見直しと報告

是正処置の有効性確認|時期・指標・判定基準の目安表(ISO 9001 10.2)

公開 2026-08-30更新 2026-10-03 執筆 改善板 編集部
改善板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

是正処置は、対策を打った時点では終わっていません。効いたかどうかを確かめて、はじめて閉じられます。ただ、この確認は「そういえば最近出ていないですね」で済まされることが多く、何を見て効いたと判断したのかが記録に残らない状態になりがちです。

ISO 9001:2015 では、10.2.1 d) で「とった全ての是正処置の有効性をレビューする」ことが求められています。ただ、いつ・どうやって確かめるかまでは規格に書かれていません。一般には、是正処置の有効性確認は時期・指標・判定基準の3つを先に決めてから行います。この記事では、是正処置の有効性確認について、いつ見るか、何を見るか、どうなったら効いたと判定するかを整理します。

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この記事の内容(11項目)

是正処置の有効性確認は、実施の確認とは別

まず分けたいのは、やったかどうかと効いたかどうかです。この2つを1つの欄で扱うと、実施の確認だけで閉じることになります。

実施の確認

決めた対策が入っているか。
治具ができたか、手順書が改訂されたか、教育をしたか。
対策の直後に見る。
必要条件だが、これだけでは足りない。

有効性の確認

同じ原因での再発が止まったか。
件数、不良率、検出の場所。
一定の期間をおいてから見る。
ここまで見て、案件を閉じられる。

実施だけを確認して閉じると、入れた対策が効いていない案件が「完了」として積み上がります。数か月後に同じ不具合が出たとき、記録上は対策済みなので、原因分析が振り出しに戻ります。

3つ目に「定着しているか」がある

実施と有効性の間に、もう1つ見る視点があります。時間が経っても対策が守られているかです。治具を作ったが使われていない、追加した検査が省かれている、という状態は、有効性の確認の前に潰しておく必要があります。定着の見方は対策の定着で扱っています。

是正処置の有効性確認はいつ行うか

確認の時期は、不具合の出方によって変わります。一般には、次の3つのやり方が使われています。

やり方いつ見るか向いている案件弱点
ロット基準対策後の3ロット/5ロット同じ品を繰り返し作っている生産の間隔が空くと、いつまでも判定できない
期間基準1か月後/3か月後生産が連続しているその期間に生産が無いと意味が無い
事象待ち同じ条件が再来したとき季節要因・年1回の作業判定まで1年かかる

2段階で見るのが扱いやすい

1回だけの確認では、たまたま出なかったのか、効いたのかが分かりません。短期(1か月)と中期(3か月)の2回に分けると、判断の根拠が増えます。1回目で効いていなければ、3か月待たずに手を打てます。

確認の置き方
0か月対策の実施を確認
1か月短期の効果を見る
2か月定着を見に行く
3か月有効性を判定して閉じる
確認の予定日は、対策を決めた日に一緒に決めてしまう。あとから決めると入らない

予定日は、対策を決めた日に置く

確認の日付は、対策が終わってから決めようとすると入りません。対策を決めた会議の場で、確認の予定日まで決めてしまいます。案件の一覧に予定日の列があれば、その日が来た行が自然に表に出ます。

何を見て「効いた」と判定するか

指標は、その不具合の出方に合わせて選びます。件数が使えないときに何を見るかを決めておくと、判定が止まりません。

見る指標判定の例使える条件
同じ現象の発生件数3ロット連続でゼロもともと月に数件以上出ている
不良率対策前の半分以下母数が十分にある
検出した工程客先流出がゼロ、工程内での検出のみ流出対策を打った案件
対策の実施率抜き取り10回で全部守られていた件数が少なく、発生で判定できない
関連する苦情の件数同じ分類の苦情がゼロ客先起点の案件

件数が少ない不具合の見方

年に2、3件の不具合では、1か月出なくても当たり前です。この場合は、発生ではなく対策が守られているかどうかで判定します。治具が使われている、追加した検査の記録が残っている、といった実施の状態を、抜き取りで確かめる形です。

「効いた」と言えない状態も記録する

生産が無かった、条件が揃わなかった、といった理由で判定できないことがあります。そのときは「判定保留、次回◯月に再確認」と書きます。判定できないことと、効かなかったことは別です。混ぜると、あとで読めなくなります。

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効いていなかったときに、どこへ戻るか

再発していた場合、戻る場所は3つのどれかです。どこへ戻るかで、やり直す範囲が変わります。

状態戻る場所やること
対策が入っていなかった実施の段階なぜ実施されなかったかを記録し、期限を切り直す
入っていたが守られていなかった標準化・定着の段階作業として無理が無いかを見る。手順そのものを見直す
守られていたのに再発した原因分析の段階原因の特定が違っていた。掘り直す

いちばん多いのは2番目

対策は入っていたのに守られていなかった、というのがいちばん多い形です。この場合、守らなかった人を責めても戻りません。手順が増えて時間内に終わらない、治具が取りに行きにくい場所にある、といった実務上の理由があることが大半です。作業として成り立つかを見にいきます。

3番目のときは、前回の分析を読み直す

守られていたのに再発したなら、原因の特定が違っていたことになります。ここで一から掘り直すより、前回の分析シートを読み直して、どこで判断を間違えたかを見るほうが速く着きます。前回否定した候補が残っていれば、そこから再開できます。詳しくは対策後に再発したときで扱っています。

案件を横並びにして見る

是正処置の有効性確認は、案件ごとの報告書だけを持っていると回りません。確認の予定日が来たことに誰も気づけないためです。

持たせる列何に使うか
管理番号・件名元の報告書とつなぐ
対策の完了日ここから確認までの期間を数える
確認の予定日この日が来た行を拾う
見る指標と判定基準確認する人が迷わない
確認日・確認者誰がいつ見たか
判定(有効/保留/再発)再発の行だけ抜き出せる

月に1回、予定日が来た行だけ読む

全件を毎月読む必要はありません。予定日が過ぎていて、判定が空欄の行だけを見れば足ります。件数が多い現場でも、この読み方なら10分程度で回ります。

「有効」で閉じた案件も、集計には残す

閉じた案件を一覧から消すと、あとで「この工程では過去にどんな対策を打ったか」を追えなくなります。閉じても行は残して、状態で絞れる形にしておくと、水平展開や類似不具合の検索でそのまま使えます。

月次の集計につなげる方法は月次の不具合集計、年度単位でまとめる形は改善実績の報告で扱っています。

確認の場を、どこに作るか

有効性の確認は、専用の会議を作らなくても回ります。すでにある場に10分だけ載せるほうが続きます。

載せる場見るものかかる時間
月次の品質会議予定日が過ぎて判定が空欄の行10分
週次の朝会今週が予定日の案件だけ3分
内部監査判定が「有効」で閉じた案件の根拠監査の中で
年度の振り返り再発した案件の一覧と、その共通点年1回

全件を読む場は作らない

案件が増えると、全件を読む会議は必ず形骸化します。予定日が来た行と、再発の行だけに絞ると、件数が増えても時間が伸びません。読まなかった行は、次の予定日に自然に出てきます。

再発した案件だけを別に数える

年に1回、再発として戻った案件を数えておくと、是正処置そのものの質が見えます。件数より、戻った理由の内訳のほうが役に立ちます。実施されていなかったのか、守られなかったのか、原因が違ったのか。この3つの比率で、次に手を入れる場所が決まります。

「有効」の判定が9割を超えているとき 判定がほぼ全部「有効」で埋まっている場合、基準が甘い可能性があります。件数がもともと少ない不具合を、発生ゼロで判定していないか。実施の確認だけで有効としていないか。抜き取りで数件、根拠まで見てみると分かります。

有効性確認でつまずきやすい3つ

その1:判定基準が「感覚」のまま

「だいぶ減った」「落ち着いた」で判定すると、人が替わったときに基準も変わります。対策を決めた時点で、数字の基準まで書いておくと、確認する人が誰でも同じ判定になります。

その2:確認する人が対策を打った本人だけ

自分で打った対策を自分で判定すると、どうしても甘くなります。確認者を1人加えるだけで、精度が変わります。同じ部署の別の人でも、監査の担当でもかまいません。

その3:確認の記録が報告書の余白に書かれる

「◯月◯日 再発なし」と報告書の隅に手書きされている状態です。その報告書を開かないと分からないので、全体としてどれだけ効いているかが見えません。一覧に転記するだけで、月次の報告や監査での説明に使えるようになります。

ISO 9001を取得している場合 ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)では、10.2.1 d) で是正処置の有効性をレビューすること、10.2.2 で不適合の内容ととった処置、是正処置の結果を文書化した情報として保持することが求められています。確認の時期や判定基準の決め方は規格に定めが無く、組織が決めます。2026年版への移行の扱いは認証機関にご確認ください。改善板が配布している様式も、規格で定められた様式ではない参考様式です。

用語の使い分けは是正処置とは、標準に落とすところまでの流れは再発防止の進め方にまとめています。

対策の定着確認表(Excel・無料)対策が現場で続いているかを、期間をおいて見に行きます。登録不要でダウンロードできます。
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是正処置の有効性確認にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

是正処置の有効性確認の根拠になっている ISO 9001 は、2024年に追補が出て、2026年9月に新しい版が発行されました。日付順に並べます。

時期出来事有効性確認への影響
2015年9月ISO 9001:2015 発行(日本では JIS Q 9001:2015)。10.2.1 d) で是正処置の有効性のレビューを求めるいま多くの会社が認証を受けている版。この記事の説明はこの版の箇条に沿っている
2024年2月23日ISO 9001:2015 の追補1(気候変動への対応)が発行。4.1・4.2 に、気候変動が関係するかを判断する文が加わった10.2(不適合及び是正処置)は変わっていない
2026年9月16日ISO 9001:2026 が発行。ISOは、2015年版の考え方を引き継いだうえで、リーダーシップや品質の文化を強め、新しい附属書Aで用語と要求の意図を説明したとしている是正処置の有効性確認に当たる箇条の文言は、2026年版の本文で確かめる
2029年9月30日ISO 9001:2015 から2026年版への移行期限とされているそれまでは2015年版の認証も有効。移行審査の時期は認証機関と相談する

是正処置の有効性確認の手順は、版が変わっても大きく崩れるものではありません。移行のときは、手順書に書いた箇条番号と、記録の様式に書いた箇条番号を一緒に直すと、審査で説明しやすくなります。

出典:ISO 9001:2015(ISO)、ISO 9001:2015/Amd 1:2024(ISO)、ISO 9001:2026 の発行(ISO)

確認日は2026年10月3日です。移行の時期や審査での扱いは、認証を受けている認証機関にご確認ください。JIS Q 9001 の改正の予定は日本産業標準調査会(JISC)の公表で確かめてください。

是正処置の有効性確認に出てくる用語

是正処置の有効性確認で使う言葉は、多くが JIS Q 9000(ISO 9000)で定義されています。社内で意味がずれやすいものを並べます。

用語意味出典
不適合要求事項を満たしていないことJIS Q 9000:2015 3.6.9
修正見つかった不適合を取り除く処置JIS Q 9000:2015 3.12.3
是正処置不適合の原因を取り除き、再発を防ぐための処置JIS Q 9000:2015 3.12.2
有効性計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度JIS Q 9000:2015 3.7.11
レビュー決めた目標を達成するために、対象が適切か、妥当か、有効かを確かめることJIS Q 9000:2015 3.11.2
文書化した情報組織が管理し、維持するよう求められている情報と、それが含まれている媒体JIS Q 9000:2015 3.8.6
水平展開ある工程で打った対策を、同じ原因を持つほかの工程や製品にも広げること規格上の定義はない。現場で使われる言葉
判定保留材料が足りず、効いたかどうかをまだ決められない状態規格上の定義はない。この記事での使い方

是正処置の有効性確認でポイントになるのは、「有効性」が計画した結果をどれだけ達成したかで定義されていることです。対策を決めた時点で「何をもって達成とするか」を書いておかないと、あとから測る物差しがありません。

是正処置の有効性確認と一緒に押さえておきたいこと

是正処置の有効性確認の解説は、確認の時期と判定のしかたで終わることが多くあります。ISO 9001:2015 の10.2には、その先に続く要求もあります。上位の解説で触れられることが少ないものを3つ挙げます。

確認の結果で、リスクと機会を見直す

10.2.1 e) では、必要な場合には、計画の段階で決めたリスクと機会を更新することが求められています。有効性確認で「守られていたのに再発した」と分かった案件は、想定していなかったリスクが残っていたということです。案件を閉じるときに、リスクの一覧に1行足すかどうかを判断する欄を作っておくと、つながりが記録に残ります。

必要なら、品質マネジメントシステムの側を変える

10.2.1 f) では、必要な場合には品質マネジメントシステムの変更を行うことが求められています。同じ理由で戻る案件が続くなら、個々の対策ではなく手順書の書き方や教育の仕組みのほうに原因があるかもしれません。年に1回、再発した案件の戻った理由を数えると、変えるべき仕組みが見えてきます。

マネジメントレビューに数字で渡す

9.3.2 c) では、マネジメントレビューのインプットとして、不適合と是正処置の傾向を含む情報を考慮することが求められています。案件の一覧に判定の列があれば、有効・保留・再発の件数と比率をそのまま渡せます。月次の集計の作り方は月次の不具合集計で扱っています。

改善板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 是正処置の有効性確認はいつ行えばよいですか?
一律の決まりはありません。対策後3ロット、1か月後、3か月後といった置き方が一般的です。1回だけだとたまたま出なかったのか効いたのか分からないので、短期と中期の2回に分けると判断の根拠が増えます。
Q. もともと件数の少ない不具合はどう判定しますか?
発生件数では判定できないので、対策が守られているかどうかで見ます。治具が使われているか、追加した検査の記録が残っているかを抜き取りで確かめ、実施の状態で判定する形です。
Q. 有効性の確認は誰が行うべきですか?
対策を打った本人だけで判定すると甘くなりがちです。同じ部署の別の人でも、内部監査の担当でもよいので、確認者をもう1人加えると精度が上がります。
Q. 判定できる材料が揃わないときはどうしますか?
「判定保留、次回◯月に再確認」と記録して、予定日を置き直してください。判定できないことと、効かなかったことは別です。同じ欄に書くと、あとで読み返せなくなります。
Q. 有効性の確認が終わった案件は、記録から消してよいですか?
消さないでください。閉じた案件を一覧から消すと、あとで「この工程では過去にどんな対策を打ったか」を追えなくなります。行は残したまま、状態で絞れる形にしておくと、水平展開や類似不具合を探すときにそのまま使えます。
Q. 効果が出ていなかったら、また一から分析し直しですか?
戻る場所によります。対策が入っていなかったなら実施の段階、入っていたが守られていなかったなら標準化と定着の段階、守られていたのに再発したなら原因分析の段階です。3つ目のときも、前回の分析シートを読み直すところから始めると速く着きます。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点のものです。