として扱います。

足す変更やめる変更
確認を1つ追加する確認を1つやめる
作業時間が増える作業時間が減る
効果を確認する問題が出ないことを確認する
届け出て、事前に確認する届け出て、事前に確認する(同じ)

やめる変更のほうが見落とされやすい

足す変更は「新しいことをする」ので意識されますが、やめる変更は何もしないだけなので、届け出が漏れます。変更点管理の対象に「廃止」を明記しておくと、拾えます。

やめた直後は、通常より注意して見る

確認をやめた直後は、その確認で止めていた不具合が出るかもしれません。変更直後の初品を重点的に見るのは、足すときと同じです。変更点管理の進め方は変更点管理の進め方にまとめました。

年に1回、やめた件数を数える

足した件数だけでなく、やめた件数も数えると、現場の負担が増え続けていないかが分かります。足す一方の年が続いているなら、どこかで重くなっています。

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業務の廃止でつまずきやすい3つ

その1:やめる権限が誰にあるか分からない

始めた人が異動していると、誰がやめると言えるのか分からなくなります。いまその業務の責任を持っている部署が判断すると決めておくと、動きます。決めた人を探す必要はありません。

その2:やめた理由が残らない

1年後に「なぜこの確認が無いのか」と聞かれたとき、記録が無いと答えられません。やめた日と理由の1行があれば足ります。書くのに1分もかかりません。

その3:やめっぱなしにする

やめたあと、問題が出ていないかを見ないと、気づかないうちに不具合が増えていることがあります。1か月から3か月、問い合わせが来ないかだけ注意します。

法令や契約で求められている記録について 業種や取引によっては、記録の作成や保存が法令・契約で定められている場合があります。この記事は、社内で任意に作っている記録や作業をやめるときの手順を扱っています。法令上の義務があるかどうかは、所管の行政庁または契約書でご確認ください。

よくある質問

Q. 業務をやめる前に何を確認すべきですか?
その出力を誰が使っているか、何のために使っているか、使う頻度、代わりの情報源があるか、外部への提出に使っていないかの5つです。とくに月に1回や年に1回しか使わない人は見落とされやすいので、頻度の低い使い方を聞いてください。
Q. やめる候補はどう見つけますか?
誰も見ていない記録、過去の対策の残骸、重複している確認、現場からの声の4つが入口です。「改善案はありますか」より「これは要らないと思うものはありますか」と聞くほうが出てきます。
Q. 過去の不具合対策として入っている確認をやめてもよいですか?
慎重に判断してください。その不具合が最近出ていないのは、その確認が効いているからかもしれません。いきなりやめるより、頻度を落とす(毎日から週1回へ)ところから始めるほうが安全です。
Q. やめたあと、困る人が出たらどうしますか?
戻せる形にしておいてください。書類の様式はいきなり削除せず旧版として保管し、やめた日と理由、戻す条件を記録に残します。1か月から3か月は問い合わせが来ないか注意してください。
Q. やめることも変更点管理の対象ですか?
対象です。作業をやめるのは方法の変更にあたります。ただ、足す変更と違って「何もしないだけ」なので届け出が漏れやすくなります。変更点管理の対象に「廃止」を明記しておくと拾えます。
Q. やめる判断は誰がすべきですか?
いまその業務の責任を持っている部署です。始めた人が異動していることも多いので、決めた人を探す必要はありません。責任部署が判断すると決めておくと動きます。
Q. 法令で定められた記録もやめられますか?
社内の判断ではやめられません。業種や取引によって、記録の作成や保存が法令・契約で定められている場合があります。該当するかどうかは、所管の行政庁または契約書でご確認ください。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。