原因分析の進め方|証拠を集める順番と、発生・流出の2軸で掘る手順
不具合の原因分析というと、会議室に集まって「なぜ」を繰り返す場面が思い浮かびます。ただ、その場で出てくるのは、集まった人が知っていることの範囲にとどまります。原因分析の精度は、掘る前にどれだけ証拠を持ち込めたかで決まります。
一般には、原因分析は発生原因(なぜ作り込んだか)と流出原因(なぜ止められなかったか)の2軸に分けて進めます。この記事では、原因分析の進め方を、証拠を集める順番から2軸の切り分け、そしてどこで打ち切るかまでまとめます。
この記事の内容(11項目)
- 原因分析の進め方は、2軸に分けるところから
- 「気づけたはずの場所」を先に洗う
- 原因分析で証拠を集める順番
- 現物は「触る前に撮る」
- 話を聞くのは、責める場にしない
- 推定原因と確定原因を分けて書く
- 確かめる方法は3つしかない
- 過去に同じことが起きていないかを、先に見る
- 「見つからなかった」も記録する
- 再発だった場合は、掘る場所が変わる
- 原因分析を打ち切る判断
- 分からないまま閉じない
- 時間をかけるべき案件を選ぶ
- 原因分析でよく出る5つの詰まり方
- その1:会議室だけで完結させる
- その2:最初に出た仮説に全員が乗る
- その3:現場に聞かずに手順書だけで判断する
- その4:流出側を「検査の強化」で終わらせる
- その5:分析の結果が担当者の頭にしか残らない
- 原因分析の結果を、対策につなぐ
- 掘った過程は捨てない
- 他の工程にも同じ原因が無いかを見る
- 原因分析の進め方にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 原因分析の進め方に出てくる用語
- 原因分析の進め方と一緒に押さえておきたいこと
- 原因分析の手法は、目的で使い分ける
- 4Mで候補を出すコツは「変わったもの」から
- ISO 9001の是正処置で求められていること
- よくある質問
原因分析の進め方は、2軸に分けるところから
1本の線で原因を追うと、答えはたいてい製造側に着きます。最初に2本に分けてしまうと、検査や確認の側の穴も同時に見えます。
発生原因
なぜ、その状態のものができたか。設備、条件、材料、手順、治具。
対策は作らない形を作ること。
流出原因
なぜ、そのまま先へ流れたか。検査項目、頻度、判定基準、記録。
対策は止まる形を作ること。
一般に、再発防止の効果が大きいのは発生側への対策です。ただ、発生側の対策は設備や条件の変更を伴うことが多く、時間がかかります。流出側は先に手を打てることが多いので、両方を並べて、打つ順番を決めるのが現実的です。
「気づけたはずの場所」を先に洗う
流出原因を掘るときは、不具合が通過した工程を順に並べて、それぞれで「ここで気づけたか」を見ます。気づけたはずなのに気づかなかった工程が、いちばん効く場所です。
原因分析で証拠を集める順番
原因分析の進め方でつまずくのは、証拠が無いまま議論を始めたときです。集める順番には理由があります。後戻りできないものから先に押さえます。
| 順番 | 集めるもの | なぜこの順か |
|---|---|---|
| 1 | 現物 | 手直し・洗浄・廃棄で消える。いちばん失いやすい |
| 2 | その時の記録(作業日報、検査記録、設備の履歴) | 上書きされたり、月次でまとめられたりする |
| 3 | 作業した人の話 | 時間が経つほど記憶が整理されて、実際と変わる |
| 4 | 良品との比較 | 現物が残っていれば、あとからでも取れる |
| 5 | 再現試験 | 仮説が立ってからでないと、条件が決められない |
現物は「触る前に撮る」
現物調査は、測る前に写真を撮るところから始めます。分解したり洗ったりすると、そこにあった痕跡が消えます。良品と並べて撮っておくと、あとで説明するときに言葉が要りません。測り方と残し方は現物調査のやり方にまとめました。
話を聞くのは、責める場にしない
作業した人に話を聞くとき、原因を確かめる場だと伝わると、答えが「悪くない理由」に寄ります。その日の作業を時系列で再現してもらうという聞き方にすると、事実が出てきます。「いつもと違ったこと」を1つ挙げてもらうだけでも、手がかりになります。
推定原因と確定原因を分けて書く
原因分析の記録でいちばん多い問題は、推定と確定が同じ欄に並ぶことです。あとで読むと、どこまで確かめたのかが分かりません。
| 段階 | 書き方 | 次にやること |
|---|---|---|
| 推定 | 「〜の可能性がある」。根拠を1行添える | 確かめる方法と担当を決める |
| 検証中 | 誰が、いつまでに、どう確かめるか | 期限を置く |
| 確定 | 「〜であることを、〜で確認した」 | 対策の検討へ進む |
| 否定 | 「〜ではないことを、〜で確認した」 | 消した候補も残す |
ポイントはここです。否定した候補も消さずに残します。「これは違った」という記録が無いと、次に似た不具合が出たときに、また同じ候補から調べ始めます。
確かめる方法は3つしかない
推定を確定に変える方法は、実務では次の3つに絞られます。どれも使えないなら、その推定は確定にできません。
- 現物で確かめる|測る、分解する、良品と比べる
- 記録で確かめる|同じ条件だった日を抜き出して、発生の有無を突き合わせる
- 再現させる|条件を1つずつ変えて、同じ現象が出るか試す
再現させるのは手間がかかりますが、いちばん確かです。条件の変え方と記録の残し方は再現試験の進め方で扱っています。
過去に同じことが起きていないかを、先に見る
原因分析を始める前に、5分だけ使って過去を見ておくと、そのあとが速くなります。同じ現象が過去に出ていれば、そのときの分析結果がそのまま使えます。
| 探す軸 | 見つかったときの意味 |
|---|---|
| 同じ現象 | 前回の対策が効いていない。再発案件として扱う |
| 同じ工程 | その工程に共通の弱点がある可能性 |
| 同じ設備 | 設備の劣化や設定の問題を先に疑える |
| 同じ材料・仕入先 | ロット単位の問題として切り分けられる |
| 同じ時期(月末、繁忙期) | 要員や生産量など、条件側の問題 |
「見つからなかった」も記録する
探した結果、何も出てこなかったのなら、それも書いておきます。探したかどうかが分からないと、次の担当者がまた同じ検索をします。どの軸で、いつからいつまでを見たかを1行残しておけば足ります。
再発だった場合は、掘る場所が変わる
過去に同じ現象があり、対策も打っていたのなら、掘るべきは現象の原因ではなく前回の対策が効かなかった理由です。対策が実施されていなかったのか、実施されたが不十分だったのか、途中でやめたのかで、打つ手が変わります。この切り分けは対策後に再発したときにまとめています。
原因分析を打ち切る判断
原因分析は、時間をかければ精度が上がりますが、その間も現場は動いています。打ち切る条件を先に決めておくと、分析が長引いて対策が遅れる状態を避けられます。
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 発生・流出の両方に確定原因がある | 分析を終える。対策の検討へ |
| 発生側が確定していない | 流出側の対策を先に打ち、発生側の分析を続ける |
| どちらも推定のまま2週間が過ぎた | いったん暫定対策を続ける判断をして、期限を切り直す |
| 原因が自社の外にある | 相手に確認を依頼しつつ、影響が出ない形を自社で用意する |
分からないまま閉じない
原因が確定しないまま案件を閉じると、記録には「原因不明」だけが残ります。それ自体は正直な記録ですが、暫定対策をいつまで続けるかが決まっていないと、暫定が何年も居座ります。原因不明で閉じるときは、暫定対策の解除条件と見直しの日付を必ず添えます。
時間をかけるべき案件を選ぶ
すべての不具合に同じ時間はかけられません。一般には、客先へ出たもの、安全に関わるもの、繰り返しているものに時間を割り当て、単発で影響の小さいものは記録だけ残して月次の集計で傾向を見る、という配分が使われています。
原因分析でよく出る5つの詰まり方
その1:会議室だけで完結させる
集まった人の記憶だけで掘ると、出てくるのは印象です。現物と記録を机の上に置いてから始めるだけで、議論の質が変わります。持ち込むものが無いなら、その日は事実集めの分担を決めるだけにして解散するほうが早く着きます。
その2:最初に出た仮説に全員が乗る
最初に出た説が有力に見えると、そのあとの議論はその説を補強する方向に進みます。候補を3つ出してから検証に入ると、この偏りが減ります。1つしか出ないときは、まだ事実が足りていないサインです。
その3:現場に聞かずに手順書だけで判断する
手順書どおりに作業されている前提で掘ると、答えが出ません。実際の作業は、手順書に書かれていない工夫や省略を含んでいるのが普通です。手順書と実際の動きの差そのものが原因になっていることがよくあります。
その4:流出側を「検査の強化」で終わらせる
流出原因への対策が、いつも「検査項目を増やす」になる現場があります。増やし続けると検査の時間が伸び、いずれ守られなくなります。手前の工程で止まる形にできないかを先に考え、それが無理なときに検査を足す、という順番にします。
その5:分析の結果が担当者の頭にしか残らない
掘った過程がその人の記憶にしか無いと、異動や退職で消えます。シートに残す手間は10分程度です。次に似た不具合が出たとき、その10分が半日を節約します。
考えられる原因を抜けなく並べるには、特性要因図に描き出す方法があります(特性要因図)。
原因分析の結果を、対策につなぐ
原因が確定したら、対策を考える段階に移ります。ここで気をつけたいのは、原因1つに対策1つを機械的に対応させないことです。
| 確定した原因 | 対策の候補(複数出す) |
|---|---|
| 位置決めの治具が無く、目視で合わせていた | 簡易治具を作る(費用小・効果大・数日) |
| 位置の見本を作業台に掲示する(費用ほぼ無し・効果中・当日) | |
| 自動貼付機を導入する(費用大・効果大・数か月) |
候補を3つ出して、費用・効果・実施までの時間の3軸で比べます。1案しか出さないと、その案が通るかどうかの話になり、選んだ理由が残りません。比べ方は対策案の比較で扱っています。
掘った過程は捨てない
原因分析の過程は、報告書には結論しか載りません。掘った過程そのものは別に残しておくと、対策が効かなかったときに「どこで判断を間違えたか」を追えます。なぜなぜ分析のやり方で扱ったシートが、その置き場所になります。
他の工程にも同じ原因が無いかを見る
原因が確定した時点で、同じ原因を持つ場所が他にないかを見にいきます。対策を打ってからでは、担当者の関心が薄れて手が付きません。原因が分かった日が、水平展開を決めるいちばん良いタイミングです。
原因分析の進め方にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
原因分析の進め方は、法律で決められているものではありません。ただ、品質の規格と行政の対応の両方で、原因を明らかにしたうえで、対策の実施と効果まで追う形が求められる流れが続いています。2023年以降の確かめられた出来事を日付順に並べます。
| 日付 | 出来事 | 原因分析との関係 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2024年1月16日 | 国土交通省が、型式指定申請で不正のあった自動車メーカーに道路運送車両法に基づく是正命令を出した | 1か月以内に再発防止策を報告し、その後は四半期ごとに実施状況を報告するよう求めた。原因分析の結論を、対策の実施状況で確かめ続ける形 | 国土交通省 報道発表 |
| 2026年9月16日 | ISO 9001:2026(品質マネジメントシステムの要求事項)が発行。2015年版の改訂 | 品質文化とリーダーシップ、リスクと機会の明確化が改訂の柱とされ、用語と要求事項の意図を説明する附属書Aが新しく加わった | ISO/TC 176 |
| 2028年3月31日以降 | 新規の認定認証はISO 9001:2026でのみ発行される | これから認証を取る組織は、2026年版の要求事項で不適合と是正処置の仕組みを整えることになる | ISO/TC 176 |
| 2029年9月30日 | ISO 9001:2015で認証を受けている組織の移行期限 | 定期審査・更新審査などの機会に移行する | ISO/TC 176 |
ポイントはここです。どちらの動きも、「原因が分かった」で終わらず、対策が実施され効いたかを後から確かめられることを求めています。原因分析のシートに、確定した日と、対策の効果を確かめる日を並べて書いておくと、この流れと同じ形になります。
出典:国土交通省 ダイハツ工業の不正事案に関する国土交通省の対応について(2024年1月16日)/ISO/TC 176 ISO 9001:2026 has been released!
確認日は2026年10月3日です。ISO 9001の移行の扱いは、認証を受けている審査登録機関(認証機関)に確認してください。
原因分析の進め方に出てくる用語
原因分析の進め方の周りには、規格で定義されている言葉と、現場で使われている言葉が混ざっています。分けて並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 不適合 | 要求事項を満たしていないこと。不具合・不良と呼ばれるものの多くがこれにあたる | JIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.6.9 |
| 修正 | 検出された不適合を除去するための処置。手直しや選別がこれにあたる | JIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.12.3 |
| 是正処置 | 不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置。原因分析の結論を受けて打つ | JIS Q 9000:2015(ISO 9000:2015)3.12.2 |
| 発生原因 | その状態のものができた理由。設備・条件・材料・手順など | 法令・JIS上の定義はない(現場の用語) |
| 流出原因 | できたものが先へ流れた理由。検査の項目・頻度・判定基準など | 法令・JIS上の定義はない(現場の用語) |
| 真因 | それを取り除けば同じ不具合が起きなくなる原因。根本原因とも呼ばれる | 法令・JIS上の定義はない |
| 4M | 人(Man)・機械(Machine)・材料(Material)・方法(Method)。原因の候補を漏れなく出すための切り口 | 法令・JIS上の定義はない |
| 特性要因図 | 結果と、それに影響する要因を魚の骨の形で整理する図。フィッシュボーンとも呼ばれる | 法令上の定義はない(QC七つ道具の1つ) |
規格の言葉で言い直すと、原因分析は是正処置の前半にあたります。言葉の使い分けは是正処置とはでも整理しています。
原因分析の進め方と一緒に押さえておきたいこと
原因分析の進め方が分かったら、次の3つを押さえておくと、手法選びと報告書の書き方で迷いにくくなります。
原因分析の手法は、目的で使い分ける
原因分析の手法は数多くありますが、現場でよく使われるのは次の3つです。どれが正しいということはなく、今どの段階にいるかで選ぶのが基本の考え方です。
| 手法 | 向いている場面 | できあがるもの |
|---|---|---|
| 特性要因図 | 候補をまんべんなく出したいとき。4Mの枝で漏れを見る | 原因の候補の一覧(確かめる前のもの) |
| なぜなぜ分析 | 確かめられた事実から、1本の筋を深く掘るとき | 現象から真因までの1本の筋 |
| FTA | いくつかの条件が重なって起きる不具合を、図で分けたいとき | どの条件の組み合わせで起きるかの図 |
なぜなぜ分析の手順はなぜなぜ分析のやり方で扱っています。
4Mで候補を出すコツは「変わったもの」から
4Mの枝を全部埋めようとすると、候補が増えすぎて検証が追いつきません。発生した日の前後で、人・機械・材料・方法のうち何が変わったかを先に並べると、候補の数がしぼれます。変わったものが見つからないときは、変わっていないはずのものが実は変わっていた、という形を疑います。
ISO 9001の是正処置で求められていること
ISO 9001:2015の10.2では、不適合が起きたときに、その原因を明確にすること、類似の不適合の有無やそれが起きる可能性を明確にすること、とった是正処置の有効性をレビューすることが求められています。また、不適合の内容と処置、是正処置の結果は、文書化した情報として保持することとされています。この記事の「過去に同じことが起きていないかを先に見る」と「否定した候補も残す」は、そのまま10.2の記録になります。類似の不具合の探し方は類似不具合の検索方法にまとめています。
よくある質問
- Q. 発生原因と流出原因は、どちらを先に対策すべきですか?
- 再発防止の効果が大きいのは発生原因への対策です。ただ、設備や条件の変更を伴うと時間がかかるため、先に手を打てる流出側から着手し、発生側を並行で進める形が現実的です。両方を並べて、打つ順番を決めてください。
- Q. 原因が特定できないときはどうすればよいですか?
- 原因不明のまま閉じてもかまいませんが、暫定対策をいつまで続けるか、どうなったら見直すかを必ず添えてください。解除条件が無いと、暫定対策が何年も残ります。
- Q. 原因分析にはどのくらい時間をかけるべきですか?
- 一律の目安はありません。客先へ出たもの、安全に関わるもの、繰り返しているものに時間を割り当て、単発で影響の小さいものは記録だけ残す、という配分がよく使われています。
- Q. 作業者へのヒアリングで本当のことを話してもらうには?
- 原因を確かめる場だと伝わると、答えが「悪くない理由」に寄ります。その日の作業を時系列で再現してもらう聞き方にして、「いつもと違ったこと」を1つ挙げてもらうと、事実が出てきやすくなります。
- Q. 原因分析の記録はどのくらい保存すべきですか?
- 一般の社内業務について、原因分析の記録の保存期間を定めた法令はありません。ISO 9001の認証を受けている場合は、不適合と是正処置の結果を文書化した情報として保持することが求められています(ISO 9001:2015 10.2.2)。実務では、類似不具合を探すときに使うため、少なくとも数年分は検索できる形で残している現場が多くあります。業種によって個別の規制がある場合は、所管の行政庁にご確認ください。
- Q. 原因分析の手法はどれを使えばよいですか?
- 段階で選びます。候補をまんべんなく出したいときは特性要因図、確かめた事実から1本の筋を深く掘るときはなぜなぜ分析、いくつかの条件が重なって起きる不具合を分けたいときはFTAが向いています。どの手法でも、現物と記録を先に集めてから使うと精度が上がります。
この記事で使う無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-10時点のものです。