原因を掘る

なぜなぜ分析のやり方|「注意不足」で止まらない問い方と記入例

公開 2026-08-30更新 2026-10-10 執筆 改善板 編集部
改善板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月10日

なぜなぜ分析は、トヨタ生産方式で使われてきた問題の掘り下げ方として広く知られています。大野耐一氏の著書『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社、1978年)で紹介されたことが、広まったきっかけとされています。やり方そのものは単純で、「なぜ」を繰り返すだけです。それでも社内でやると、3回目あたりで「作業者の注意不足」に着地して止まる、ということが繰り返し起きます。

止まる原因は、掘り方ではなく掘り始める前の準備にあることが多くあります。この記事では、なぜなぜ分析のやり方を、事実を固める段階から、人に着地したときの戻し方、そしてどこで打ち切るかまで順にまとめます。

なぜなぜ分析シート(Excel・無料)一つの問題について、原因を5段階で掘り下げるときだけ使う様式です。登録不要でダウンロードできます。
テンプレートを見る
この記事の内容(11項目)

なぜなぜ分析のやり方は「事実を固めてから」

なぜなぜ分析は、最初の1行で結果がほぼ決まります。最初に置く現象があいまいだと、そこから先の「なぜ」も全部あいまいになります。

掘れない書き出し

「出荷ミスが起きた」
「不良が発生した」
「連絡が漏れた」
何が、どのくらい、が無い。

掘れる書き出し

「8月20日の出荷で、A品の箱にB品が3個混ざった」
「内径が上限を0.03mm超過した品が、200個中4個出た」
いつ・何が・どれだけが入っている。

なぜなぜ分析を始める前に、次の4つを埋めておきます。ここが埋まらないうちは、掘り始めても推測が並ぶだけです。

  • いつ|日付と、可能なら時刻や直(シフト)
  • どこで|工程名。設備名まで分かればなお良い
  • 何が|現象を数値で。良品との差を数字にする
  • どれだけ|不良数と、確認した母数の両方

「なぜ」の前に「本当にそうか」を1回入れる

報告された内容が事実かどうかは、意外と確かめられていません。現物を見た人が誰かを確認するだけで、話が変わることがあります。伝聞のまま掘ると、存在しない原因の分析をすることになります。

なぜなぜ分析のやり方:5つの手順

なぜなぜ分析のやり方を手順にすると、次の5つです。

なぜなぜ分析の進み方
1. 現象を書く数値で、1行で
→
2. 系統を分ける発生と流出の2本
→
3. 掘る各系統で3〜5段
→
4. 検証逆から読んで通るか
→
5. 対策打てる段に手を打つ
2を飛ばして1本で掘ると、必ず発生側だけの分析になる

手順2が、いちばん効く

なぜなぜ分析を1本の線で掘ると、「なぜ作ってしまったか」だけの分析になります。最初に2本に分けて、別々に掘ると、検査の側の穴が見えます。

系統最初の問い出てくる対策の例
発生なぜ、その状態のものを作ってしまったか治具の追加、条件の見直し、材料の変更
流出なぜ、検査や確認で止められなかったか検査項目の追加、頻度の変更、判定基準の明確化

手順4の検証は、下から読む

掘り終わったら、いちばん下の段から上へ「だから」でつなげて読みます。「治具が無い、だから目視で合わせた、だから位置がずれた」と自然に読めれば通っています。途中で飛んでいると感じたら、そこに段が1つ足りません。

記入例:出荷した箱に別の品番が混ざった

なぜなぜ分析のやり方を、1件の例でシートに落とすと次のようになります。説明のために作った例です。現象は「8月20日の出荷で、A品の箱にB品が3個混ざった(出荷200箱中1箱)」とします。

段発生(なぜ混ざったか)流出(なぜ出荷前に止まらなかったか)
なぜ1梱包台でA品とB品を続けて詰めていた出荷前の確認は箱数だけで、中身の品番は見ていなかった
なぜ2品番を切り替えるときに、台の上にB品が残っていた確認表に品番を照合する欄が無かった
なぜ3切り替えのときに台を空にする手順が決まっていなかった確認表を作ったときは、1日1品番しか流していなかった
根拠当日の梱包記録で、A品とB品の切り替えが3回あった確認表の現物。品番の欄が無いことを確かめた
対策切り替え時に台を空にして写真で残す手順を追加確認表に品番照合欄を追加。2品番以上の日はバーコードで照合

ポイントはここです。どちらの列も「人」ではなく「手順」や「様式」で止まっています。3段目で人の注意に着地しそうになったら、次の節の言い換えで続けます。「根拠」の行に確かめた事実を書いておくと、あとで読み返したときに推測と区別できます。

「作業者の注意不足」で止まったときの戻し方

なぜなぜ分析でいちばん多い行き止まりが、原因が人に着地することです。ここで止めると、対策は「注意喚起」「教育」になり、担当が替われば戻ります。

止まった答え言い換える問い出てくるもの
作業者が確認しなかったなぜ、確認しなくても先へ進めたか次工程で止まらない、チェック欄が無い
作業者が間違えたなぜ、間違えられる状態だったか似た部品が隣、表示が小さい、置き場が同じ
教育が不足していたなぜ、教えなくても任せられると判断したか力量の基準が無い、引き継ぎの記録が無い
忙しかったなぜ、その時間に人が足りなかったか要員の計画が実態と合っていない

ポイントはここです。主語を人から状態に変えます。「なぜ間違えたか」ではなく「なぜ間違えられる状態だったか」と聞くと、答えが仕組みの側に移ります。

それでも人が原因のときはある

すべてを仕組みのせいにするのも行きすぎです。手順どおりにやらなかったことが原因のこともあります。その場合でも、対策は「守られなかったことに気づける形」に置きます。守るよう求めるだけでは、次に同じことが起きたときに何も変わっていません。

どこまで掘るか、どこで打ち切るか

「5回」という数字が有名ですが、回数は目的ではありません。手を打てる段にたどり着いたら、そこで止めます。

状態判断
自社で決められることに着いたここで止める。対策を打つ
他社・行政・市況など、自社で変えられないことに着いた1つ手前に戻る。「それが起きても影響が出ない形」を考える
3回目までに人に着いた掘り方が浅い。前の節の言い換えで続ける
抽象的な言葉(意識、風土、文化)が出たそこは掘っても対策にならない。具体の場面に戻す

掘りすぎると手が届かなくなる

「なぜ材料費が上がったか」「なぜ景気が悪いか」まで行くと、対策は打てません。自社で変えられる範囲の、いちばん深いところが止め時です。掘りすぎたと感じたら、1段戻って対策を考えます。

枝分かれしたら両方掘る

「なぜ」に対する答えが2つ以上あることはよくあります。片方だけ選ぶと、選ばなかったほうが残ります。枝はどちらも掘って、対策を打つときに優先順位を付けるほうが安全です。シートの行を分けて、系統ごとに追えるようにしておきます。

なぜなぜ分析を1人でやらない

なぜなぜ分析を担当者1人でやると、その人の知っている範囲でしか掘れません。一般には、次の3者が入ると精度が上がります。

  • 現場で作業している人|実際にどう作業しているかを知っている。手順書と実態の差はここからしか出てこない
  • 後工程・検査の人|流出側の掘り下げに要る。「なぜ止められなかったか」は当事者にしか答えられない
  • 工程を決めた人|なぜその作り方にしたのかを知っている。立ち上げ時の前提が出てくる

責める場にしない

なぜなぜ分析の場が犯人探しになると、次から情報が出てこなくなります。「人」ではなく「状態」を主語にするというルールを最初に共有しておくと、場の空気が変わります。書記が主語を書き換えるだけでも効きます。

その場で埋めない項目を決めておく

会議の場では、分からないことを推測で埋めたくなります。分からない段には「未確認」と書いて、誰が確かめるかを決めます。推測と事実が同じ字で並んでいるシートは、あとで読み返せません。

なぜなぜ分析が向かない場面

なぜなぜ分析は万能ではありません。向かない場面で使うと、時間だけかかって何も出ません。次の3つは、別のやり方に切り替えたほうが早く着きます。

場面なぜ向かないか代わりに使うもの
原因の候補がまったく浮かばない掘る筋が1本も無いので、最初の「なぜ」で止まる特性要因図で候補を広く出す。現物調査で事実を増やす
複数の要因が重なって初めて起きる1本の線で追うと、単独の要因に見えてしまう発生した日の条件を並べて、共通点を探す
たまにしか起きず、条件が読めない推測が続いて、確かめられないまま段が伸びる発生条件を記録し続けて、母数がたまってから見る

候補が浮かばないときは、掘る前に事実を増やす

「なぜ」が続かないのは、掘る力の問題ではなく材料不足です。現物を測る、記録を並べる、作業を見にいくのどれかをやると、たいてい筋が1本立ちます。会議を延長するより効果があります。

複数要因が重なる不具合は、条件を並べる

気温が高い日に、特定の材料ロットで、夜勤帯にだけ出る、といった不具合があります。この形は、なぜなぜでは追えません。発生した日ごとに条件を横に並べて、共通しているものを探すほうが確実です。3件も並べば、たいてい何かが揃います。

それでもなぜなぜに戻る場面

条件が絞れたら、そこからはなぜなぜが効きます。「なぜ夜勤帯だけなのか」から掘り始めれば、確認者の配置や照明といった具体に着きます。候補を絞る道具と、掘る道具を使い分けるという整理をしておくと、どちらも空回りしません。

なぜなぜ分析の結果を、どこに残すか

なぜなぜ分析は、その場のホワイトボードで終わりがちです。写真を撮って終わりにすると、3か月後の有効性確認のときに読めません。

残すもの置き場所理由
掘った過程(なぜの各段)なぜなぜ分析シートあとで「どこで判断を間違えたか」を追える
発生と流出の切り分け発生工程・流出工程 特定表対策を2系統に分けて打つため
結論と対策是正処置報告書1案件の公式な記録になる

3つに分けるのは、それぞれ読む人と読む時期が違うからです。分析の過程まで報告書に押し込むと、報告書が読めない厚さになります。

「未確認」のまま閉じない

シートに「未確認」が残ったまま案件を閉じると、次に同じ不具合が出たときに、また同じところから始めることになります。閉じる前に、未確認の行が残っていないかだけ見ておくと、次が速くなります。

発生側と流出側の分け方は原因分析の進め方で、結論をどう報告書にまとめるかは是正処置とはで扱っています。

発生工程・流出工程 特定表(Excel・無料)なぜ作り込んだのかと、なぜ止められなかったのかを分けて調べます。登録不要でダウンロードできます。
テンプレートを見る

なぜなぜ分析のやり方にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

なぜなぜ分析のやり方そのものを定めた法令や規格はありません。ただ、なぜなぜ分析が使われる場面である品質マネジメントの規格と労働災害の分析には、2024年から2026年にかけて動きがありました。日付順に並べます。

時期出来事なぜなぜ分析とのかかわり
2024年2月23日ISO 9001:2015 の追補1(気候変動への対応)が発行。組織の状況(4.1・4.2)で気候変動が関係するかを判断することが加わった是正処置の箇条(10.2)は変わっていない。原因を掘る手順はそのまま使える
2025年5月14日改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布。注文者などが講じる措置の対象が、一人親方などの作業従事者にも広がった(主な施行は2026年4月1日)災害の原因を掘るとき、自社の従業員以外の作業者の状態も分析の対象に入る場面が増える
2026年5月27日厚生労働省が令和7年の労働災害発生状況(確定値)を公表。死亡者は700人で過去最少、休業4日以上の死傷者は135,333人。事故の型では墜落・転落の死亡が186人、はさまれ・巻き込まれが117人件数は減っても、同じ型の災害が繰り返されている。型ごとに原因を掘る材料になる
2026年9月16日ISO 9001:2026 が発行。ISO 9001:2015 からの移行期限は2029年9月30日とされている2015年版では、是正処置で不適合の原因を明確にすることが求められている(10.2.1 b))。2026年版の対応箇条は規格本文で確認する

なぜなぜ分析のやり方を社内の手順書に書いている場合は、認証を受けている規格の版が変わるタイミングで、是正処置の手順と合わせて見直すと手戻りが少なくなります。

出典:ISO 9001:2015/Amd 1:2024(ISO)、労働安全衛生法等の一部を改正する法律の概要(厚生労働省)、令和7年の労働災害発生状況(厚生労働省)、ISO 9001:2026 の発行(ISO)

確認日は2026年10月3日です。規格の移行の扱いは認証機関に、労働災害の報告や調査の扱いは所轄の労働基準監督署にご確認ください。

なぜなぜ分析のやり方に出てくる用語

なぜなぜ分析のやり方を説明するときに出てくる言葉を、定義の出どころとあわせて並べます。社内で言葉の意味がそろっていないと、同じシートを見ても読み方が変わります。

用語意味出典
なぜなぜ分析起きた現象に「なぜ」を繰り返して、手を打てる原因までたどる方法法令上の定義はない。トヨタ生産方式の考え方として広まった
真因そこを変えれば同じ現象が起きなくなる原因法令上の定義はない。現場で使われる言葉
不適合要求事項を満たしていないことJIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.6.9
修正見つかった不適合を取り除く処置(手直し、選別など)JIS Q 9000:2015 3.12.3
是正処置不適合の原因を取り除き、再発を防ぐための処置JIS Q 9000:2015 3.12.2
発生・流出不具合を作り込んだ側と、それを見逃して後工程や客先へ出した側法令上の定義はない。製造業で広く使われる分け方
特性要因図結果と、それに影響する要因の候補を枝分かれで整理した図法令上の定義はない。品質管理の手法として広く使われる

なぜなぜ分析のやり方で特に混ざりやすいのが、修正と是正処置です。不良品を選別するのは修正、選別が要らない状態に変えるのが是正処置と分けておくと、対策の欄に何を書くかが決まります。

なぜなぜ分析のやり方と一緒に押さえておきたいこと

なぜなぜ分析のやり方の解説では、掘り方そのものが中心になりがちです。実務では、掘る前と掘った後に決めておくことがあります。品質マネジメントの規格に沿って運用している会社向けに、3つ挙げます。

同じ原因の不具合がほかに無いかを見る

ISO 9001:2015 の10.2.1 b) では、是正処置の要否を評価するときに、不適合の原因を明確にすることに加えて、類似の不適合が無いか、または起こり得るかを明確にすることが求められています。なぜなぜ分析で手順の欠けにたどり着いたら、同じ手順を使っている別の工程や品番に同じ欠けが無いかを一覧で確かめます。1件の分析が、ほかの工程の予防にもなります。

掘った結果は、効いたかどうかの確認とセットで残す

同じ規格の10.2.1 d) では、とった是正処置の有効性をレビューすることが、10.2.2 では不適合の内容と処置、是正処置の結果を文書化した情報として残すことが求められています。なぜなぜ分析シートの最後に「いつ、何を見て効いたと判断するか」の欄を作っておくと、確認の予定が抜けません。確認の時期と判定のしかたは是正処置の有効性確認にまとめています。

労働災害の分析では、作業していた人の範囲を広く取る

改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)では、注文者などが講じる措置の対象が、自社の労働者以外の作業従事者にも広がっています(主な施行は2026年4月1日)。構内の協力会社や一人親方がかかわった災害をなぜなぜ分析で掘るときは、その人が受けた指示、使った設備、作業の段取りまで材料に入れると、手を打てる段に着きやすくなります。対象となる措置の範囲は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

どの不具合から掘るかを決めるときは、件数の多い順に並べるパレート図が使えます(パレート図)。

改善板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. なぜなぜ分析は本当に5回繰り返す必要がありますか?
回数は目安で、目的ではありません。自社で手が打てる段にたどり着いたら止めます。逆に3回で「人の注意不足」に着地したら、掘り方が浅いサインなので続けます。
Q. なぜなぜ分析で答えが複数出たときはどうしますか?
両方掘ってください。片方を選んで捨てると、捨てたほうの原因が残ります。掘り終わってから、対策を打つ順番を影響の大きさで決めるほうが安全です。
Q. なぜなぜ分析と特性要因図(フィッシュボーン)はどう使い分けますか?
一般には、原因の候補を広く出したいときに特性要因図、1つの筋を深く追いたいときになぜなぜ分析が使われます。候補を出してから、有力なものをなぜなぜで掘る、という順に組み合わせる形もよく使われています。
Q. 分析の場に現場の人を呼ぶと業務が止まりませんか?
全員を長時間拘束する必要はありません。事実を固める段階だけ現場に出向いて聞き、掘り下げは少人数で行い、できた筋道を最後に現場に見てもらう、という分け方だと30分程度で回ります。
Q. なぜなぜ分析の結果を客先に出しても大丈夫ですか?
掘った過程をそのまま出すと、社内の事情や個人が特定できる記述が混ざりがちです。客先へ出すのは、結論として確定した原因と対策だけにして、過程は社内の記録に残すという分け方が扱いやすくなります。相手から過程の提出を求められた場合は、人の名前を役割名に置き換えたうえで出す形が一般的です。
Q. なぜなぜ分析シートに決まった様式はありますか?
決まった様式はありません。最低限、現象・系統(発生/流出)・各段の「なぜ」・その根拠・確認したかどうか、が並んでいれば機能します。改善板が配布しているシートも、法令や規格で定められた様式ではない参考様式です。
なぜなぜ分析シート(Excel・無料)一つの問題について、原因を5段階で掘り下げるときだけ使う様式です。登録不要でダウンロードできます。
テンプレートを見る

本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-10時点のものです。