再発防止の進め方|5段階の手順と、対策を標準に落とすコツ
再発防止という言葉は、対策を決めるところまでを指して使われがちです。ただ、同じ不具合が半年後にまた出るとき、対策そのものが間違っていたケースは多くありません。決めた対策が、標準に落ちていなかったというケースのほうがずっと多くあります。
一般には、再発防止は「原因を特定する、対策を決める、実施する、標準に反映する、効果を確認する」の5段階で進めます。この記事では、再発防止の進め方をこの5段階に沿って、それぞれで何を決めて何を残すかまでまとめます。言葉の定義と報告書の欄は是正処置とは、効いたかを見る時期と判定の基準は是正処置の有効性確認で詳しく扱っています。
この記事の内容(11項目)
- 再発防止の進め方は5段階
- 対策は「誰が読んでも同じ動作になるか」で見る
- 人の注意力に頼る対策は、最後の手段にする
- 再発防止の対策を、標準に落とす
- 版を上げて、いつから有効かを書く
- 周知したことを記録に残す
- 効果の確認は、時期と基準を先に決める
- 件数がもともと少ないときの見方
- 効いていなかったときに戻る場所
- 同じ原因を持つ場所へ広げる
- 全部に広げようとすると止まる
- 広げた先で「対象外」と判断した理由も残す
- 再発防止の記録を、どこに分けて置くか
- 同じことを2か所に書かない
- 会議で読むのは一覧だけにする
- 再発防止を続けるコツ:続かない現場に共通する3つ
- その1:対策の持ち主がいない
- その2:期限が1つしかない
- その3:会議で確認する場が無い
- 再発防止にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 再発防止に出てくる用語
- 再発防止と一緒に押さえておきたいこと
- 客先に出す再発防止策は、段階ごとの結論だけを書く
- 労働災害の再発防止は、死傷病報告の「原因」とそろえる
- 外注先が原因のときは、求め方に決まりがある
- 標準に落とした対策は、変更のたびに崩れる
- よくある質問
再発防止の進め方は5段階
再発防止の進め方を段階に分けると、次の5つになります。よく抜けるのは4と5です。
| 段階 | 終わったと言える条件 | 残すもの |
|---|---|---|
| 1. 原因の特定 | 発生・流出の両方に確定原因がある | 分析シート、是正処置報告書 |
| 2. 対策の決定 | 案を3つ比べて、選んだ理由がある | 対策案の比較表 |
| 3. 実施 | 現場で実物を確認した | 実施計画表(実施日・確認者) |
| 4. 標準化 | 改訂した文書の名前と版が分かる | 作業標準の改訂記録 |
| 5. 効果確認 | 基準を決めて、数字で判定した | 有効性レビューの一覧 |
対策は「誰が読んでも同じ動作になるか」で見る
再発防止の対策として書かれる文章には、動作にならないものが混ざります。見分け方は単純で、3人に読ませて同じ動作になるかどうかです。
| 書かれた対策 | 動作になるか | 言い換え |
|---|---|---|
| 以後、注意して作業する | ならない | 作業台に位置決めの見本を掲示し、貼付前に照合する |
| ダブルチェックを徹底する | ならない(誰が・いつ・何を見るかが無い) | 出荷前に、担当以外が品番と数量を照合し、記録に署名する |
| 教育を実施する | ならない(内容と対象が無い) | 対象3名に、9月10日までに手順書A-12で再教育し、理解度を確認する |
| 手順書を見直す | ならない(どこを、いつまでかが無い) | 9月15日までに、手順書A-12の第4項に位置の許容差を追記する |
人の注意力に頼る対策は、最後の手段にする
対策には強さの順序があります。一般には、次の順で上ほど効きます。上のほうが費用も時間もかかるので、現実には下のものを併用しますが、下だけで終わらせないのが目安です。
再発防止の対策を、標準に落とす
4段階目の標準化が、再発防止でいちばん抜けます。対策を打った時点では現場が覚えているので、動いているように見えるためです。
| 落とす先 | 何を書き足すか |
|---|---|
| 作業標準書・手順書 | 変わった動作。順番が変わったなら、その順番も |
| 検査基準書 | 追加した項目、変えた頻度、判定の基準 |
| チェックシート・日報の様式 | 新しく確認する欄。欄が無いと確認が定着しない |
| 教育の資料 | 次に入る人が、最初からその形で覚えられるように |
| 限度見本・基準見本 | 合否の見た目が変わったなら、見本も作り直す |
版を上げて、いつから有効かを書く
改訂したら版数を上げ、いつから適用するかを書きます。版が無いと、現場に古い版が残っていても気づけません。掲示している紙を差し替えたか、旧版を回収したかまで記録に残すと、あとで「誰が旧版で作業していたか」を追えます。
周知したことを記録に残す
改訂しただけでは、現場は変わりません。朝礼で説明した日付と、対象者の範囲を残しておくと、知らなかったという状態が残っているかどうかが分かります。改訂と周知の記録の残し方は作業標準の改訂で扱っています。
効果の確認は、時期と基準を先に決める
5段階目の効果確認は、「そういえば最近出ていないね」で済まされがちです。基準を先に決めておくと、判定が会話ではなく数字になります。
| 決めておくこと | 例 |
|---|---|
| いつ見るか | 対策後3ロット/1か月後/3か月後 |
| 何を見るか | 同じ現象の発生件数、不良率、工程内での検出件数 |
| どうなったら効いたと判定するか | 3ロット連続で発生ゼロ/不良率が対策前の半分以下 |
| 効いていなかったらどうするか | 暫定対策を継続し、原因分析に戻る |
件数がもともと少ないときの見方
もともと年に2、3件しか起きない不具合では、1か月見ても出ないのは当たり前です。件数で判定できないときは、対策が守られているかどうかで見ます。治具が使われているか、追加した検査が記録に残っているか、といった実施の状態を見にいく形です。
効いていなかったときに戻る場所
効果が出ていない場合、戻る先は原因分析です。対策の作りが悪かったのか、原因の特定が違っていたのかで、やり直す範囲が変わります。判定の時期と基準の決め方は是正処置の有効性確認にまとめました。
同じ原因を持つ場所へ広げる
1つの案件で原因が分かったら、同じ原因を持つ場所が他にないかを見にいきます。ここまでやって、再発防止は一巡します。
| 広げる軸 | 見るもの |
|---|---|
| 同じ設備を使っている工程 | 設備の設定・治具・保全の履歴 |
| 同じ作り方をしている製品 | 手順書、検査項目 |
| 同じ人が担当している作業 | 力量、引き継ぎの記録 |
| 同じ仕入先から来る材料 | 受入の基準、品質連絡の内容 |
全部に広げようとすると止まる
水平展開の対象を広く取りすぎると、確認が終わらずに立ち消えになります。同じ原因が成り立つ範囲だけに絞ると、数が現実的になります。範囲の決め方は水平展開の進め方で扱っています。
広げた先で「対象外」と判断した理由も残す
見にいって、そこは大丈夫だったという結論も記録に残します。確認した記録が無いと、次に同じ不具合が出たときに、また同じ場所を見に行くことになります。
再発防止の記録を、どこに分けて置くか
再発防止の記録を1枚の報告書にまとめると、書く側も読む側も重くなります。読む人と読む時期で分けると、それぞれが薄くなり、続きます。
| 置き場所 | 持たせる内容 | 読む人・時期 |
|---|---|---|
| 不具合の一覧 | 受付から完了までの状態。1件1行 | 担当者が毎日 |
| 恒久対策 実施計画 | 手順ごとの担当・期限・実施日 | 責任者が週次 |
| 作業標準の改訂記録 | 改訂した文書名・版・周知日 | 文書を管理する人・監査 |
| 有効性レビューの一覧 | 確認予定日・指標・判定 | 責任者が月次 |
| 是正処置報告書 | 1案件の結論だけ | 客先・監査・数か月後に読む人 |
同じことを2か所に書かない
分けたときに起きやすいのが、同じ内容を複数の紙に書き写す状態です。転記が増えると、どこかが古いまま残ります。管理番号でつないで、詳細は1か所にだけ書くという決め方にすると、転記が減ります。
会議で読むのは一覧だけにする
進捗を見る会議で報告書を1枚ずつ読むと、時間が足りません。一覧で期限切れと未判定の行だけを拾い、必要なものだけ報告書を開くという読み方にすると、10分で回ります。件数が増えても時間が伸びにくいのが利点です。
再発防止を続けるコツ:続かない現場に共通する3つ
その1:対策の持ち主がいない
会議で決まった対策に担当者が付いていないと、誰も動かしません。部署名ではなく個人名を書くだけで、実施率が変わります。部署に振ると、部署の中でまた誰がやるかの相談が始まります。
その2:期限が1つしかない
「9月末までに再発防止を完了する」という書き方だと、9月下旬まで何も動きません。手順に分けて、それぞれに期限を置くと、途中で止まっている場所が見えます。
その3:会議で確認する場が無い
対策の実施状況を見る場が無いと、期限の管理が担当者の記憶になります。月に1回、期限切れの行だけ読む場を作ると、それだけで進み方が変わります。読むのは全件ではなく、遅れているものだけで十分です。
実施できなかった理由の残し方は対策が実施されない理由、対策が現場で続いているかの確かめ方は対策の定着で扱っています。
再発防止にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
再発防止の進め方そのものを決めた法令はありません。ただ、品質の規格、外注先との取引、労働災害の報告のそれぞれで、再発防止の記録の残し方に関わる変更がありました。日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 再発防止の進め方への影響 |
|---|---|---|
| 2024年2月23日 | ISO 9001:2015 の追補1(気候変動への対応)が発行 | 不適合と是正処置の箇条(10.2)は変わっていない。5段階の進め方はそのまま使える |
| 2025年1月1日 | 労働者死傷病報告が、原則として電子申請で出す形になった(労働安全衛生規則97条)。報告事項に、発生状況とその略図、原因が並ぶ | 労働災害の再発防止では、報告に書いた発生状況と原因が、段階1の出発点になる |
| 2026年1月1日 | 下請法を改めた取適法(2025年5月23日公布)が施行 | 外注先に再発防止策ややり直しを求めるときの線引きに関係する(第5条第2項第3号) |
| 2026年5月27日 | 令和7年(2025年)の労働災害発生状況(確定値)を厚生労働省が公表。死亡者700人のうち、墜落・転落186人、はさまれ・巻き込まれ117人 | 設備まわりの災害は、人の注意ではなく構造や治具で防ぐ対策が求められやすい |
| 2026年9月16日 | ISO 9001:2026 が発行。2015年版からの移行期限は2029年9月30日とされている | 手順書や報告書の様式に書いた箇条番号は、移行のときに一緒に直す |
再発防止の進め方で見ておきたいのは、どの変更も「何を記録に残すか」に関わっていることです。段階ごとに残すものを決めておけば、規格の版が変わっても、報告の出し方が変わっても、書き直すのは様式の一部で済みます。
出典:ISO 9001:2015/Amd 1:2024(ISO)、労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)、取適法(e-Gov法令検索)、令和7年の労働災害発生状況(厚生労働省)、ISO 9001:2026 の発行(ISO)
確認日は2026年10月3日です。労働災害の報告は所轄の労働基準監督署に、取適法の扱いは公正取引委員会または中小企業庁の相談窓口に、規格の移行の時期は認証を受けている認証機関にご確認ください。
再発防止に出てくる用語
再発防止の会議では、規格の言葉と現場の言葉が混ざって使われます。5段階のどこで使う言葉かを添えて並べます。規格の用語をくわしく見たいときは是正処置とはの用語の表が詳しく扱っています。
| 用語 | 意味 | 出典 | 使う段階 |
|---|---|---|---|
| 再発防止 | 同じ不具合や事故を二度と起こさないための取り組み全体 | 法令・規格上の定義はない。規格で近いのは是正処置(JIS Q 9000:2015 3.12.2) | 全体 |
| 応急処置・暫定対策 | 原因が分かる前に、被害を広げないために打つ手 | 法令・規格上の定義はない | 1の前 |
| 恒久対策 | 確定した原因を取り除き、同じことが起きない状態を作る対策 | 法令・規格上の定義はない | 2・3 |
| 標準化 | 決めた対策を、手順書・基準書・様式に書き込んで、誰がやっても同じになる形にすること | 現場で使われる言葉。この記事での使い方 | 4 |
| 歯止め | 標準化した対策が、時間がたっても崩れないようにする仕組み | 現場で使われる言葉。法令・規格上の定義はない | 4 |
| 有効性 | 計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度 | JIS Q 9000:2015 3.7.11 | 5 |
| 水平展開 | 同じ原因を持つ別の工程や製品にも対策を広げること | 規格上の定義はない。ISO 9001:2015 10.2.1 b) 3) の「類似の不適合」の確認が近い | 5の後 |
再発防止の言葉でポイントになるのは、暫定対策と恒久対策を同じ欄に書かないことです。暫定対策だけで案件を閉じると、段階4と5が始まりません。違いの具体例は暫定対策と恒久対策の違いにまとめています。
再発防止と一緒に押さえておきたいこと
再発防止の進め方の解説は、社内で対策を回すところで終わることが多くあります。社外に出す報告、労働災害、外注先、変更のときの扱いという、進め方の外側でつまずきやすいものを4つ挙げます。
客先に出す再発防止策は、段階ごとの結論だけを書く
客先に提出する報告書では、社内の分析シートをそのまま付けると、読み手が結論を探すことになります。確定原因(発生と流出)、恒久対策、標準に落とした文書と版、効果を見る時期の4つを1枚にまとめると、何を約束したかがはっきりします。客先から書式を指定されることが多い8Dレポートの書き方は8Dレポートとはで扱っています。
労働災害の再発防止は、死傷病報告の「原因」とそろえる
休業を伴う労働災害では、労働者死傷病報告を所轄の労働基準監督署長に出すこととされ、報告事項には発生状況と原因が含まれます(労働安全衛生規則97条)。2025年1月からは、原則として電子申請で出す形になりました。報告に書いた原因と、社内の再発防止の分析シートの原因をそろえておくと、監督署から説明を求められたときに食い違いが出ません。
外注先が原因のときは、求め方に決まりがある
外注先の工程に原因があるときも、再発防止の5段階は同じです。ただ、外注先が中小受託事業者に当たる取引では、相手の責めに帰すべき理由が無いのに、受け取ったあとにやり直させることなどが禁じられています(取適法第5条第2項第3号)。発注のときに伝えた基準のどこに合っていないのかを、依頼の文書に書くと、線を越えずに済みます。伝え方は外注先への品質連絡にまとめています。
標準に落とした対策は、変更のたびに崩れる
ISO 9001:2015 の 8.5.6 では、製造やサービス提供の変更を、要求事項に適合し続けるために必要な程度まで、レビューし管理することが求められています。人・設備・材料・方法を変えたときに、標準に落とした対策が引き継がれているかを見ないと、段階4の成果が静かに消えます。変更点の確認表に「過去の再発防止策に関わるか」の欄を1つ置くと、つながりが切れません。進め方は変更点管理の進め方で扱っています。
よくある質問
- Q. 再発防止策はどのくらいの期間で完了させるべきですか?
- 一律の目安はありません。原因の特定に数日から数週間、対策の実施に数週間、効果確認に1か月から3か月というのが一般的です。全体の日数より、段階ごとに期限を置いて、途中で止まっている場所が見える形にすることのほうが効きます。
- Q. 「注意する」以外の対策が思いつかないときは?
- 原因の掘り下げが浅い可能性があります。「なぜ間違えたか」ではなく「なぜ間違えられる状態だったか」と問い直すと、表示・置き場・治具・手順の側に答えが移り、動作にできる対策が出てきます。
- Q. 手順書を改訂したのに現場が変わらないのはなぜですか?
- 改訂と周知は別の作業です。改訂した事実だけが記録され、いつ誰に伝えたかが残っていないことが多くあります。周知の日付と対象者を残し、掲示物の差し替えと旧版の回収まで確認してください。
- Q. 再発防止の効果は何をもって確認しますか?
- 同じ現象の発生件数がいちばん分かりやすい指標です。もともと件数が少ない不具合では判定できないので、その場合は対策が守られているか(治具が使われているか、追加した検査が記録に残っているか)を見にいきます。
- Q. 再発防止の担当は品質部門が持つべきですか?
- 案件の進行を管理する役は品質部門が持つことが多くありますが、対策そのものの担当は、実際に手を動かす部署に置くほうが動きます。品質部門が対策まで抱えると、現場から見て「品質の仕事」になり、標準に落ちても定着しません。管理する役と実施する役を分けてください。
- Q. 対策を打たないと判断してもよいですか?
- かまいません。費用が見合わない、影響が小さいという判断は正当です。ただし、やらないと決めた理由と、いつ見直すかを記録に残してください。残さないと、次に同じ不具合が出たときに放置していたことになります。
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