再現試験の進め方|不具合の原因を確かめる条件の振り方と回数
再現試験とは、不具合が出たときと同じ条件をわざと作り、同じ不具合が出るかを確かめる試験です。原因の候補がいくつか挙がったあと、それが本当かどうかを確かめるいちばん確実な方法が再現試験です。同じ条件で同じ不具合が出るなら、その条件が原因と言い切れます。
ただ、やり方を間違えると「出たり出なかったり」で終わり、時間だけかかります。一般には、再現試験は条件を1つずつ変えて行います。この記事では、再現試験の進め方を、仮説の立て方から条件の設計、回数の決め方、再現しなかったときの扱いまでまとめます。
この記事の内容(11項目)
- 再現試験を始める前に決めること
- 変えるのは1つだけ
- 再現の基準を先に書く
- 条件の変え方を設計する
- 実際の運用範囲より広く取る
- 複数条件が重なる不具合の扱い
- 回数をどう決めるか
- 回数の目安は「3÷不良率」
- 低い不良率は、条件を厳しくして加速する
- 途中でやめる基準も決めておく
- 再現しなかったときの扱い
- 否定した候補は消さずに残す
- 再現しないこと自体が手がかりになる
- 安全と費用の線を引く
- 試験品の識別を先に決める
- 費用は対策の効果と比べる
- 再現できたあとにやること
- 対策の効果を、その場で確かめられる
- どこまで外れると出るかを押さえる
- 管理値の見直しにつなげる
- 再現の条件を記録に残す理由
- 再現試験の記録に残すもの
- そろえた条件こそ大事
- 現物調査の記録とつなぐ
- 再現試験にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 再現試験に出てくる用語
- 再現試験と一緒に押さえておきたいこと
- 再現試験の結果は、是正処置の「原因を明確にする」の証拠になる
- 製品事故にあたるなら、再現試験より先に報告の要否を確かめる
- 「出なかった」と「判断できず」を分けて書く
- よくある質問
再現試験を始める前に決めること
再現試験は、思いついた条件を片端から試す作業ではありません。先に仮説を1つに絞って、それを確かめる形にしないと、結果が読めません。
| 決めること | 書き方の例 |
|---|---|
| 確かめたい仮説 | 「材料の温度が20度を下回ると、成形不良が出る」 |
| 変える条件 | 材料温度(15度/20度/25度) |
| そろえる条件 | 設備、金型、作業者、成形圧力、サイクル時間 |
| 見る現象 | ヒケの有無と深さ(mm) |
| 試す回数 | 各条件10個 |
| 再現したと判断する基準 | 10個中3個以上でヒケが0.2mm以上 |
変えるのは1つだけ
2つ以上を同時に変えると、どちらが効いたか分かりません。1回の試験で変えるのは1条件にします。時間がかかるように見えますが、結果が読めない試験を繰り返すより早く着きます。
再現の基準を先に書く
「再現した」の基準を試験のあとに決めると、結果に合わせて基準が動きます。何個中何個で、どの程度なら再現とみなすかを、始める前に書いておきます。
条件の変え方を設計する
条件の振り方には順番があります。いちばん疑わしいものから、範囲を広めに取って始めると、少ない回数で当たります。
実際の運用範囲より広く取る
通常の運用範囲だけで振ると、何も出ないことがあります。運用範囲の外まで振って、そこで出るかを見ると、余裕がどれだけあるかも同時に分かります。運用範囲の外で出るなら、いまは大丈夫でも条件がずれれば出る、ということです。
複数条件が重なる不具合の扱い
条件を1つずつ振っても出ない場合、複数が重なって初めて出る不具合の可能性があります。この場合は、実際に発生した日の条件を全部そろえて1回試すところから始めます。それで出れば、そこから1つずつ戻して、どれが効いているかを見ます。
回数をどう決めるか
再現試験の回数は、費用と時間の制約で決まります。統計的な精度を求めるときりがないので、判断できる最小の回数から始めます。
| もとの不良率 | 回数の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 30パーセント以上 | 各条件10個 | 出るなら10個のうちにほぼ出る(1個も出ない確率は3パーセント弱) |
| 2〜5パーセント | 各条件60〜150個 | 3÷不良率の数を作ると、1個以上出る確率がおよそ95パーセントになる |
| 1パーセント未満 | 300個以上が要り、再現試験に向かない | 条件を厳しくして加速するか、記録の分析に切り替える |
回数の目安は「3÷不良率」
不良率が p の不具合を n 個つくったとき、1個も出ない確率は(1-p)の n 乗です。これを5パーセント以下にする n は、おおよそ 3÷p になります。不良率5パーセントなら60個、2パーセントなら150個です。この数を作っても出なければ、「その条件では、もとの不良率ほどは出ない」と言えます。逆に、これより少ない数で出なかったときは、否定ではなく「判断できず」と書きます。
低い不良率は、条件を厳しくして加速する
不良率が低い不具合をそのままの条件で再現しようとすると、何百個も作ることになります。疑わしい条件を通常より厳しくして、出やすくするという方法があります。ただし、厳しくした条件で出たことが、通常条件でも起きる理由になるとは限らないので、そこは分けて書きます。
途中でやめる基準も決めておく
出ないまま回数を重ねると、いつまでも終わりません。この回数で出なければ、この仮説は否定するという線を先に引いておきます。否定できたこと自体が成果です。
再現しなかったときの扱い
再現試験の結果、出なかったというのは失敗ではありません。候補を1つ消せたという結果です。ただ、書き方を間違えると、あとで読めなくなります。
| 書き方 | あとで読めるか |
|---|---|
| 「再現せず」 | 読めない。何をどう試したか分からない |
| 「材料温度15度で10個試作、ヒケの発生なし」 | 読める。同じ条件を再度試さずに済む |
| 「材料温度15〜25度の範囲では、10個ずつ試作してヒケの発生なし。温度以外の要因を疑う」 | 次にやることまで分かる |
否定した候補は消さずに残す
「これは違った」という記録が残っていないと、次に似た不具合が出たときに、また同じ候補から調べ始めます。否定の記録は、次の担当者の時間を節約します。
再現しないこと自体が手がかりになる
社内で再現しないのに現場では出る、という場合、試験でそろえた条件のどれかが、実際の現場では違っているということです。作業者、時間帯、材料のロット、設備の状態。試験でそろえた条件の一覧を見直すと、疑うべき場所が見えます。掘り方はなぜなぜ分析のやり方で扱っています。
安全と費用の線を引く
再現試験は、わざと不具合を起こす作業です。やってはいけない試験があります。
| 止めるべき試験 | 代わりにやること |
|---|---|
| 人が危険にさらされる条件での試験 | 解析やシミュレーション。安全装置を付けた治具で代替 |
| 設備を壊す可能性が高い試験 | 予備機や治具で代替。設備メーカーに相談 |
| 試験品が出荷ラインに混ざる恐れがある | 試験品の識別と隔離を先に決めてから始める |
| 費用が対策の効果を超える | 再現をあきらめ、記録の分析で絞る |
試験品の識別を先に決める
再現試験で作った品が、通常の品と混ざると、それ自体が不具合の流出になります。色違いの札、専用の箱、試験品の置き場を決めてから始めます。試験が終わったあとの処分方法まで決めておきます。
費用は対策の効果と比べる
再現試験に大きな費用がかかる場合、その支出が対策の効果に見合うかを先に考えます。年に数万円の損失に、数十万円の試験費用をかけるのは合いません。その場合は、記録の分析や、暫定対策を続ける判断もあります。金額に直す考え方は改善効果の金額換算で扱っています。
再現できたあとにやること
再現できた時点で、原因はほぼ確定します。ただ、そこで止めると使い切れていません。再現できる状態は、対策の効果を確かめるのにも使えます。
対策の効果を、その場で確かめられる
通常、対策の効果確認には数週間から数か月かかります。再現できる条件があれば、対策を打った直後に同じ条件で試して確かめられます。再現試験のいちばん大きな利点はここにあります。
どこまで外れると出るかを押さえる
「20度で出て、25度で出ない」と分かったら、その間のどこが境目かを見ます。境目が管理値のすぐ近くなら、余裕がありません。管理値そのものを見直す根拠になります。
管理値の見直しにつなげる
境目が分かったら、いまの管理値がその境目からどれだけ離れているかを見ます。離れていれば余裕があり、近ければいつまた出てもおかしくないということです。管理値を厳しくするか、工程の能力を上げるかの判断材料になります。
再現の条件を記録に残す理由
再現の条件は、数か月後に対策の効果を確かめるときに、もう一度使います。そのときに条件が分からないと、また探すところから始まります。変えた条件だけでなく、そろえた条件まで残しておく理由がここにあります。
再現試験の記録に残すもの
再現試験の価値は、結果だけでなく条件にあります。条件が残っていないと、成功しても再現できません。
- 試験日・実施者|あとで細かいことを確認するため
- 確かめたい仮説|何を見るための試験だったか
- 変えた条件と水準|数値で。単位も忘れずに
- そろえた条件|設備、治具、材料ロット、作業者
- 試験数と発生数|10個中3個、のように両方
- 判定|再現した/しなかった/判断できず
- 次にやること|条件を狭める/別の仮説へ移る
そろえた条件こそ大事
変えた条件は記録されますが、そろえた条件は省かれがちです。再現しなかったときに疑うのは、そろえたつもりの条件です。ここが書かれていないと、原因の切り分けができません。
現物調査の記録とつなぐ
再現試験で作った品は、現物調査で測ります。不具合の現物・良品・再現品の3つを同じ測り方で並べると、再現できているかどうかが数字で判断できます。「同じように見える」で判断すると、あとで違ったことが分かります。測り方は現物調査のやり方にまとめました。
再現試験にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
再現試験のやり方そのものを決めた法令はありません。2023年以降に確かめられた動きは、製品事故の原因究明での再現試験の使われ方と、品質の仕組みの国際規格の改訂です。日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 再現試験への影響 |
|---|---|---|
| 2025年(2025年8月31日時点の集計) | 製品評価技術基盤機構(NITE)が「2024年度 事故情報解析報告書」をまとめた。2024年度に発生した製品事故は1,781件。事故品が手に入れば分解などの調査や、同等品での再現試験などを行うとしている。モバイルバッテリーは焼損が激しく原因の特定が難しい事故が多く、「原因不明」に分類される件数が多いとされた | 現物が残っていない不具合では、同じ型の品で条件を再現して確かめる、という進め方が公的な調査でも使われている |
| 2026年9月16日 | 品質マネジメントシステムの規格 ISO 9001:2026 が発行された。2015年版からの移行期限は2029年9月30日 | 認証を受けている会社では、不適合の原因を明確にする手順や、是正処置の有効性を確かめる手順を見直す機会になる |
再現試験で現場が押さえたいポイントは、現物が壊れて調べられないときこそ、同じ型の品で再現するという考え方です。不具合品を捨てる前に、同じロットの良品を数個取り置いておくと、あとで再現試験に使えます。
出典:2024年度事故情報収集・解析報告書(製品評価技術基盤機構)、2024年度 事故情報解析報告書 PDF(同)、ISO 9001:2026 の発行(ISO)
確認日は2026年10月3日です。製品事故にあたるかどうかは経済産業省・消費者庁かNITEに、認証の移行は認証機関にご確認ください。
再現試験に出てくる用語
再現試験のまわりの言葉は、品質の規格と測定の分野で意味が少しずつ違います。規格で定義されているものは、出どころと一緒に並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 再現試験 | 不具合が出たときと同じ条件を作り、同じ不具合が出るかを確かめる試験。英語では reproduction test などと言う。医療やリハビリの分野では、症状を誘発して確かめる検査を指すこともある | 法令上の定義はない |
| 不適合 | 要求事項を満たしていないこと | JIS Q 9000:2015 3.6.9 |
| 是正処置 | 不適合の原因を取り除き、再発を防ぐための処置 | JIS Q 9000:2015 3.12.2 |
| 検証 | 客観的な証拠を示して、決められた要求事項が満たされていることを確認すること | JIS Q 9000:2015 3.8.12 |
| 再現性(測定) | 人や条件が替わったときに、同じものを測った値がどれだけそろうか | 測定の分野の用語。ゲージR&Rで見る |
| 加速試験 | 条件を通常より厳しくして、不具合を短時間・少ない数で出やすくする試験 | 法令上の一般的な定義はない |
| 同等品 | 不具合品と同じ型式・仕様の品。現物が使えないときの再現に使う | 法令上の定義はない。NITEの事故調査の報告書で使われる言い方 |
再現試験で取り違えやすいのは、不具合を再現する「再現試験」と、測定のばらつきを見る「再現性」です。後者は測り方の話で、ゲージR&Rのやり方で扱っています。測り方がそろっていないと、再現できたかどうかの判断そのものがぶれます。
再現試験と一緒に押さえておきたいこと
再現試験の進め方を調べると、ソフトウェアの不具合の再現手順が多く出てきます。製造と品質の現場で、あまり書かれていない点を3つ挙げます。
再現試験の結果は、是正処置の「原因を明確にする」の証拠になる
ISO 9001 の 10.2.1 では、不適合が起きたときに、その不適合の原因を明確にすることと、とった是正処置の有効性をレビューすることが求められています。再現試験は、この2つの両方に使えます。原因の条件で出て、対策後に同じ条件で出なかったという記録は、是正処置の報告書にそのまま添えられる客観的な証拠です。報告書の書き方は是正処置とはにまとめています。
製品事故にあたるなら、再現試験より先に報告の要否を確かめる
消費者が使う製品で、死亡や重い傷害、火災など政令で定める重大製品事故が起きたことを知ったときは、消費生活用製品安全法第35条で、製造や輸入の事業者が製品の名称と型式、事故の内容、製造・輸入と販売の数量を内閣総理大臣(窓口は消費者庁)に報告しなければならないとされています。NITEの報告書でも、重大製品事故の調査は同法に基づいて行われると説明されています。社内の再現試験で事故品を壊したり条件を変えたりする前に、報告の要否と、事故品を残しておく必要があるかを確かめます。
「出なかった」と「判断できず」を分けて書く
回数が足りないまま出なかった試験を「再現せず」と書くと、あとで読んだ人は仮説が否定されたと受け取ります。この記事の回数の目安(3÷不良率)に届いていない試験は、否定ではなく「判断できず」として残すと、同じ仮説を捨ててしまう事故を防げます。判定の欄を「再現した/しなかった/判断できず」の3つにしておくのはこのためです。
工程のばらつきが規格の幅に対して十分小さいかは、工程能力指数で数字にできます(工程能力指数)。
よくある質問
- Q. 再現試験はどのくらいの期間で終わらせるべきですか?
- 決まった目安はありませんが、仮説1つごとに終わりの日を先に決めておくと長引きません。予定より長くかかる場合は、条件の振り方が細かすぎるか、仮説が絞れていない可能性があります。まず端の条件で試して、方向が見えてから狭めてください。
- Q. 再現試験の結果は客先に報告すべきですか?
- 原因の裏付けとして報告すると説得力が増します。ただし、条件を厳しくして加速した試験の結果は、通常条件でも起きる証拠にはなりません。そこは分けて書いてください。
- Q. 再現試験と量産の合間をどう調整しますか?
- 設備を止めて試験をすると生産に影響します。段取り替えの前後や、計画的な停止のタイミングに合わせると、追加の停止時間が要りません。試験の内容を先に決めておいて、機会が来たら実施するという段取りにすると、調整がつきやすくなります。
- Q. 再現試験は必ずやるべきですか?
- 必須ではありません。現物調査と記録の突き合わせで原因が確定できるなら、そこで十分です。費用と時間がかかるので、他の方法で確定できないときの手段と考えてください。
- Q. 再現試験で条件を複数同時に変えてもよいですか?
- どれが効いたか分からなくなるので、1回の試験で変えるのは1条件にしてください。複数が重なって出る不具合の場合は、まず発生時の条件を全部そろえて1回試し、出たところから1つずつ戻す方法があります。
- Q. 何個作れば「再現した」と言えますか?
- もとの不良率によります。出るかどうかを見るのに要る数は、おおよそ「3÷不良率」です。30パーセント以上なら各条件10個、5パーセントなら60個、2パーセントなら150個になります。1パーセント未満の不具合は300個以上が要り再現試験に向かないので、条件を厳しくして加速するか、記録の分析に切り替えてください。
- Q. 再現しなかった場合、その試験は無駄ですか?
- 無駄ではありません。候補を1つ消せたという結果です。ただし「再現せず」だけだと読めないので、何をどの範囲で何個試したかまで書いてください。次の担当者が同じ試験を繰り返さずに済みます。
- Q. 再現試験で作った品はどう扱えばよいですか?
- 始める前に、識別の方法(色違いの札、専用の箱、試験品の置き場)と、終わったあとの処分方法を決めてください。試験品が通常の品と混ざると、それ自体が不具合の流出になります。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-10時点のものです。