是正処置とは?修正・予防処置との違いと進め方
不具合が出たあとの会議で、「それは修正であって是正ではない」という指摘を受けたことがある方は多いと思います。言葉が近いので、社内でも人によって使い方が違いがちです。
一般には、是正処置とは、起きた不具合の原因を取り除いて、同じ原因での再発を防ぐ処置を指します。目の前の品物を直すこととは別のものです。この記事では、是正処置とは何かを、よく混ざる7つの言葉との違いから整理し、進め方と報告書に残す項目までをまとめます。
この記事の内容(8項目)
是正処置とは何か
是正処置とは、不適合が起きた原因のほうに手を打つことです。英語では corrective action と呼ばれます。ここで大事なのは「原因」で、目の前の不良品をどうするかは含みません。
修正
起きた結果を取り除く。手直し、選別、交換、廃棄。
その日のうちにやる。
やっても再発は止まらない。
是正処置
起きた原因を取り除く。基準の変更、治具の改造、手順の改訂。
数日から数週間かかる。
同じ原因での再発が止まる。
不良品を全数選別して出荷したなら、それは修正です。選別だけで終わると、来月も同じ選別をすることになります。是正処置は、選別しなくてよい状態を作るところまでを指します。
「不適合」は不良品だけではない
是正処置の対象になる不適合には、製品の不良のほかに、手順どおりに作業されていなかった、記録が残っていなかった、といったものも入ります。監査の指摘も不適合です。物が壊れていなくても、決めたとおりになっていなければ不適合という整理をしておくと、対象がはっきりします。
是正処置と混ざりやすい7つの言葉
現場で使われる言葉を、時間の順に並べると重なりません。会議の前にこの表を配るだけで、話が噛み合うようになります。
| 言葉 | 何をするか | いつ | 対象 |
|---|---|---|---|
| 修正 | できてしまった不良を直す・取り除く | 当日 | 結果 |
| 応急処置 | その場をしのぐ。次の担当へ渡す | 当日〜数日 | 結果 |
| 暫定対策 | 恒久対策までの間、流出を封じ込める | 数日〜数週間 | 流出経路 |
| 恒久対策 | 原因を取り除き、標準に反映する | 数週間 | 原因 |
| 是正処置 | 原因究明から恒久対策、効果確認までの一連 | 1か月前後 | 原因 |
| 予防処置 | まだ起きていないことに先に手を打つ | 随時 | 起きる前 |
| 水平展開 | 同じ原因を持つ他の工程・製品へ広げる | 対策の後 | 他の場所 |
是正処置と予防処置の違いは「起きたかどうか」
是正処置は、起きた不適合に対して行います。予防処置は、まだ起きていないが起こり得ることに対して行います。境目は時間軸で、深さではありません。「浅いのが是正、深いのが予防」という使い分けをしている現場を見かけますが、あとで説明がつかなくなります。
水平展開は是正処置の後ろにつく
1つの案件で原因が分かったら、同じ原因を持つ場所が他にないかを見にいきます。これが水平展開です。是正処置の一部として扱う会社もあれば、別の活動として管理する会社もあります。どちらでもかまいませんが、やったかどうかを記録に残す場所は決めておくと抜けません。進め方は水平展開の進め方にまとめています。
是正処置の進め方は6段階
是正処置の進め方は、次の6段階に分かれます。1段階でも飛ばすと、あとの段階が空回りします。
いちばん抜けるのは5と6
是正処置が形だけになるとき、抜けているのはたいてい5(標準化)と6(有効性の確認)です。対策を打った時点で案件を閉じてしまうと、その対策が続いているかどうかを誰も見ません。閉じる条件を「対策を書いたこと」ではなく「効果を確認したこと」にすると、ここが埋まります。
期限は段階ごとに置く
是正処置全体に1つだけ期限を置くと、締切の前日にまとめて書くことになります。段階ごとに期限を置くと、途中で止まっている案件が見えます。
是正処置報告書に書く項目
是正処置報告書は、1つの案件について「何が起きて、なぜ起きて、何をして、どうなったか」を1枚で説明する書類です。一般には、次の項目を持たせます。
| 欄 | 書く内容 | よくある書き方の失敗 |
|---|---|---|
| 発生事象 | 現象を数値で。「内径が上限を0.03mm超過」 | 「不良が出た」だけで、程度が分からない |
| 影響範囲 | ロット、数量、出荷済みかどうか | 社内在庫だけ書いて出荷分を書かない |
| 応急・暫定処置 | 止めた範囲と、いつまで続けるか | 恒久対策の欄と同じことを書く |
| 発生原因 | なぜ作り込んだか | 「作業者の確認不足」で止まる |
| 流出原因 | なぜ検査で止められなかったか | 欄そのものが無い |
| 恒久対策 | 誰が、いつまでに、何をするか | 「教育を徹底する」で担当と期限が無い |
| 標準への反映 | 改訂した手順書の名前と版 | 改訂したことは書くが、版が無い |
| 有効性の確認 | いつ、何を見て判定するか | 「経過観察」で日付が無い |
ポイントはここです。発生原因と流出原因の欄を分けること。1つの欄にまとめると、片方だけ書いて終わりになります。この2軸の掘り方は原因分析の進め方で詳しく扱っています。
原因が「人」に着地したら、まだ途中
是正処置でいちばん多い行き止まりは、原因が「作業者の確認不足」で止まることです。ここで止めると、対策は「注意喚起」と「教育」になり、人が替われば戻ります。
| 段階 | 問い | 出てくる答えの例 |
|---|---|---|
| 現象 | 何が起きたか | ラベルの貼付位置が5mmずれた |
| なぜ1 | なぜずれたか | 目視で位置を合わせていた |
| なぜ2 | なぜ目視だったか | 位置を決める治具が無い |
| なぜ3 | なぜ治具が無いか | 少量品は手貼りという前提で立ち上げた |
| 対策 | ここに打つ | 少量品用の簡易治具を作る/位置決めの見本を掲示する |
「なぜ1」で止めると対策は「気をつける」になります。3段階まで掘ると、仕組みの話になります。掘り方と、掘りすぎて手が届かなくなる線の引き方はなぜなぜ分析のやり方にまとめました。
人を責めないための問い方
「なぜ間違えたのか」と聞くと、答えは人の側に寄っていきます。「なぜ間違えられる状態だったのか」と聞き方を変えると、表示の分かりにくさ、似た部品が隣にある、手順書が実態と違う、といった仕組みの側が出てきます。人は必ず間違えるので、間違えても止まる形にするしかありません。
是正処置が形だけになる3つのパターン
その1:対策が「以後注意する」で終わる
原因の掘り下げが浅いときに出ます。対策欄に書かれた文章が、誰が読んでも同じ動作になるかで見分けられます。「注意する」は人によって動作が違うので、対策としては機能しません。
その2:報告書を書くこと自体が目的になる
件数の多い現場では、期限に追われて報告書を埋める作業になりがちです。この状態は、報告書の提出日と対策の実施日が同じ日に並んでいることで分かります。先に対策を決めて、あとから書類を整える順番に戻すと、中身が入ります。
その3:閉じたあと誰も見ない
是正処置は、閉じてから1か月後、3か月後に効いているかを見て初めて完了します。案件ごとの報告書だけ持っていると、この確認が個人の記憶頼みになります。案件を横並びにした一覧を別に持っておくと、確認予定日が来たものが表に出ます。
確認の時期と判定の基準は是正処置の有効性確認で扱っています。
ISO9001を取得している場合
ISO9001を取得している組織では、不適合が起きたときの処置と是正処置について、規格の要求に沿った運用が求められます。ただし、要求の具体的な文言は規格本文(JIS Q 9001)で確認してください。この記事は規格の解説ではなく、社内でどう記録を残すかを扱っています。
審査で見られやすいのは「つながり」
一般に言われているのは、1枚の報告書の出来よりも、不適合の記録・原因・対策・効果確認がつながっているかが見られる、ということです。報告書は立派なのに、そこで決めた手順書の改訂が行われていない、という状態が指摘につながりやすい形です。
取得していない会社でも使える
是正処置の考え方そのものは、認証の有無とは関係ありません。原因に手を打つ、標準に落とす、効いたか確かめる、という3つは、どの現場でも同じです。認証を取っていない会社でも、この3つを記録に残す形にしておけば十分に回ります。
取引先から報告書を求められたとき
客先へ不具合を出したあと、是正処置報告書の提出を求められることがあります。相手指定の様式があればそれに従いますが、無い場合は自社の様式で出してかまいません。提出用と社内用を分けて考えると、書きやすくなります。提出用には結論(事象・原因・対策・効果確認の予定)だけを載せ、掘った過程や社内の担当割りは社内用に残します。
相手に出す書類で気をつけたいのは、約束した期日を書く欄です。「効果確認は3か月後」と書いたなら、その時期に結果を報告するところまでが約束になります。書いた以上は追える形にしておかないと、次の取引で信用の話になります。
よくある質問
- Q. 是正処置と修正の違いを一言で言うと何ですか?
- 手を打つ相手が違います。修正は「できてしまった結果」に、是正処置は「そうなった原因」に手を打ちます。不良品を選別して出荷したのは修正で、選別しなくてよい状態を作るのが是正処置です。
- Q. 是正処置と予防処置はどちらが深い対策ですか?
- 深さの違いではなく、起きたかどうかの違いです。すでに起きた不適合に対して行うのが是正処置、まだ起きていないことに先に手を打つのが予防処置です。浅い・深いで使い分けると、後で説明がつかなくなります。
- Q. 是正処置はどのくらいの期間で完了させるべきですか?
- 一律の決まりはありません。原因究明に数日から数週間、対策の実施に数週間、有効性の確認に1か月から3か月というのが一般的な目安です。大事なのは全体の日数より、段階ごとに期限を置いて、途中で止まっている案件が見える形にすることです。
- Q. 小さな不具合にも是正処置報告書が必要ですか?
- 線を引いてください。「その場で直せて再発の見込みが低いものは一覧の記録だけ、止める判断が要ったものは報告書を起こす」といった基準を決めると運用が回ります。すべてに報告書を求めると、書くこと自体が目的になります。
- Q. 是正処置報告書に決まった様式はありますか?
- 一般の社内業務については、様式を定めた法令はありません。ISO9001を取得している場合も、様式そのものではなく記録が残っていることが問われます。改善板が配布しているのは、必要な欄をあらかじめ入れた参考様式です。不要な欄は削って使えます。
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