月次の不具合集計|Excelで3つの軸に分けて数える方法と前月比の読み方
不具合の記録が1件1行でたまっていても、それだけでは次の手が決まりません。1件ずつ対応していると、同じ原因が別の形で出続けていることに気づけないためです。
一般には、月に1回まとめて数え、分類ごとの多さを見て、どこに手を入れるかを決めます。この記事では、月次の不具合集計について、分類の切り方、前月との比べ方、読み違えやすい数字の扱いをまとめます。
この記事の内容(11項目)
- 月次の不具合集計は、3つの軸で数える
- 発見場所の軸がいちばん見落とされる
- 製品や品番でも数えたくなるが、後回しでよい
- 分類の切り方
- 「その他」が2割を超えたら、分類を見直す
- 起票する人が迷わない粒度にする
- 分類は検索にもそのまま使える
- 前月と比べるときの注意
- 件数と率の両方を出す
- 1か月の増減では判断しない
- ゼロの月も記録する
- 集計から次の手を決める
- 個別対応をやめる合図を見つける
- 決めた1つを翌月に確認する
- 件数の多い分類から順に手を付ける
- 苦情の集計と分けて持つ
- 苦情は件数が少ないので、期間を長く取る
- 両方を突き合わせる場面はある
- 集計にかける時間を短くする
- Excelでは、1件1行の表から数える
- 様式を固定する
- グラフは1枚か2枚まで
- 集計は当月の初旬に済ませる
- 集計を報告につなぐ
- 品質目標と同じ数字を使う
- 読む相手によって、載せる粒度を変える
- 年度のまとめは、月次の積み上げでよい
- 不具合の集計にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 不具合の集計に出てくる用語
- 不具合の集計と一緒に押さえておきたいこと
- 集計は ISO 9001 の「分析及び評価」の記録になる
- マネジメントレビューには傾向で渡す
- 重大な製品事故は、月次の集計を待たない
- よくある質問
月次の不具合集計は、3つの軸で数える
集計の軸を増やすと表が読めなくなります。3つに絞ると、毎月同じ形で比べられます。
| 軸 | 数えると分かること | 次の手 |
|---|---|---|
| 現象(何が起きたか) | 同じ現象が繰り返しているか | 多い現象を1つ選んで是正処置に回す |
| 工程(どこで発生したか) | 特定の工程に偏っていないか | その工程のリスク洗い出しをする |
| 発見場所(どこで見つけたか) | 客先まで流れているか、社内で止まっているか | 流出が多ければ検査の設計を見直す |
発見場所の軸がいちばん見落とされる
現象と工程は数えていても、どこで見つかったかを数えていない現場が多くあります。工程内で止まっているのか、出荷検査で止まっているのか、客先で見つかっているのかで、手を入れる場所がまったく違います。
製品や品番でも数えたくなるが、後回しでよい
製品別の集計は、件数が多い現場では有効ですが、軸が増えると表が読まれなくなります。まず3軸で始めて、必要になったら足すほうが続きます。
分類の切り方
集計の質は、日々の起票時に付ける分類で決まります。集計のときに分類を付け直すと、毎月の作業が重くなります。
| 分類 | 数の目安 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 現象 | 10〜20種類 | 言葉を統一する。一覧から選ぶ形にする |
| 工程 | 工程表と同じ | 「製造部」のような部署単位にしない |
| 発見場所 | 5種類程度 | 工程内/出荷前/客先/仕入先/その他 |
「その他」が2割を超えたら、分類を見直す
どの分類にも当てはまらない件が増えると、集計から傾向が読めなくなります。その他が2割を超えたら、中身を見て新しい分類を足す合図です。逆に、1年間ゼロ件の分類は統合してかまいません。
起票する人が迷わない粒度にする
分類が30も40もあると、選ぶのに時間がかかり、適当に選ばれます。10秒で選べる数が現実的な上限です。細かく見たいときは、集計のときに現物の記録を開けば足ります。
分類は検索にもそのまま使える
集計のために付けた分類は、過去に似た不具合が無かったかを探すときにも使えます。2つの目的を1つの分類でまかなえるので、付ける価値があります。探し方は類似不具合の調べ方で扱っています。
前月と比べるときの注意
件数が増えた、減ったで一喜一憂すると、判断を誤ります。母数と、数え方の変化を先に確認します。
| 件数が動いた理由 | 確かめ方 |
|---|---|
| 生産量が変わった | 生産数も並べて、率で見る |
| 起票の基準が変わった | 軽微なものを起票するようになっていないか |
| 検査を強化した | 工程内での検出が増えるのは正常。客先流出を見る |
| 特定の1件が大量発生 | 件数ではなく案件数で数え直す |
| 営業日数が違う | 月によって20日と23日では差が出る |
件数と率の両方を出す
件数だけだと生産量の影響を受け、率だけだと絶対量が見えません。両方を並べておくと、読む人が判断できます。生産数の列を1つ足すだけで済みます。
1か月の増減では判断しない
不具合の件数は月ごとにばらつきます。3か月の移動平均か、前年同月と比べるほうが傾向が見えます。1か月だけで「増えた」と騒ぐと、対策が場当たりになります。
ゼロの月も記録する
件数がゼロだった分類も、行として残します。ゼロが続いていることが分かるので、対策が効いている証拠になります。行を消してしまうと、以前あったことを忘れます。
集計から次の手を決める
集計は、数えて終わりでは意味がありません。毎月1つでよいので、次にやることを決めます。
| 集計で見えた状態 | 次の手 |
|---|---|
| 1つの現象が突出して多い | その現象を1件の案件として、原因分析から回す |
| 1つの工程に集中している | その工程のリスク洗い出しを行う |
| 客先での発見が増えている | 検査の設計を見直す。どこで止まるはずだったかを見る |
| 特定の仕入先に偏っている | 受入の基準と、品質連絡の内容を見直す |
| 特定の時期・直に偏っている | 要員や環境など、条件側を疑う |
個別対応をやめる合図を見つける
同じ現象が毎月3件、4件と出ているなら、1件ずつ是正処置を回しても追いつきません。件数がまとまっている分類は、工程そのものを見直す対象です。集計をする最大の目的はここにあります。
決めた1つを翌月に確認する
毎月「次にやること」を決めても、翌月に確認しなければ流れます。集計表の欄外に、先月決めたことの結果を1行書くだけで、続きます。
件数の多い分類から順に手を付ける
全部に手を打とうとすると止まります。上位1つか2つに絞ると、その月のうちに動きます。上位が入れ替わっていけば、集計は機能しています。
苦情の集計と分けて持つ
社内で見つけた不具合と、客先からの苦情は、性格も読み方も違います。1つの表に混ぜると、どちらの傾向も読めなくなります。
不具合の集計
社内で見つけたものが中心。件数は多い。
読むのは工程と現象の偏り。
月次で読む。
苦情の集計
客先から言われたもの。件数は少ない。
読むのは期間の傾向と重さ。
四半期や年度で読む。
苦情は件数が少ないので、期間を長く取る
月に1件か2件の苦情を月次で比べても、偶然の差しか出ません。四半期や半期で並べるほうが傾向が見えます。読み方は苦情件数の分析で扱っています。
両方を突き合わせる場面はある
社内の不具合が減っているのに苦情が増えているなら、検査で止まらないものが出ているということです。年に1回、2つの表を並べて見ると、こうしたずれが分かります。
集計にかける時間を短くする
集計に半日かかると、続きません。目標は1時間以内です。そのために必要なのは、集計の技術ではなく日々の起票の形です。
| 時間がかかる原因 | 直し方 |
|---|---|
| 分類を集計時に付けている | 起票時に選ぶ形にする |
| 記録が複数の場所に散っている | 1件1行の一覧に集める |
| 手書きの紙から転記している | 入力する場所を1か所にする |
| 毎月グラフを作り直している | 集計の様式を固定して、数字だけ入れ替える |
| 読む人ごとに違う表を作っている | 1つの表にして、読む人が必要な行を見る |
Excelでは、1件1行の表から数える
Excelで不具合を集計するときの一般的な形は、1件1行の記録表(発生日・現象・工程・発見場所・数量)を作り、そこから月ごとに数える形です。数え方は2通りあります。
| やり方 | 向いている場面 | 注意すること |
|---|---|---|
| ピボットテーブル | 軸を入れ替えながら眺めたい | 元の表に行を足したら「更新」を押す。押し忘れると先月の数字のまま |
| COUNTIFS 関数 | 毎月同じ形の表に数字を出したい | 月の条件は「発生日がその月の1日以上、翌月1日未満」と2つで書く |
ポイントは、分類の列を入力規則(リストから選ぶ形)にしておくことです。「キズ」「傷」「きず」が混ざると、同じ現象が3行に割れて数えられます。
様式を固定する
毎月同じ形の表にすると、作る時間も読む時間も短くなります。去年の同じ月と並べて見られるという利点もあります。見た目を毎回変えると、比べられません。
グラフは1枚か2枚まで
グラフを並べると作るのに時間がかかり、読む側も焦点が定まりません。件数の推移と、分類別の内訳の2枚で足ります。詳しく見たい人は数字の表を見ます。
集計は当月の初旬に済ませる
月が変わって時間が経つほど、記録の記憶が薄れて確認に手間がかかります。翌月の第1週に集計すると決めておくと、担当者が予定を組めます。
集計を報告につなぐ
月次の集計は、そのまま四半期や年度の報告の材料になります。毎月同じ形で残しておけば、年度末にまとめ直す作業が要りません。
| 期間 | 使う場面 | 足すもの |
|---|---|---|
| 月次 | 現場の会議。次の1手を決める | なし。集計そのまま |
| 四半期 | 部門の報告。傾向を見る | 3か月の推移。上位分類の変化 |
| 年度 | 経営への報告。品質目標との照合 | 目標に対する達成度、改善の効果 |
品質目標と同じ数字を使う
期の初めに立てた品質目標が「不良率0.5パーセント以下」なら、月次の集計でその数字を出しておきます。目標と集計で違う数え方をしていると、期末に合わなくなります。目標の進捗の見方は品質目標の進捗管理にまとめました。
読む相手によって、載せる粒度を変える
同じ集計でも、現場の会議では現象別の内訳が要り、経営への報告では件数の推移と金額のほうが伝わります。表は1つのまま、読む場面で見る行を変えると、作り直しが要りません。報告のたびに別の表を起こしていると、数字がずれます。
年度のまとめは、月次の積み上げでよい
年度末に1年分を数え直すと、数日かかります。月次の表を12枚並べるだけで年度の報告になる形にしておくと、その時間が要りません。まとめ方は改善実績の報告で扱っています。
不具合の集計にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
不具合の集計そのものを決めた法令はありません。ISO 9001 を取得している会社では、集計は 9.1.3「分析及び評価」と 9.3「マネジメントレビュー」の材料になります。集計の作り方に関係する動きを日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 不具合の集計への影響 |
|---|---|---|
| 2024年2月23日 | ISO 9001:2015 の追補1(気候変動への対応)が発行。4.1・4.2 に文が加わった | 9.1.3 と 9.3 は変わっていない |
| 2026年1月1日 | 下請法が取適法に変わって施行。外注先から受け取った品の返品には、受け取りからの期間の目安がある | 発見場所が「仕入先・外注先」の不具合は、受け取った日と見つけた日も記録に残したい |
| 2026年9月16日 | ISO 9001:2026 が発行。移行期限は2029年9月30日とされている | 分析・評価とマネジメントレビューに当たる箇条の番号と文言は、2026年版の本文で確かめる |
不具合の集計の形は、規格の版が変わっても大きく崩れるものではありません。移行のときは、集計表や品質会議の資料に書いた箇条番号を一緒に直すと、審査で説明しやすくなります。
出典:ISO 9001:2015/Amd 1:2024(ISO)、ISO 9001:2026 の発行(ISO)、中小受託取引適正化法テキスト(公正取引委員会・中小企業庁)
確認日は2026年10月3日です。規格の移行の時期は認証を受けている認証機関に、外注先との取引の扱いは公正取引委員会または中小企業庁の相談窓口にご確認ください。
不具合の集計に出てくる用語
不具合の集計で使う言葉は、社内で意味がずれやすいものが多くあります。規格で定義されている言葉と、現場の言葉を分けて並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 要求事項 | 明示されている、通常暗黙のうちに了解されている、または義務として要求されている、ニーズや期待 | JIS Q 9000:2015 3.6.4 |
| 不適合 | 要求事項を満たしていないこと | JIS Q 9000:2015 3.6.9 |
| 欠陥 | 意図された用途や規定された用途に関係する不適合 | JIS Q 9000:2015 3.6.10 |
| 是正処置 | 不適合の原因を取り除き、再発を防ぐための処置 | JIS Q 9000:2015 3.12.2 |
| 不具合 | 社内で記録の対象にする「おかしなこと」全般 | 規格上・法令上の定義はない。範囲は社内で決める |
| 不良率 | 不良の数を、生産数や検査数で割った割合 | 法令上の定義はない。分母を何にするかを決めて書いておく |
| ppm | 100万個あたりの個数。不良率が小さいときに使う | 単位。100ppm は 0.01パーセント |
| 流出不良 | 社内の検査をすり抜けて客先で見つかった不良 | 法令上の定義はない。現場で使われる言葉 |
| 移動平均 | 直近の数か月の平均を、月ごとにずらして出した値 | 統計の一般的な用語 |
不具合の集計でポイントになるのは、「不具合」と「不適合」を同じ意味で使うかどうかを決めておくことです。軽微な気づきまで不具合として起票する現場では、不具合の件数のうち、要求事項を満たしていなかったもの(不適合)だけを別に数えると、是正処置に回す件数と合います。
不具合の集計と一緒に押さえておきたいこと
不具合の集計の解説は、グラフの作り方で終わることが多くあります。規格と法令の側から、上位の解説で触れられることが少ないものを3つ挙げます。
集計は ISO 9001 の「分析及び評価」の記録になる
ISO 9001:2015 の 9.1.3 では、監視や測定から得たデータを分析・評価し、その結果を製品の適合、品質マネジメントシステムの有効性、外部提供者のパフォーマンス、改善の必要性などの評価に使うことが求められています。月次の集計表と、その月に決めた「次の1手」が残っていれば、分析して評価したことの記録としてそのまま使えます。
マネジメントレビューには傾向で渡す
9.3.2 では、マネジメントレビューで考慮することとして、不適合と是正処置、監視と測定の結果、外部提供者のパフォーマンスなどの傾向が挙げられています。1か月分の件数ではなく、12か月の推移と分類別の上位を渡すと、この「傾向」に当たります。是正処置が効いたかどうかの件数は是正処置の有効性確認の一覧から拾えます。
重大な製品事故は、月次の集計を待たない
消費生活用製品(一般の消費者が使う製品)の製造・輸入をしている会社は、重大製品事故が起きたことを知った日から10日以内に、消費者庁長官へ報告することが定められています(消費生活用製品安全法第35条、同法の規定に基づく重大事故報告等に関する内閣府令第3条)。客先や消費者から入った情報が重大製品事故に当たるかどうかの判断は、集計とは別の流れで、その日のうちに回す形にしておきます。何が重大製品事故に当たるかは、消費者庁の資料でご確認ください(条文は消費生活用製品安全法(e-Gov法令検索))。
よくある質問
- Q. 集計は誰が担当すべきですか?
- 数える作業は誰でもかまいませんが、読んで次の手を決める場には現場の責任者を入れてください。品質部門だけで読むと、報告のための集計になり、現場の動きにつながりません。数える人と読む人は別でかまいません。
- Q. 何か月分あれば傾向が読めますか?
- 3か月あれば移動平均が取れ、12か月あれば季節の影響が見えます。始めたばかりの現場では、まず3か月ためてから読み始めるのが現実的です。それまでは数字を並べるだけで、判断はしないほうが安全です。
- Q. 不具合の集計はどのくらいの頻度で行うべきですか?
- 月に1回が一般的です。週次だと件数が少なすぎて傾向が読めず、四半期だと手を打つのが遅くなります。翌月の第1週に済ませると決めておくと、記録の記憶が新しいうちに確認できます。
- Q. 不具合の集計はExcelでどう作ればよいですか?
- 1件1行の記録表(発生日・現象・工程・発見場所・数量)を作り、そこからピボットテーブルかCOUNTIFS関数で月ごとに数えるのが一般的です。分類の列はリストから選ぶ形にして、表記の揺れで同じ現象が別の行に割れないようにします。
- Q. 分類はいくつくらいがよいですか?
- 現象は10〜20種類、発見場所は5種類程度が扱いやすい粒度です。30も40もあると、選ぶのに時間がかかり適当に選ばれます。「その他」が2割を超えたら分類を足す合図、1年ゼロ件の分類は統合してかまいません。
- Q. 件数が前月より増えました。悪化していますか?
- 生産量、起票の基準、検査の強化、特定案件の大量発生、営業日数のどれかが変わっていないか先に確認してください。とくに検査を強化した直後は、工程内での検出が増えるのが正常です。
- Q. 集計に時間がかかりすぎます。
- 分類を集計時ではなく起票時に選ぶ形にしてください。記録が複数の場所に散っているなら、1件1行の一覧に集めます。様式を固定して数字だけ入れ替える形にすると、1時間以内で終わります。
- Q. 社内の不具合と客先からの苦情は同じ表で集計してよいですか?
- 分けてください。件数の桁が違い、読む期間も違います。不具合は月次で工程と現象の偏りを見るもの、苦情は四半期や年度で傾向と重さを見るものです。混ぜるとどちらも読めなくなります。
- Q. 集計した結果を、どう次につなげればよいですか?
- 毎月1つでよいので、次にやることを決めてください。件数が突出している現象を1件の案件として原因分析に回す、集中している工程のリスク洗い出しをする、といった形です。翌月に結果を1行書くと続きます。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点のものです。