月次の不具合集計|件数を分類して読む
不具合の記録が1件1行でたまっていても、それだけでは次の手が決まりません。1件ずつ対応していると、同じ原因が別の形で出続けていることに気づけないためです。
一般には、月に1回まとめて数え、分類ごとの多さを見て、どこに手を入れるかを決めます。この記事では、月次の不具合集計について、分類の切り方、前月との比べ方、読み違えやすい数字の扱いをまとめます。
この記事の内容(8項目)
- 月次の不具合集計は、3つの軸で数える
- 発見場所の軸がいちばん見落とされる
- 製品や品番でも数えたくなるが、後回しでよい
- 分類の切り方
- 「その他」が2割を超えたら、分類を見直す
- 起票する人が迷わない粒度にする
- 分類は検索にもそのまま使える
- 前月と比べるときの注意
- 件数と率の両方を出す
- 1か月の増減では判断しない
- ゼロの月も記録する
- 集計から次の手を決める
- 個別対応をやめる合図を見つける
- 決めた1つを翌月に確認する
- 件数の多い分類から順に手を付ける
- 苦情の集計と分けて持つ
- 苦情は件数が少ないので、期間を長く取る
- 両方を突き合わせる場面はある
- 集計にかける時間を短くする
- 様式を固定する
- グラフは1枚か2枚まで
- 集計は当月の初旬に済ませる
- 集計を報告につなぐ
- 品質目標と同じ数字を使う
- 読む相手によって、載せる粒度を変える
- 年度のまとめは、月次の積み上げでよい
- よくある質問
月次の不具合集計は、3つの軸で数える
集計の軸を増やすと表が読めなくなります。3つに絞ると、毎月同じ形で比べられます。
| 軸 | 数えると分かること | 次の手 |
|---|---|---|
| 現象(何が起きたか) | 同じ現象が繰り返しているか | 多い現象を1つ選んで是正処置に回す |
| 工程(どこで発生したか) | 特定の工程に偏っていないか | その工程のリスク洗い出しをする |
| 発見場所(どこで見つけたか) | 客先まで流れているか、社内で止まっているか | 流出が多ければ検査の設計を見直す |
発見場所の軸がいちばん見落とされる
現象と工程は数えていても、どこで見つかったかを数えていない現場が多くあります。工程内で止まっているのか、出荷検査で止まっているのか、客先で見つかっているのかで、手を入れる場所がまったく違います。
製品や品番でも数えたくなるが、後回しでよい
製品別の集計は、件数が多い現場では有効ですが、軸が増えると表が読まれなくなります。まず3軸で始めて、必要になったら足すほうが続きます。
分類の切り方
集計の質は、日々の起票時に付ける分類で決まります。集計のときに分類を付け直すと、毎月の作業が重くなります。
| 分類 | 数の目安 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 現象 | 10〜20種類 | 言葉を統一する。一覧から選ぶ形にする |
| 工程 | 工程表と同じ | 「製造部」のような部署単位にしない |
| 発見場所 | 5種類程度 | 工程内/出荷前/客先/仕入先/その他 |
「その他」が2割を超えたら、分類を見直す
どの分類にも当てはまらない件が増えると、集計から傾向が読めなくなります。その他が2割を超えたら、中身を見て新しい分類を足す合図です。逆に、1年間ゼロ件の分類は統合してかまいません。
起票する人が迷わない粒度にする
分類が30も40もあると、選ぶのに時間がかかり、適当に選ばれます。10秒で選べる数が現実的な上限です。細かく見たいときは、集計のときに現物の記録を開けば足ります。
分類は検索にもそのまま使える
集計のために付けた分類は、過去に似た不具合が無かったかを探すときにも使えます。2つの目的を1つの分類でまかなえるので、付ける価値があります。探し方は類似不具合の調べ方で扱っています。
前月と比べるときの注意
件数が増えた、減ったで一喜一憂すると、判断を誤ります。母数と、数え方の変化を先に確認します。
| 件数が動いた理由 | 確かめ方 |
|---|---|
| 生産量が変わった | 生産数も並べて、率で見る |
| 起票の基準が変わった | 軽微なものを起票するようになっていないか |
| 検査を強化した | 工程内での検出が増えるのは正常。客先流出を見る |
| 特定の1件が大量発生 | 件数ではなく案件数で数え直す |
| 営業日数が違う | 月によって20日と23日では差が出る |
件数と率の両方を出す
件数だけだと生産量の影響を受け、率だけだと絶対量が見えません。両方を並べておくと、読む人が判断できます。生産数の列を1つ足すだけで済みます。
1か月の増減では判断しない
不具合の件数は月ごとにばらつきます。3か月の移動平均か、前年同月と比べるほうが傾向が見えます。1か月だけで「増えた」と騒ぐと、対策が場当たりになります。
ゼロの月も記録する
件数がゼロだった分類も、行として残します。ゼロが続いていることが分かるので、対策が効いている証拠になります。行を消してしまうと、以前あったことを忘れます。
集計から次の手を決める
集計は、数えて終わりでは意味がありません。毎月1つでよいので、次にやることを決めます。
| 集計で見えた状態 | 次の手 |
|---|---|
| 1つの現象が突出して多い | その現象を1件の案件として、原因分析から回す |
| 1つの工程に集中している | その工程のリスク洗い出しを行う |
| 客先での発見が増えている | 検査の設計を見直す。どこで止まるはずだったかを見る |
| 特定の仕入先に偏っている | 受入の基準と、品質連絡の内容を見直す |
| 特定の時期・直に偏っている | 要員や環境など、条件側を疑う |
個別対応をやめる合図を見つける
同じ現象が毎月3件、4件と出ているなら、1件ずつ是正処置を回しても追いつきません。件数がまとまっている分類は、工程そのものを見直す対象です。集計をする最大の目的はここにあります。
決めた1つを翌月に確認する
毎月「次にやること」を決めても、翌月に確認しなければ流れます。集計表の欄外に、先月決めたことの結果を1行書くだけで、続きます。
件数の多い分類から順に手を付ける
全部に手を打とうとすると止まります。上位1つか2つに絞ると、その月のうちに動きます。上位が入れ替わっていけば、集計は機能しています。
苦情の集計と分けて持つ
社内で見つけた不具合と、客先からの苦情は、性格も読み方も違います。1つの表に混ぜると、どちらの傾向も読めなくなります。
不具合の集計
社内で見つけたものが中心。件数は多い。
読むのは工程と現象の偏り。
月次で読む。
苦情の集計
客先から言われたもの。件数は少ない。
読むのは期間の傾向と重さ。
四半期や年度で読む。
苦情は件数が少ないので、期間を長く取る
月に1件か2件の苦情を月次で比べても、偶然の差しか出ません。四半期や半期で並べるほうが傾向が見えます。読み方は苦情件数の分析で扱っています。
両方を突き合わせる場面はある
社内の不具合が減っているのに苦情が増えているなら、検査で止まらないものが出ているということです。年に1回、2つの表を並べて見ると、こうしたずれが分かります。
集計にかける時間を短くする
集計に半日かかると、続きません。目標は1時間以内です。そのために必要なのは、集計の技術ではなく日々の起票の形です。
| 時間がかかる原因 | 直し方 |
|---|---|
| 分類を集計時に付けている | 起票時に選ぶ形にする |
| 記録が複数の場所に散っている | 1件1行の一覧に集める |
| 手書きの紙から転記している | 入力する場所を1か所にする |
| 毎月グラフを作り直している | 集計の様式を固定して、数字だけ入れ替える |
| 読む人ごとに違う表を作っている | 1つの表にして、読む人が必要な行を見る |
様式を固定する
毎月同じ形の表にすると、作る時間も読む時間も短くなります。去年の同じ月と並べて見られるという利点もあります。見た目を毎回変えると、比べられません。
グラフは1枚か2枚まで
グラフを並べると作るのに時間がかかり、読む側も焦点が定まりません。件数の推移と、分類別の内訳の2枚で足ります。詳しく見たい人は数字の表を見ます。
集計は当月の初旬に済ませる
月が変わって時間が経つほど、記録の記憶が薄れて確認に手間がかかります。翌月の第1週に集計すると決めておくと、担当者が予定を組めます。
集計を報告につなぐ
月次の集計は、そのまま四半期や年度の報告の材料になります。毎月同じ形で残しておけば、年度末にまとめ直す作業が要りません。
| 期間 | 使う場面 | 足すもの |
|---|---|---|
| 月次 | 現場の会議。次の1手を決める | なし。集計そのまま |
| 四半期 | 部門の報告。傾向を見る | 3か月の推移。上位分類の変化 |
| 年度 | 経営への報告。品質目標との照合 | 目標に対する達成度、改善の効果 |
品質目標と同じ数字を使う
期の初めに立てた品質目標が「不良率0.5パーセント以下」なら、月次の集計でその数字を出しておきます。目標と集計で違う数え方をしていると、期末に合わなくなります。目標の進捗の見方は品質目標の進捗管理にまとめました。
読む相手によって、載せる粒度を変える
同じ集計でも、現場の会議では現象別の内訳が要り、経営への報告では件数の推移と金額のほうが伝わります。表は1つのまま、読む場面で見る行を変えると、作り直しが要りません。報告のたびに別の表を起こしていると、数字がずれます。
年度のまとめは、月次の積み上げでよい
年度末に1年分を数え直すと、数日かかります。月次の表を12枚並べるだけで年度の報告になる形にしておくと、その時間が要りません。まとめ方は改善実績の報告で扱っています。
よくある質問
- Q. 集計は誰が担当すべきですか?
- 数える作業は誰でもかまいませんが、読んで次の手を決める場には現場の責任者を入れてください。品質部門だけで読むと、報告のための集計になり、現場の動きにつながりません。数える人と読む人は別でかまいません。
- Q. 何か月分あれば傾向が読めますか?
- 3か月あれば移動平均が取れ、12か月あれば季節の影響が見えます。始めたばかりの現場では、まず3か月ためてから読み始めるのが現実的です。それまでは数字を並べるだけで、判断はしないほうが安全です。
- Q. 不具合の集計はどのくらいの頻度で行うべきですか?
- 月に1回が一般的です。週次だと件数が少なすぎて傾向が読めず、四半期だと手を打つのが遅くなります。翌月の第1週に済ませると決めておくと、記録の記憶が新しいうちに確認できます。
- Q. 分類はいくつくらいがよいですか?
- 現象は10〜20種類、発見場所は5種類程度が扱いやすい粒度です。30も40もあると、選ぶのに時間がかかり適当に選ばれます。「その他」が2割を超えたら分類を足す合図、1年ゼロ件の分類は統合してかまいません。
- Q. 件数が前月より増えました。悪化していますか?
- 生産量、起票の基準、検査の強化、特定案件の大量発生、営業日数のどれかが変わっていないか先に確認してください。とくに検査を強化した直後は、工程内での検出が増えるのが正常です。
- Q. 集計に時間がかかりすぎます。
- 分類を集計時ではなく起票時に選ぶ形にしてください。記録が複数の場所に散っているなら、1件1行の一覧に集めます。様式を固定して数字だけ入れ替える形にすると、1時間以内で終わります。
- Q. 社内の不具合と客先からの苦情は同じ表で集計してよいですか?
- 分けてください。件数の桁が違い、読む期間も違います。不具合は月次で工程と現象の偏りを見るもの、苦情は四半期や年度で傾向と重さを見るものです。混ぜるとどちらも読めなくなります。
- Q. 集計した結果を、どう次につなげればよいですか?
- 毎月1つでよいので、次にやることを決めてください。件数が突出している現象を1件の案件として原因分析に回す、集中している工程のリスク洗い出しをする、といった形です。翌月に結果を1行書くと続きます。
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