クレームの初動対応|受けた直後に残す事実と約束
クレームの電話を受けた直後は、頭の中が「どう謝るか」と「原因は何か」でいっぱいになります。ただ、その場でやるべきことは謝罪でも原因究明でもなく、事実を漏らさず受け取ることです。
一般には、クレームの初動対応は聞く・約束する・残すの3つで組み立てます。この記事では、クレームの初動対応で受けた直後に何を残すか、一次回答をどう決めるか、そして社内へどう渡すかまでをまとめます。社内で見つけた不具合の初動は不具合の初動対応で扱っています。
この記事の内容(8項目)
- クレームの初動対応で最初にやること
- その場で原因を推測して話さない
- 謝る範囲を分ける
- 相手の言葉は、要約せずそのまま残す
- 時刻まで入れる
- 誰が受けたかを書く
- 一次回答で約束することを決める
- 間に合わない約束をしない
- 約束した内容を、期限の一覧に移す
- 現物と証拠を確保する
- 返してもらうか、現地で見るか
- 自社側の同ロットを先に止める
- 社内へ渡すときに必要なもの
- 社内の不具合として起票し直す
- 影響度を付けて優先順位を決める
- 相手のタイプで、初動の重心を変える
- 物が要る相手に、原因を説明しない
- 過去の件が出てきたら、担当者だけで受けない
- 相手の言い分に納得できないときも、まず全部聞く
- クレームの初動対応でつまずきやすい3つ
- その1:受けた人が抱え込む
- その2:「確認します」で終わって連絡が途切れる
- その3:口頭のやり取りが記録に残らない
- よくある質問
クレームの初動対応で最初にやること
受けた直後の数分でやることは、次の3つです。原因の話は、この3つが終わってからで間に合います。
| やること | 中身 | 省くと起きること |
|---|---|---|
| 聞く | 何が起きたか、いつ、どの品で、いくつ | あとで確認の電話をかけ直すことになる |
| 約束する | いつまでに、何を、どの方法で返すか | 相手が待っている間に不信が積み上がる |
| 残す | 言われた言葉、約束した内容、受けた時刻 | 次の担当が別のことを言い、二次クレームになる |
その場で原因を推測して話さない
「たぶん◯◯だと思います」とその場で言うと、それが会社の見解として相手に残ります。あとで違っていたときに、訂正そのものが新しい問題になります。調べたうえで回答します、と伝えて時間をもらうほうが、結果的に早く収まります。
謝る範囲を分ける
一般には、事実が確定する前でも不便をかけたことに対しては謝るのが普通です。ここで謝るのは、原因が自社にあると認めることとは別です。「ご不便をおかけして申し訳ありません」と「弊社の不良です」は、意味が違います。この線を社内で共有しておくと、受けた人が黙り込まずに済みます。
相手の言葉は、要約せずそのまま残す
クレームの初動対応で残す内容は、要約すると価値が落ちます。言われた言葉のまま書いておくと、あとで事実確認ができます。
要約してしまった記録
「納品数の相違についてクレーム」何がどう違ったのか、相手が何を求めているのかが分からない。読んだ人がもう一度聞くことになる。
そのまま残した記録
「10個のはずが8個しか入っていない。今日中に確認して連絡がほしい。足りない分は明日の朝までに届けてほしい」要望と期限がそのまま分かる。
時刻まで入れる
「本日中に折り返します」という約束は、受けた時刻が分からないと守れているか判定できません。受付は日付ではなく時刻で残します。10時に受けたのか16時に受けたのかで、当日中の意味が変わります。
誰が受けたかを書く
受付者の名前が無いと、あとで細かいことを確認するときに誰に聞けばよいか分かりません。担当を引き継ぐ場合でも、最初に受けた人の名前は残しておきます。
一次回答で約束することを決める
一次回答は、原因や対策を答えるものではありません。次にいつ、何を返すかだけを約束します。ここを曖昧にすると、相手は「連絡が来ない」と感じます。
| 約束する内容 | 書き方の例 |
|---|---|
| いつまでに | 本日15時まで/明日午前中/3営業日以内 |
| 何を | 在庫の確認結果/不足分の手配可否/原因の見込み |
| どの方法で | 電話/メール/書面/訪問 |
| 誰から | 担当者名。受付者と違うなら、そのことも伝える |
間に合わない約束をしない
その場をおさめたい気持ちから、短い期限を口にしてしまうことがあります。守れなかったときの損失のほうが大きいので、社内で確認が要ることは「確認して折り返す」に留めます。折り返しの時刻だけは、その場で決めます。
約束した内容を、期限の一覧に移す
約束は、受けた記録の中に埋もれると守られません。案件が2件、3件と重なると、どれが先に切れるか分からなくなります。約束と期限だけを取り出した一覧を別に持っておくと、朝いちばんにその日の締切が分かります。期限の管理はクレームの回答期限で扱っています。
現物と証拠を確保する
クレームの初動対応で、あとから取り返せないのが現物です。相手の手元にあるものと、自社に残っているものの両方を押さえます。
| 押さえるもの | お願いのしかた |
|---|---|
| 相手の手元の現物 | 「そのままの状態で保管をお願いできますか」。捨てない、洗わない、直さないの3つを伝える |
| 現物の写真 | 「お手数ですが、状態が分かる写真をお送りいただけますか」。全体と、問題箇所の寄りの2枚 |
| ロット番号・製造記号 | 箱や製品の刻印の位置を伝えて、読み取ってもらう |
| 自社の同ロット | 出荷前在庫を保留する。すでに出ているなら、出荷先を洗い出す |
返してもらうか、現地で見るか
現物を送ってもらうと、届くまでに数日かかります。急ぐ案件や、動かすと状態が変わるものは、こちらから見にいくほうが早く進みます。訪問して見たときは、その場で分かったことを記録に残します。見方と残し方は現地確認の進め方にまとめました。
自社側の同ロットを先に止める
相手からの申出は、同じロットの他の出荷先でも起きている可能性があります。1件目の連絡を受けた時点で、社内在庫の保留と出荷先の洗い出しを始めます。2件目の連絡が来てから動くと、範囲の特定が後手に回ります。
社内へ渡すときに必要なもの
受付者と調査担当が別の場合、渡し方が悪いと同じことをもう一度相手に聞くことになります。渡すのは次の5つです。
- 相手の言葉のままの申出内容|要約前のもの
- 相手の要望|何をしてほしいと言われているか
- 約束した内容と期限|こちらが何を返すことになっているか
- 特定できている範囲|品名、ロット、数量、出荷日
- 現物の所在|相手が保管/送付済/こちらで確保
社内の不具合として起票し直す
クレームは、社内では1件の不具合案件として扱います。受付の記録と、調査の記録は別の様式に分けるのが扱いやすい形です。受付の記録は相手とのやり取りが中心で、調査の記録は工程と現象が中心になるためです。管理番号でつないでおけば、両方をたどれます。
影響度を付けて優先順位を決める
クレームは、社内で見つけた不具合より優先されるのが普通です。ただ、クレームどうしでも重さが違います。安全に関わるもの、複数件出ているもの、取引の継続に影響するものから手を付けます。一覧で影響度が付いていると、朝の判断がその表だけで終わります。
相手のタイプで、初動の重心を変える
クレームの内容が同じでも、相手が何を求めているかは違います。求めているものを取り違えると、正しい対応をしているのに関係が悪くなります。
| 相手が求めているもの | 見分け方 | 初動で重くする部分 |
|---|---|---|
| いますぐ物が欲しい | 納期・数量の話が中心 | 代替品の手配。原因の説明は後回しでよい |
| 原因と再発防止を知りたい | 「なぜ起きたか」を繰り返し聞く | いつまでに原因を報告するかの約束 |
| 不便をかけられたことへの説明 | 経緯や社内の対応を問われる | 事実の整理と、こちらの認識の共有 |
| 取引の条件そのものの話 | 過去の件も持ち出される | 担当者だけで受けない。上位者を早めに入れる |
物が要る相手に、原因を説明しない
明日の生産に間に合わせたい相手に、原因の調査状況を長く話すと、話が進んでいないように受け取られます。先に手配の可否を答えて、原因は別の機会に回すほうが、相手にとっては誠実です。
過去の件が出てきたら、担当者だけで受けない
「前にも同じことがあった」という話が出たときは、1件の不具合ではなく取引全体の話になっています。その場で判断せず、上位者と一緒に受ける形に切り替えます。担当者が個人で背負うと、無理な約束につながります。
相手の言い分に納得できないときも、まず全部聞く
使い方の問題だと感じても、初動の段階では反論しません。事実の確認が終わる前の反論は、確認そのものを止めてしまいます。聞き取った内容を残しておけば、あとで事実に基づいて話せます。
クレームの初動対応でつまずきやすい3つ
その1:受けた人が抱え込む
自分のミスかもしれないと思うと、報告が遅れます。クレームは受けた時点で全件共有するという決め方にしておくと、報告するかどうかで悩む時間が消えます。受けた人を責めない運用が前提になります。
その2:「確認します」で終わって連絡が途切れる
確認に時間がかかると、その間の連絡が止まります。相手から見ると、忘れられたのと同じです。まだ分からないという中間報告を1本入れるだけで、印象が変わります。期限の一覧があると、この中間報告が抜けません。
その3:口頭のやり取りが記録に残らない
電話で済ませたやり取りは、記録に残りにくいものです。あとで「言った・言わない」になったとき、記録が無い側が不利になります。電話のあとに要点をメールで送ると、記録と証拠を同時に作れます。
受注条件そのものの食い違いが原因になっている場合は、受注条件の認識違いを防ぐもあわせてご覧ください。
よくある質問
- Q. クレームの初動対応は誰が担当すべきですか?
- 受けた人が最初の記録まで責任を持ち、その後の調査は別の担当に渡すのが回りやすい形です。受けた人に調査まで持たせると、報告そのものが億劫になります。受付者と担当者の欄を分けておくと、自然に引き継げます。
- Q. クレームを受けたとき、その場で謝ってもよいですか?
- 不便をかけたことに対して謝るのは一般的です。それは原因が自社にあると認めることとは別です。「ご不便をおかけして申し訳ありません」と「弊社の不良です」は意味が違うので、この線を社内で共有しておくと、受けた人が黙り込まずに済みます。
- Q. 一次回答はどのくらいの早さで返すべきですか?
- 業種によりますが、受付から1営業日以内に第一報を返している現場が多くあります。内容が確定していなくてもかまいません。いつまでに何を返すかだけを伝えるのが一次回答です。
- Q. 現物を送ってもらうのと、こちらから見にいくのはどちらがよいですか?
- 急ぐ案件や、動かすと状態が変わるものは、こちらから見にいくほうが早く進みます。時間に余裕があり、測定機器が必要なものは送ってもらう形が向いています。どちらの場合も、状態を変えないでほしいことは最初に伝えてください。
- Q. クレームの記録と社内の不具合記録は分けるべきですか?
- 分けたほうが扱いやすくなります。受付の記録は相手とのやり取りが中心、調査の記録は工程と現象が中心で、書く内容が違うためです。管理番号でつないでおけば両方をたどれます。
- Q. 電話で受けたクレームの記録はどこまで書けばよいですか?
- 相手の言葉のままの申出内容、要望、こちらが約束した内容と期限、受付の時刻と受付者。この5つが入っていれば、次の担当が引き継げます。要約すると読んだ人がもう一度聞くことになるので、言われたとおりに書いてください。
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