なぜなぜ分析のやり方|5回で止まらないための問い方
なぜなぜ分析は、トヨタ生産方式で使われてきた問題の掘り下げ方として広く知られています。やり方そのものは単純で、「なぜ」を繰り返すだけです。それでも社内でやると、3回目あたりで「作業者の注意不足」に着地して止まる、ということが繰り返し起きます。
止まる原因は、掘り方ではなく掘り始める前の準備にあることが多くあります。この記事では、なぜなぜ分析のやり方を、事実を固める段階から、人に着地したときの戻し方、そしてどこで打ち切るかまで順にまとめます。
この記事の内容(8項目)
なぜなぜ分析のやり方は「事実を固めてから」
なぜなぜ分析は、最初の1行で結果がほぼ決まります。最初に置く現象があいまいだと、そこから先の「なぜ」も全部あいまいになります。
掘れない書き出し
「出荷ミスが起きた」「不良が発生した」
「連絡が漏れた」
何が、どのくらい、が無い。
掘れる書き出し
「8月20日の出荷で、A品の箱にB品が3個混ざった」「内径が上限を0.03mm超過した品が、200個中4個出た」
いつ・何が・どれだけが入っている。
なぜなぜ分析を始める前に、次の4つを埋めておきます。ここが埋まらないうちは、掘り始めても推測が並ぶだけです。
- いつ|日付と、可能なら時刻や直(シフト)
- どこで|工程名。設備名まで分かればなお良い
- 何が|現象を数値で。良品との差を数字にする
- どれだけ|不良数と、確認した母数の両方
「なぜ」の前に「本当にそうか」を1回入れる
報告された内容が事実かどうかは、意外と確かめられていません。現物を見た人が誰かを確認するだけで、話が変わることがあります。伝聞のまま掘ると、存在しない原因の分析をすることになります。
なぜなぜ分析のやり方:5つの手順
なぜなぜ分析のやり方を手順にすると、次の5つです。
手順2が、いちばん効く
なぜなぜ分析を1本の線で掘ると、「なぜ作ってしまったか」だけの分析になります。最初に2本に分けて、別々に掘ると、検査の側の穴が見えます。
| 系統 | 最初の問い | 出てくる対策の例 |
|---|---|---|
| 発生 | なぜ、その状態のものを作ってしまったか | 治具の追加、条件の見直し、材料の変更 |
| 流出 | なぜ、検査や確認で止められなかったか | 検査項目の追加、頻度の変更、判定基準の明確化 |
手順4の検証は、下から読む
掘り終わったら、いちばん下の段から上へ「だから」でつなげて読みます。「治具が無い、だから目視で合わせた、だから位置がずれた」と自然に読めれば通っています。途中で飛んでいると感じたら、そこに段が1つ足りません。
「作業者の注意不足」で止まったときの戻し方
なぜなぜ分析でいちばん多い行き止まりが、原因が人に着地することです。ここで止めると、対策は「注意喚起」「教育」になり、担当が替われば戻ります。
| 止まった答え | 言い換える問い | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 作業者が確認しなかった | なぜ、確認しなくても先へ進めたか | 次工程で止まらない、チェック欄が無い |
| 作業者が間違えた | なぜ、間違えられる状態だったか | 似た部品が隣、表示が小さい、置き場が同じ |
| 教育が不足していた | なぜ、教えなくても任せられると判断したか | 力量の基準が無い、引き継ぎの記録が無い |
| 忙しかった | なぜ、その時間に人が足りなかったか | 要員の計画が実態と合っていない |
ポイントはここです。主語を人から状態に変えます。「なぜ間違えたか」ではなく「なぜ間違えられる状態だったか」と聞くと、答えが仕組みの側に移ります。
それでも人が原因のときはある
すべてを仕組みのせいにするのも行きすぎです。手順どおりにやらなかったことが原因のこともあります。その場合でも、対策は「守られなかったことに気づける形」に置きます。守るよう求めるだけでは、次に同じことが起きたときに何も変わっていません。
どこまで掘るか、どこで打ち切るか
「5回」という数字が有名ですが、回数は目的ではありません。手を打てる段にたどり着いたら、そこで止めます。
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 自社で決められることに着いた | ここで止める。対策を打つ |
| 他社・行政・市況など、自社で変えられないことに着いた | 1つ手前に戻る。「それが起きても影響が出ない形」を考える |
| 3回目までに人に着いた | 掘り方が浅い。前の節の言い換えで続ける |
| 抽象的な言葉(意識、風土、文化)が出た | そこは掘っても対策にならない。具体の場面に戻す |
掘りすぎると手が届かなくなる
「なぜ材料費が上がったか」「なぜ景気が悪いか」まで行くと、対策は打てません。自社で変えられる範囲の、いちばん深いところが止め時です。掘りすぎたと感じたら、1段戻って対策を考えます。
枝分かれしたら両方掘る
「なぜ」に対する答えが2つ以上あることはよくあります。片方だけ選ぶと、選ばなかったほうが残ります。枝はどちらも掘って、対策を打つときに優先順位を付けるほうが安全です。シートの行を分けて、系統ごとに追えるようにしておきます。
なぜなぜ分析を1人でやらない
なぜなぜ分析を担当者1人でやると、その人の知っている範囲でしか掘れません。一般には、次の3者が入ると精度が上がります。
- 現場で作業している人|実際にどう作業しているかを知っている。手順書と実態の差はここからしか出てこない
- 後工程・検査の人|流出側の掘り下げに要る。「なぜ止められなかったか」は当事者にしか答えられない
- 工程を決めた人|なぜその作り方にしたのかを知っている。立ち上げ時の前提が出てくる
責める場にしない
なぜなぜ分析の場が犯人探しになると、次から情報が出てこなくなります。「人」ではなく「状態」を主語にするというルールを最初に共有しておくと、場の空気が変わります。書記が主語を書き換えるだけでも効きます。
その場で埋めない項目を決めておく
会議の場では、分からないことを推測で埋めたくなります。分からない段には「未確認」と書いて、誰が確かめるかを決めます。推測と事実が同じ字で並んでいるシートは、あとで読み返せません。
なぜなぜ分析が向かない場面
なぜなぜ分析は万能ではありません。向かない場面で使うと、時間だけかかって何も出ません。次の3つは、別のやり方に切り替えたほうが早く着きます。
| 場面 | なぜ向かないか | 代わりに使うもの |
|---|---|---|
| 原因の候補がまったく浮かばない | 掘る筋が1本も無いので、最初の「なぜ」で止まる | 特性要因図で候補を広く出す。現物調査で事実を増やす |
| 複数の要因が重なって初めて起きる | 1本の線で追うと、単独の要因に見えてしまう | 発生した日の条件を並べて、共通点を探す |
| たまにしか起きず、条件が読めない | 推測が続いて、確かめられないまま段が伸びる | 発生条件を記録し続けて、母数がたまってから見る |
候補が浮かばないときは、掘る前に事実を増やす
「なぜ」が続かないのは、掘る力の問題ではなく材料不足です。現物を測る、記録を並べる、作業を見にいくのどれかをやると、たいてい筋が1本立ちます。会議を延長するより効果があります。
複数要因が重なる不具合は、条件を並べる
気温が高い日に、特定の材料ロットで、夜勤帯にだけ出る、といった不具合があります。この形は、なぜなぜでは追えません。発生した日ごとに条件を横に並べて、共通しているものを探すほうが確実です。3件も並べば、たいてい何かが揃います。
それでもなぜなぜに戻る場面
条件が絞れたら、そこからはなぜなぜが効きます。「なぜ夜勤帯だけなのか」から掘り始めれば、確認者の配置や照明といった具体に着きます。候補を絞る道具と、掘る道具を使い分けるという整理をしておくと、どちらも空回りしません。
なぜなぜ分析の結果を、どこに残すか
なぜなぜ分析は、その場のホワイトボードで終わりがちです。写真を撮って終わりにすると、3か月後の有効性確認のときに読めません。
| 残すもの | 置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 掘った過程(なぜの各段) | なぜなぜ分析シート | あとで「どこで判断を間違えたか」を追える |
| 発生と流出の切り分け | 発生工程・流出工程 特定表 | 対策を2系統に分けて打つため |
| 結論と対策 | 是正処置報告書 | 1案件の公式な記録になる |
3つに分けるのは、それぞれ読む人と読む時期が違うからです。分析の過程まで報告書に押し込むと、報告書が読めない厚さになります。
「未確認」のまま閉じない
シートに「未確認」が残ったまま案件を閉じると、次に同じ不具合が出たときに、また同じところから始めることになります。閉じる前に、未確認の行が残っていないかだけ見ておくと、次が速くなります。
発生側と流出側の分け方は原因分析の進め方で、結論をどう報告書にまとめるかは是正処置とはで扱っています。
よくある質問
- Q. なぜなぜ分析は本当に5回繰り返す必要がありますか?
- 回数は目安で、目的ではありません。自社で手が打てる段にたどり着いたら止めます。逆に3回で「人の注意不足」に着地したら、掘り方が浅いサインなので続けます。
- Q. なぜなぜ分析で答えが複数出たときはどうしますか?
- 両方掘ってください。片方を選んで捨てると、捨てたほうの原因が残ります。掘り終わってから、対策を打つ順番を影響の大きさで決めるほうが安全です。
- Q. なぜなぜ分析と特性要因図(フィッシュボーン)はどう使い分けますか?
- 一般には、原因の候補を広く出したいときに特性要因図、1つの筋を深く追いたいときになぜなぜ分析が使われます。候補を出してから、有力なものをなぜなぜで掘る、という順に組み合わせる形もよく使われています。
- Q. 分析の場に現場の人を呼ぶと業務が止まりませんか?
- 全員を長時間拘束する必要はありません。事実を固める段階だけ現場に出向いて聞き、掘り下げは少人数で行い、できた筋道を最後に現場に見てもらう、という分け方だと30分程度で回ります。
- Q. なぜなぜ分析の結果を客先に出しても大丈夫ですか?
- 掘った過程をそのまま出すと、社内の事情や個人が特定できる記述が混ざりがちです。客先へ出すのは、結論として確定した原因と対策だけにして、過程は社内の記録に残すという分け方が扱いやすくなります。相手から過程の提出を求められた場合は、人の名前を役割名に置き換えたうえで出す形が一般的です。
- Q. なぜなぜ分析シートに決まった様式はありますか?
- 決まった様式はありません。最低限、現象・系統(発生/流出)・各段の「なぜ」・その根拠・確認したかどうか、が並んでいれば機能します。改善板が配布しているシートも、法令や規格で定められた様式ではない参考様式です。
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