原因分析の進め方|発生原因と流出原因を分けて掘る
不具合の原因分析というと、会議室に集まって「なぜ」を繰り返す場面が思い浮かびます。ただ、その場で出てくるのは、集まった人が知っていることの範囲にとどまります。原因分析の精度は、掘る前にどれだけ証拠を持ち込めたかで決まります。
一般には、原因分析は発生原因(なぜ作り込んだか)と流出原因(なぜ止められなかったか)の2軸に分けて進めます。この記事では、原因分析の進め方を、証拠を集める順番から2軸の切り分け、そしてどこで打ち切るかまでまとめます。
この記事の内容(8項目)
- 原因分析の進め方は、2軸に分けるところから
- 「気づけたはずの場所」を先に洗う
- 原因分析で証拠を集める順番
- 現物は「触る前に撮る」
- 話を聞くのは、責める場にしない
- 推定原因と確定原因を分けて書く
- 確かめる方法は3つしかない
- 過去に同じことが起きていないかを、先に見る
- 「見つからなかった」も記録する
- 再発だった場合は、掘る場所が変わる
- 原因分析を打ち切る判断
- 分からないまま閉じない
- 時間をかけるべき案件を選ぶ
- 原因分析でよく出る5つの詰まり方
- その1:会議室だけで完結させる
- その2:最初に出た仮説に全員が乗る
- その3:現場に聞かずに手順書だけで判断する
- その4:流出側を「検査の強化」で終わらせる
- その5:分析の結果が担当者の頭にしか残らない
- 原因分析の結果を、対策につなぐ
- 掘った過程は捨てない
- 他の工程にも同じ原因が無いかを見る
- よくある質問
原因分析の進め方は、2軸に分けるところから
1本の線で原因を追うと、答えはたいてい製造側に着きます。最初に2本に分けてしまうと、検査や確認の側の穴も同時に見えます。
発生原因
なぜ、その状態のものができたか。設備、条件、材料、手順、治具。
対策は作らない形を作ること。
流出原因
なぜ、そのまま先へ流れたか。検査項目、頻度、判定基準、記録。
対策は止まる形を作ること。
一般に、再発防止の効果が大きいのは発生側への対策です。ただ、発生側の対策は設備や条件の変更を伴うことが多く、時間がかかります。流出側は先に手を打てることが多いので、両方を並べて、打つ順番を決めるのが現実的です。
「気づけたはずの場所」を先に洗う
流出原因を掘るときは、不具合が通過した工程を順に並べて、それぞれで「ここで気づけたか」を見ます。気づけたはずなのに気づかなかった工程が、いちばん効く場所です。
原因分析で証拠を集める順番
原因分析の進め方でつまずくのは、証拠が無いまま議論を始めたときです。集める順番には理由があります。後戻りできないものから先に押さえます。
| 順番 | 集めるもの | なぜこの順か |
|---|---|---|
| 1 | 現物 | 手直し・洗浄・廃棄で消える。いちばん失いやすい |
| 2 | その時の記録(作業日報、検査記録、設備の履歴) | 上書きされたり、月次でまとめられたりする |
| 3 | 作業した人の話 | 時間が経つほど記憶が整理されて、実際と変わる |
| 4 | 良品との比較 | 現物が残っていれば、あとからでも取れる |
| 5 | 再現試験 | 仮説が立ってからでないと、条件が決められない |
現物は「触る前に撮る」
現物調査は、測る前に写真を撮るところから始めます。分解したり洗ったりすると、そこにあった痕跡が消えます。良品と並べて撮っておくと、あとで説明するときに言葉が要りません。測り方と残し方は現物調査のやり方にまとめました。
話を聞くのは、責める場にしない
作業した人に話を聞くとき、原因を確かめる場だと伝わると、答えが「悪くない理由」に寄ります。その日の作業を時系列で再現してもらうという聞き方にすると、事実が出てきます。「いつもと違ったこと」を1つ挙げてもらうだけでも、手がかりになります。
推定原因と確定原因を分けて書く
原因分析の記録でいちばん多い問題は、推定と確定が同じ欄に並ぶことです。あとで読むと、どこまで確かめたのかが分かりません。
| 段階 | 書き方 | 次にやること |
|---|---|---|
| 推定 | 「〜の可能性がある」。根拠を1行添える | 確かめる方法と担当を決める |
| 検証中 | 誰が、いつまでに、どう確かめるか | 期限を置く |
| 確定 | 「〜であることを、〜で確認した」 | 対策の検討へ進む |
| 否定 | 「〜ではないことを、〜で確認した」 | 消した候補も残す |
ポイントはここです。否定した候補も消さずに残します。「これは違った」という記録が無いと、次に似た不具合が出たときに、また同じ候補から調べ始めます。
確かめる方法は3つしかない
推定を確定に変える方法は、実務では次の3つに絞られます。どれも使えないなら、その推定は確定にできません。
- 現物で確かめる|測る、分解する、良品と比べる
- 記録で確かめる|同じ条件だった日を抜き出して、発生の有無を突き合わせる
- 再現させる|条件を1つずつ変えて、同じ現象が出るか試す
再現させるのは手間がかかりますが、いちばん確かです。条件の変え方と記録の残し方は再現試験の進め方で扱っています。
過去に同じことが起きていないかを、先に見る
原因分析を始める前に、5分だけ使って過去を見ておくと、そのあとが速くなります。同じ現象が過去に出ていれば、そのときの分析結果がそのまま使えます。
| 探す軸 | 見つかったときの意味 |
|---|---|
| 同じ現象 | 前回の対策が効いていない。再発案件として扱う |
| 同じ工程 | その工程に共通の弱点がある可能性 |
| 同じ設備 | 設備の劣化や設定の問題を先に疑える |
| 同じ材料・仕入先 | ロット単位の問題として切り分けられる |
| 同じ時期(月末、繁忙期) | 要員や生産量など、条件側の問題 |
「見つからなかった」も記録する
探した結果、何も出てこなかったのなら、それも書いておきます。探したかどうかが分からないと、次の担当者がまた同じ検索をします。どの軸で、いつからいつまでを見たかを1行残しておけば足ります。
再発だった場合は、掘る場所が変わる
過去に同じ現象があり、対策も打っていたのなら、掘るべきは現象の原因ではなく前回の対策が効かなかった理由です。対策が実施されていなかったのか、実施されたが不十分だったのか、途中でやめたのかで、打つ手が変わります。この切り分けは対策後に再発したときにまとめています。
原因分析を打ち切る判断
原因分析は、時間をかければ精度が上がりますが、その間も現場は動いています。打ち切る条件を先に決めておくと、分析が長引いて対策が遅れる状態を避けられます。
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 発生・流出の両方に確定原因がある | 分析を終える。対策の検討へ |
| 発生側が確定していない | 流出側の対策を先に打ち、発生側の分析を続ける |
| どちらも推定のまま2週間が過ぎた | いったん暫定対策を続ける判断をして、期限を切り直す |
| 原因が自社の外にある | 相手に確認を依頼しつつ、影響が出ない形を自社で用意する |
分からないまま閉じない
原因が確定しないまま案件を閉じると、記録には「原因不明」だけが残ります。それ自体は正直な記録ですが、暫定対策をいつまで続けるかが決まっていないと、暫定が何年も居座ります。原因不明で閉じるときは、暫定対策の解除条件と見直しの日付を必ず添えます。
時間をかけるべき案件を選ぶ
すべての不具合に同じ時間はかけられません。一般には、客先へ出たもの、安全に関わるもの、繰り返しているものに時間を割り当て、単発で影響の小さいものは記録だけ残して月次の集計で傾向を見る、という配分が使われています。
原因分析でよく出る5つの詰まり方
その1:会議室だけで完結させる
集まった人の記憶だけで掘ると、出てくるのは印象です。現物と記録を机の上に置いてから始めるだけで、議論の質が変わります。持ち込むものが無いなら、その日は事実集めの分担を決めるだけにして解散するほうが早く着きます。
その2:最初に出た仮説に全員が乗る
最初に出た説が有力に見えると、そのあとの議論はその説を補強する方向に進みます。候補を3つ出してから検証に入ると、この偏りが減ります。1つしか出ないときは、まだ事実が足りていないサインです。
その3:現場に聞かずに手順書だけで判断する
手順書どおりに作業されている前提で掘ると、答えが出ません。実際の作業は、手順書に書かれていない工夫や省略を含んでいるのが普通です。手順書と実際の動きの差そのものが原因になっていることがよくあります。
その4:流出側を「検査の強化」で終わらせる
流出原因への対策が、いつも「検査項目を増やす」になる現場があります。増やし続けると検査の時間が伸び、いずれ守られなくなります。手前の工程で止まる形にできないかを先に考え、それが無理なときに検査を足す、という順番にします。
その5:分析の結果が担当者の頭にしか残らない
掘った過程がその人の記憶にしか無いと、異動や退職で消えます。シートに残す手間は10分程度です。次に似た不具合が出たとき、その10分が半日を節約します。
原因分析の結果を、対策につなぐ
原因が確定したら、対策を考える段階に移ります。ここで気をつけたいのは、原因1つに対策1つを機械的に対応させないことです。
| 確定した原因 | 対策の候補(複数出す) |
|---|---|
| 位置決めの治具が無く、目視で合わせていた | 簡易治具を作る(費用小・効果大・数日) |
| 位置の見本を作業台に掲示する(費用ほぼ無し・効果中・当日) | |
| 自動貼付機を導入する(費用大・効果大・数か月) |
候補を3つ出して、費用・効果・実施までの時間の3軸で比べます。1案しか出さないと、その案が通るかどうかの話になり、選んだ理由が残りません。比べ方は対策案の比較で扱っています。
掘った過程は捨てない
原因分析の過程は、報告書には結論しか載りません。掘った過程そのものは別に残しておくと、対策が効かなかったときに「どこで判断を間違えたか」を追えます。なぜなぜ分析のやり方で扱ったシートが、その置き場所になります。
他の工程にも同じ原因が無いかを見る
原因が確定した時点で、同じ原因を持つ場所が他にないかを見にいきます。対策を打ってからでは、担当者の関心が薄れて手が付きません。原因が分かった日が、水平展開を決めるいちばん良いタイミングです。
よくある質問
- Q. 発生原因と流出原因は、どちらを先に対策すべきですか?
- 再発防止の効果が大きいのは発生原因への対策です。ただ、設備や条件の変更を伴うと時間がかかるため、先に手を打てる流出側から着手し、発生側を並行で進める形が現実的です。両方を並べて、打つ順番を決めてください。
- Q. 原因が特定できないときはどうすればよいですか?
- 原因不明のまま閉じてもかまいませんが、暫定対策をいつまで続けるか、どうなったら見直すかを必ず添えてください。解除条件が無いと、暫定対策が何年も残ります。
- Q. 原因分析にはどのくらい時間をかけるべきですか?
- 一律の目安はありません。客先へ出たもの、安全に関わるもの、繰り返しているものに時間を割り当て、単発で影響の小さいものは記録だけ残す、という配分がよく使われています。
- Q. 作業者へのヒアリングで本当のことを話してもらうには?
- 原因を確かめる場だと伝わると、答えが「悪くない理由」に寄ります。その日の作業を時系列で再現してもらう聞き方にして、「いつもと違ったこと」を1つ挙げてもらうと、事実が出てきやすくなります。
- Q. 原因分析の記録はどのくらい保存すべきですか?
- 一般の社内業務について、保存期間を定めた法令はありません。実務では、類似不具合を探すときに使うため、少なくとも数年分は検索できる形で残している現場が多くあります。業種によって個別の規制がある場合は、所管の行政庁にご確認ください。
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