効果と展開

水平展開の進め方|意味・横展開との違いと、広げる範囲の決め方

公開 2026-08-30更新 2026-10-03 執筆 改善板 編集部
改善板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

1つの不具合を直したあと、「同じことが他でも起きるのでは」という話になります。これが水平展開です。方向としては正しいのですが、実際にやろうとするとどこまで広げるかで止まります。全社に展開しようとすると終わらず、担当工程だけだと意味が薄くなります。

一般には、水平展開は同じ原因が成り立つ範囲に対して行います。この記事では、水平展開の進め方を、範囲の決め方、確認のしかた、そしてやりっぱなしにしないための記録まで順にまとめます。

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この記事の内容(11項目)

水平展開の進め方は、範囲を決めるところが9割

水平展開が立ち消えになるとき、原因はたいてい対象が多すぎることです。広げる先を「同じ製品」ではなく「同じ原因」で選ぶと、対象が現実的な数になります。

広げすぎる選び方

同じ製品を作っている全ライン。
同じ部署の全工程。
似た名前の作業すべて。
対象が数十件になり、確認が終わらない。

原因で選ぶ

位置決めの治具が無い作業。
同じ設備を使っている工程。
同じ仕入先の材料を使う品番。
対象が数件に絞れて、その週に終わる。

原因の言葉を、そのまま検索条件にする

確定した原因が「少量品は手貼りという前提で立ち上げたため、位置決めの治具が無い」なら、探すのは「少量品で、手作業で位置を合わせている工程」です。製品名でも部署名でもありません。この言い換えができれば、対象はかなり絞れます。

確定原因探す条件(水平展開の対象)
位置決め治具が無く目視で合わせていた手作業で位置を合わせている工程
材料ロットの切替時に確認手順が無かったロット切替がある全工程
検査基準に許容差の記載が無かった同じ書式で作られた検査基準書
夜勤帯に確認者を置いていなかった夜勤帯に1人作業になる工程

水平展開と、似た言葉の使い分け

現場では「横展開」「ヨコテン」とも呼ばれます。呼び方はどれでもかまいませんが、再発防止や予防処置との関係を整理しておくと、記録の置き場所が決まります。

言葉対象いつやるか
再発防止不具合が起きた場所原因が分かったあと
水平展開同じ原因を持つ他の場所原因が分かった直後
予防処置まだ起きていないあらゆる場所随時(不具合と無関係でもよい)

いちばん良いタイミングは「原因が分かった日」

水平展開は、対策が終わってからやるものだと思われがちです。ただ、対策が終わるころには関係者の関心が下がっていて、手が付きません。原因が確定した日に対象を決めてしまうほうが、実行率が上がります。対策の実施と並行して進められます。

予防処置に寄りすぎない

水平展開の対象を「起こり得るところ全部」に広げると、それは予防処置になります。予防処置は必要な活動ですが、案件の期限では回りません。水平展開は、いま分かっている原因が成り立つ範囲に限ると、期限内に終わります。

過去に同じことが起きていないかを、あわせて見る

水平展開は「これから起きるかもしれない場所」を見る活動ですが、同時にすでに起きていた場所も見ておくと、拾えるものが増えます。

探した結果意味次にやること
他の工程で同じ現象が過去にあったそのとき原因まで届いていなかった当時の案件を開き直し、今回の原因で説明できるか見る
似た現象があったが原因が違った別件。分けて扱う参考として記録に残す
何も無かった今回が初出探した範囲を1行残す

探した範囲を残さないと、また同じ検索をする

過去を調べたときに何も出てこないと、記録に残らないまま終わりがちです。いつからいつまでを、どの軸で探したかを1行書いておくと、次の担当者が同じ検索を繰り返さずに済みます。探し方は類似不具合の調べ方にまとめました。

集計表があると、この作業がすぐ終わる

月次で不具合を分類して数えていると、過去の検索が一覧を眺めるだけで済みます。逆に、案件ごとの報告書しか無い現場では、報告書を1件ずつ開くことになり、探すのに時間がかかります。集計を続けている効果は、こういう場面で出ます。

類似不具合検索表(Excel・無料)過去に似た不具合が無かったかを、探した結果ごと記録します。登録不要でダウンロードできます。
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水平展開の確認のしかた

対象が決まったら、1件ずつ見にいきます。ここで大事なのは、見にいった結果を全件残すことです。問題があった場所だけ残すと、見ていない場所と区別がつきません。

確認する項目書き方
対象工程名・製品名・設備名など、特定できる形で
同じ原因が成り立つか成り立つ/成り立たない、と理由
確認者・確認日誰が、いつ見にいったか
判定対策要/対策不要/対応済
対策の内容と期限対策要のときだけ

「対策不要」の理由まで書く

見にいって問題が無かった場合、判定だけ書いて理由を省くと、あとから読んだ人が確認をやり直します。「この工程は自動貼付機なので、目視で位置を合わせる場面が無い」のように、成り立たない理由を1行残します。

現物を見る。図面と手順書だけで判断しない

手順書の上では治具を使うことになっていても、現場では使っていないことがあります。水平展開の確認は、可能な範囲で現場に行って現物を見るほうが精度が上がります。書類だけの確認は「対策不要」が増えます。

対象が多いときの絞り方

それでも対象が20件、30件になることがあります。全部を同じ深さで見ようとすると終わらないので、順番を付けます。

優先度あてはまる対象見方
高客先へ直接出る/安全に関わる/同じ設備を使う現場で現物を確認する
中社内で止まる工程/条件が近い担当者に聞き取りし、記録で裏を取る
低条件が一部だけ重なる次回の工程リスク洗い出しで見る

低い優先度のものは、別の活動に送る

優先度が低い対象を無理に案件の中で処理しようとすると、案件が閉じられません。次の工程リスクの洗い出しに送るという扱いにして、案件からは外します。送り先が決まっていれば、放置ではなく移管です。工程ごとにリスクを並べる方法は工程ごとのリスク洗い出しで扱っています。

期限は案件の期限と分ける

水平展開の確認は、元の案件の対策より時間がかかることがあります。案件の期限に縛ると、確認が形だけになります。展開の期限は別に置いて、案件を閉じたあとも追える形にしておくほうが現実的です。

工程別リスク洗い出し表(Excel・無料)工程ごとに起こりうることを並べ、影響度と起こりやすさで順位を付けます。登録不要でダウンロードできます。
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水平展開の対象を洗い出す3つの入口

対象を思いつきで挙げると、抜けが出ます。入口を3つ決めておくと、毎回同じ精度で洗えます。

入口見るもの向いている原因
設備から同じ機械・同じ治具・同じ工具を使う工程設備の設定、摩耗、治具の欠落
手順から同じ書式の手順書、同じ作業動作を含む工程手順の記載漏れ、判断基準の欠落
人から同じ人が担当する作業、同じ教育を受けた人教え方、引き継ぎ、力量の判定

設備からの洗い出しがいちばん取りこぼしにくい

設備や治具は台帳で追えるので、対象が機械的に出ます。「この治具を使っている工程を全部出してください」という聞き方なら、担当者の記憶に頼りません。人からの洗い出しは、逆にいちばん取りこぼしやすい入口です。

3つの入口を全部使わなくてよい

確定した原因によって、効く入口は変わります。治具の欠落が原因なら設備から、判断基準の欠落なら手順から入ります。原因に対して入口を1つ選び、それで出た対象を丁寧に見るほうが、3つを浅く回すより結果が出ます。

入口が決まらないときは、原因の言葉を短くする

確定原因の文が長いと、どの入口で探せばよいか決まりません。「何が無かったのか」を一語にすると入口が決まります。治具が無かった、基準が無かった、確認者がいなかった。この一語が、そのまま設備・手順・人のどれかを指します。

洗い出した一覧は次回も使う

「この治具を使っている工程」の一覧は、一度作れば次の案件でもそのまま使えます。作った一覧を案件の中だけで捨てず、設備台帳や工程の一覧に戻しておくと、2回目からの水平展開が速くなります。

水平展開がやりっぱなしになる3つの形

その1:全社メールで終わる

「同じ不具合に注意してください」というメールを流して終わり、という形です。読んだ人が自分の工程に当てはまるか判断できないので、何も起きません。対象を名指しして、確認して返してもらう形にすると動きます。

その2:対象は決めたが、確認の期限が無い

対象の一覧を作った時点で満足してしまい、確認が進まない形です。1件ずつに確認者と期限を入れておくと、遅れている行が表に出ます。

その3:確認したが、対策が入っていない

「対策要」と判定したのに、その対策が誰の仕事にもなっていない形です。元の案件の対策と同じように、担当と期限を付けて実施計画に載せます。判定と対策を同じ表で追えると、ここが抜けません。

水平展開の記録は、次の案件で使われる 一度作った展開の一覧は、次に似た不具合が出たときに、そのまま候補リストとして使えます。「前回この5工程を見た」という記録があれば、次は差分だけ見れば済みます。1件ずつは小さな作業ですが、続けると探す時間が減っていきます。

対策が現場で続いているかの確かめ方は対策の定着、効いたかどうかの判定は是正処置の有効性確認で扱っています。

水平展開にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

水平展開は、法律で定義された言葉ではありません。ただ、行政の対応と品質の規格の両方で、1か所で見つかった問題を、同じ原因が成り立つ他の場所まで確かめにいく動きが続いています。確かめられた出来事を日付順に並べます。

日付出来事水平展開との関係根拠
2024年8月9日国土交通省が、型式指定申請での不正行為の有無について自動車メーカーなど85社の調査報告結果を公表。5社から不正行為ありとの報告ダイハツ工業などの不正事案を踏まえ、同じ制度を使う各社に調べさせた。業界全体への水平展開にあたる国土交通省 報道発表
2024年12月24日「自動車の型式指定に係る不正行為の防止に向けた検討会」がとりまとめを公表個社の対策だけでなく、制度の側での防止策を整理した国土交通省 検討会とりまとめ
2026年9月16日ISO 9001:2026(品質マネジメントシステムの要求事項)が発行。2015年版の改訂是正処置の仕組みを、新しい版の要求事項で見直す時期に入ったISO/TC 176
2029年9月30日ISO 9001:2015で認証を受けている組織の移行期限定期審査・更新審査などの機会に、2026年版へ移行するISO/TC 176 移行の手引き

ポイントはここです。85社調査の例では、1社の事案をきっかけに、同じ申請の仕組みを使う会社すべてに確認を返してもらう形がとられました。社内の水平展開でも、対象を名指しして確認結果を返してもらう形にすると、同じように抜けが出にくくなります。

出典:国土交通省 型式指定申請における不正行為の有無等に関する調査報告結果について(2024年8月9日)/国土交通省 自動車の型式指定に係る不正行為の防止に向けた検討会 とりまとめ(2024年12月24日)/ISO/TC 176 ISO 9001:2026 has been released!

確認日は2026年10月3日です。ISO 9001の移行の扱いは、認証を受けている審査登録機関(認証機関)に確認してください。

水平展開に出てくる用語

水平展開のまわりには、似た言葉がいくつもあります。規格で定義されている言葉と、現場の言葉を分けて並べます。

用語意味出典
水平展開ある場所で分かった不具合の原因や対策を、同じ原因が成り立つ他の工程・製品・設備に広げて確かめること法令・JIS上の定義はない(現場の用語)
横展開・ヨコテン水平展開と同じ意味で使われる言い方法令・JIS上の定義はない(現場の用語)
不適合要求事項を満たしていないことJIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.6.9
修正検出された不適合を除去するための処置。手直しや選別がこれにあたるJIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.12.3
是正処置不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置JIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.12.2
予防処置起こり得る不適合などの原因を除去するための処置。まだ起きていない問題が対象JIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.12.1
再発防止同じ不具合を繰り返さないための対策の総称。水平展開を含めて使われることが多い法令・JIS上の定義はない
垂直展開水平展開の対になる言葉として使われるが、意味は業界や会社で異なる法令・JIS上の定義はない

規格の言葉で言い直すと、水平展開は是正処置の一部として、他でも同じ不適合が起きていないか、起きる可能性がないかを確かめる作業にあたります。報告書を客先の様式で書くときは、相手の様式の言葉に合わせると話が早く進みます。

水平展開と一緒に押さえておきたいこと

水平展開の進め方が決まったら、次の3つを押さえておくと、社内の説明と記録がそろいやすくなります。

ISO 9001では「類似の不適合」の確認が是正処置に入っている

ISO 9001:2015の箇条10.2(不適合及び是正処置)では、不適合が他のところで発生しないよう、類似の不適合の有無、またはそれが発生する可能性を明確にすることが、原因を除去する処置の必要性を評価する手順の1つに挙げられています。水平展開の記録は、この要求事項を満たしている証拠として審査でも使えます。2026年版での書きぶりは、認証機関の案内で確かめてください。

水平展開の言い換えと英語

社内では「横展開」「ヨコテン」と呼ぶことが多く、どれを使っても意味は通じます。英語には決まった訳語がなく、horizontal deployment などと説明的に書くか、yokoten とそのまま書く会社もあります。海外の拠点に頼むときは、言葉より「同じ原因が成り立つ場所を確認して結果を返す」という手順を書いて渡すほうが確実です。

水平展開の使い方の例

文書や会議では、次のような形で使われます。

  • 「今回の位置ずれの対策を、手作業で位置を合わせている他の3工程へ水平展開する」
  • 「水平展開の対象は、同じ治具を使う工程に限る。対象外とした工程は理由を記録に残す」
  • 「他社の不具合事例を受けて、自社の同じ設備に水平展開して確認した」

ポイントは、何を・どこへ・どの条件で広げるかを1文に入れることです。「水平展開してください」だけでは、受け取った人が範囲を決められません。

改善板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 水平展開と横展開は違うものですか?
同じものを指す言い方の違いです。現場では「ヨコテン」とも呼ばれます。呼び方より、対象を「同じ原因が成り立つ範囲」に絞れているかどうかのほうが結果に効きます。
Q. 水平展開はどのタイミングで始めるべきですか?
原因が確定した日が最も実行率の高いタイミングです。対策が終わってからだと、関係者の関心が下がっていて手が付きません。対策の実施と並行して進められます。
Q. 対象が多すぎて確認が終わりません。
対象を「同じ製品」「同じ部署」ではなく「同じ原因が成り立つ条件」で選び直してください。それでも多い場合は、客先へ直接出るもの・安全に関わるものを優先し、条件が一部だけ重なるものは次回の工程リスク洗い出しへ送ります。
Q. 問題が無かった工程も記録に残す必要がありますか?
残してください。見にいって問題が無かったのか、まだ見ていないのかが区別できなくなります。「この工程は自動化されていて該当しない」のように、成り立たない理由を1行添えると、次に読む人が確認をやり直さずに済みます。
Q. 水平展開はどのくらいの期間で終わらせるべきですか?
元の案件の対策と同じ期限に縛ると、確認が形だけになりがちです。対象が5件前後なら2週間、10件を超えるなら優先度の高いものから1か月、といった置き方が現実的です。案件を閉じたあとも追える形にしておけば、期限を分けても放置になりません。
Q. 水平展開の対象は、他部署にも広げるべきですか?
同じ原因が成り立つなら広げます。ただ、他部署に依頼する場合は、こちらで対象を名指しして、何を確認してほしいかを具体的に伝えてください。全社への注意喚起メールでは動きません。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点のものです。