現地確認の進め方|品質クレームで客先へ行く前の準備と見る順番
客先で不具合が出たとき、現物を送ってもらうよりこちらから見にいくほうが早い場面があります。使われ方が関係していそうなとき、動かすと状態が変わるとき、相手の生産が止まっているときです。
ただ、行った先で何を見るかが決まっていないと、謝って帰ってくるだけになります。この記事では、現地確認の進め方を、行く前の準備、見る順番、持ち帰るもの、その場で言わないことに分けてまとめます。
この記事の内容(11項目)
- 現地確認に行くかどうかの判断
- 迷ったら早めに行く
- 行くと決めたら、いつ行くかを先に伝える
- 行く前に準備するもの
- 良品を持っていくのがいちばん効く
- 撮影の可否を事前に確認する
- 聞くことを3つに絞っておく
- 現地確認で見る順番
- 使われ方は、実際の作業を見せてもらう
- 良品も一緒に見る
- 数量は必ず両方聞く
- その場で言わないこと
- 費用と補償の話は持ち帰る
- 相手の使い方が原因だと感じても、その場では言わない
- 謝る範囲は分けておく
- 持ち帰るもの
- 現物を預かるときは記録を残す
- 約束したことを、帰る前に読み上げる
- 持ち帰った現物は、そのまま現物調査へ渡す
- 訪問記録の残し方
- 「その場で伝えたこと」の欄が要る
- 約束は、期限の表に移す
- 受付の記録とつなぐ
- 現地確認でつまずきやすい3つ
- その1:営業だけで行く
- その2:見るものを決めずに行く
- その3:帰ってから記録を書く
- 現地確認にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 現地確認に出てくる用語
- 現地確認と一緒に押さえておきたいこと
- 受け取った日、気づいた日、連絡を受けた日を分けて聞く
- 使われ方を記録するのは、責任の線を引くため
- 人やほかの物への被害があれば、製造物責任も視野に入れる
- よくある質問
現地確認に行くかどうかの判断
すべての不具合で訪問する必要はありません。行く価値がある場面を先に決めておくと、判断に迷いません。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 相手の生産が止まっている | 行く。復旧の手助けができる |
| 使われ方が関係していそう | 行く。現物だけでは分からない |
| 大きくて動かせない、組み込まれている | 行く。持ち帰れない |
| 複数件まとまって出ている | 行く。傾向がその場で見える |
| 現物を送ってもらえば分かる | 行かない。送付を依頼する |
| すでに廃棄されている | 行っても現物が無い。記録での確認に切り替える |
迷ったら早めに行く
時間が経つほど、現物は片付けられ、担当者の記憶も薄れます。行くかどうか迷った時点が、いちばん情報が多い状態です。訪問の費用より、情報を失う損失のほうが大きくなります。
行くと決めたら、いつ行くかを先に伝える
「近いうちに伺います」では、相手は現物を保管し続けるか判断できません。訪問の日時を決めて伝えると、相手も準備ができます。あわせて、現物をそのままにしておいてほしいことを伝えます。
行く前に準備するもの
手ぶらで行くと、見ても測れず、写真も撮れないまま帰ることになります。持ち物と、聞くことを先に決めておきます。
| 持っていくもの | 使う場面 |
|---|---|
| 良品のサンプル | その場で比べる。言葉で説明せずに済む |
| 測定器(ノギス、スケール) | その場で数値にする |
| カメラ(スケールも一緒に) | 状態を残す。撮影の可否は先に確認する |
| 該当ロットの製造・検査記録 | その場で条件を突き合わせる |
| 記録用紙 | 聞いたことをその場で書く |
| 予備品・代替品 | 相手の生産が止まっている場合 |
良品を持っていくのがいちばん効く
不具合品と良品を並べると、どこが違うかが一目で分かります。説明の時間が短くなり、認識のずれも起きにくくなります。相手にとっても、何が問題なのかがはっきりします。
撮影の可否を事前に確認する
工場によっては撮影が禁止されています。行ってから断られると、記録がスケッチだけになります。訪問の連絡をするときに、あわせて確認しておきます。撮れない場合は、スケッチと寸法のメモで代替します。
聞くことを3つに絞っておく
その場で思いついたことを聞くと、話が広がって時間だけ過ぎます。いつ気づいたか、どう使っていたか、他にも出ているか。この3つを軸にすると、必要な情報がそろいます。
現地確認で見る順番
着いてすぐ現物に飛びつくと、周りの情報を取り逃します。広いところから狭いところへ順に見ます。
使われ方は、実際の作業を見せてもらう
「どう使っていますか」と聞くと、手順書どおりの答えが返ってきます。実際の作業を見せてもらうと、手順書に無い扱われ方が見えます。ここに原因があることは珍しくありません。
良品も一緒に見る
不具合品だけを見ると、その状態が異常かどうかの判断が難しくなります。相手の手元にある良品も何個か見せてもらうと、ばらつきの幅が分かります。全数が同じ傾向なのか、一部だけなのかで、原因の候補が変わります。
数量は必ず両方聞く
不具合の数だけでなく、そのうち何個中何個かを聞きます。10個中1個と、1000個中1個では、意味がまったく違います。相手が数えていない場合は、その場で数えてもらえないか相談します。
その場で言わないこと
現地では、原因を推測して話したくなります。その場の発言は、会社の見解として相手に残ります。
| 言わない | 代わりに言う |
|---|---|
| 「たぶん材料のせいです」 | 「持ち帰って、材料のロットと製造条件を確認します」 |
| 「この使い方が原因かもしれません」 | 「使われ方も含めて確認したいので、写真を撮らせてください」 |
| 「全部交換します」 | 「対応は社内で確認して、◯日までにご連絡します」 |
| 「他社でも同じことがありました」 | (言わない。他社の情報は出さない) |
費用と補償の話は持ち帰る
その場で費用の負担を約束すると、あとから社内で覆せません。「持ち帰って確認します」と伝えて、期限だけその場で決めるのが安全です。相手も、その場で結論が出るとは思っていないことが多くあります。
相手の使い方が原因だと感じても、その場では言わない
使い方に原因がありそうでも、確認が済む前に言うと、話がこじれて事実確認そのものが止まります。写真と記録を残して、社内で確認してから伝えるほうが、結果的に早く収まります。
謝る範囲は分けておく
不便をかけたことに対して謝るのと、原因が自社にあると認めるのは別です。この線を訪問前に社内で共有しておくと、現地で迷いません。
持ち帰るもの
帰るときに何を持っているかで、その後の調査の速さが決まります。
- 現物|可能なら。相手の了解を得て、預かり証を残す
- 写真|使われ方、保管状態、現物、良品との比較
- 数量|不具合数と、確認した母数
- ロット情報|相手の在庫にあるロットの一覧
- 聞いた内容|いつ気づいたか、どう使っていたか、他にも出ているか
- 約束したこと|いつまでに何を返すか
現物を預かるときは記録を残す
その場で現物を受け取るときは、何を何個、いつ、誰が預かったかを書いて相手に控えを渡します。返却するのかしないのか、破壊調査をしてよいのかもその場で確認しておきます。あとから聞くと、調査が止まります。
約束したことを、帰る前に読み上げる
訪問中に決まったことを、帰り際に相手と一緒に読み合わせると、認識のずれが残りません。「◯日までに原因の見込みをご報告します」と口に出して確認するだけで足ります。
持ち帰った現物は、そのまま現物調査へ渡す
預かった現物は、社内で測って数値にします。訪問の記録と、現物調査の記録は別に持つと、それぞれが読みやすくなります。測り方は現物調査のやり方にまとめました。
訪問記録の残し方
訪問の内容は、帰社してから書くと抜けます。その場で埋められる形の用紙を持っていくと、記憶が新しいうちに残ります。
| 残す項目 | なぜ要るか |
|---|---|
| 訪問日時・訪問者・相手先の対応者 | あとで確認する相手が分かる |
| 見た場所(工程、保管場所) | どこまで見たかが分かる |
| 現物の状態(数値と写真の有無) | 調査の起点になる |
| 使われ方で気づいたこと | 自社の想定と違う点が原因のことがある |
| 相手から聞いたこと | 言われた言葉のまま |
| その場で伝えたこと | 会社の見解として残る。あとで食い違わないため |
| 持ち帰ったもの | 預かり品の管理 |
| 約束したこと・期限 | 期限の表に移す |
「その場で伝えたこと」の欄が要る
訪問中に何を言ったかが記録に無いと、次に担当が替わったときに別のことを言ってしまいます。伝えた内容を残すのは、相手のためでもあり自社のためでもあります。
約束は、期限の表に移す
訪問先で生まれた約束は、訪問記録の中に埋もれます。帰社したらその日のうちに、期限の表へ1行追加します。移し忘れると、その約束だけが管理から漏れます。期限の管理はクレームの回答期限で扱っています。
受付の記録とつなぐ
訪問は、クレームを受けたあとの1つの動きです。受付の記録と同じ管理番号を振っておくと、案件として一続きになります。受けた直後の記録の残し方はクレームの初動対応にまとめました。
現地確認でつまずきやすい3つ
その1:営業だけで行く
関係の修復は営業ができますが、現物を測って原因の見当を付けるのは技術の仕事です。可能なら2人で行くと、その場で判断できることが増えます。1人で行くなら、測るための準備を厚くします。
その2:見るものを決めずに行く
「とりあえず謝りに行く」という訪問は、相手の時間も使います。何を見て、何を持ち帰るかを決めてから行くと、同じ1時間の価値が変わります。
その3:帰ってから記録を書く
帰社してから書くと、細かい数値や言われた言葉が抜けます。その場で用紙に書くのがいちばん確実です。書きながら聞くと、相手も丁寧に答えてくれます。
現地確認にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
現地確認のやり方そのものを決めた法令はありません。ただ、現地確認の後に出てくる「交換」「返品」「やり直し」の扱いは、取引のルールの改正で2026年から変わっています。品質の規格も新しい版が出ました。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2025年5月23日 | 下請法の改正法が公布された。名称は取適法(中小受託取引適正化法)に変わる | 公正取引委員会 |
| 2026年1月1日 | 取適法が施行。受託側に責任がないのに、受け取った品を引き取らせること(返品、5条1項4号)や、給付をやり直させること(5条2項3号)の禁止が、新しい法律の下で引き続き置かれた | 取適法5条 |
| 2026年9月16日 | ISO 9001の第6版(ISO 9001:2026)が発行。2015年版からの移行期限は2029年9月30日 | ISO/TC 176 |
現地確認で効いてくるのは取適法です。相手が委託する側で、自社が受託する側の取引なら、原因が分かる前の「全部引き取ります」は、責任の所在が決まる前に返品を受け入れることになります。原因の確認が済むまでは、預かる数と期限だけを決めて持ち帰るのが安全です。
出典:公正取引委員会「取適法(2025年改正)」/e-Gov法令検索 取適法/ISO/TC 176 ISO 9001:2026 has been released!
確認日は2026年10月3日です。取引の扱いは公正取引委員会または中小企業庁の相談窓口、ISOの移行の時期は契約している認証機関で確認できます。
現地確認に出てくる用語
現地確認という言葉は、検索すると土地の登記の「現地確認不能」などが多く出てきます。品質の場面で使う言葉を、意味と出典で整理します。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 現地確認 | 品質の場面では、不具合が出た客先へ出向いて、現物・使われ方・保管状態を確かめること | 法令上の定義はない |
| 現物調査 | 預かった不具合品を社内で測り、数値にすること | 法令上の定義はない |
| 預かり証 | 客先から現物を預かるときに、品名・数量・日付・預かった人を書いて渡す控え | 法令上の定義はない |
| 契約不適合 | 引き渡した物が、種類・品質・数量について契約の内容に合わないこと | 民法562条 |
| 受入れの検査と通知 | 商人どうしの売買で、買主は受け取ったら遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに売主に通知する | 商法526条 |
| 欠陥 | 製造物が通常持つべき安全性を欠いていること | 製造物責任法2条2項 |
| 返品 | 受託側に責任がないのに、受け取った品を引き取らせること。取適法の対象の取引では禁止 | 取適法5条1項4号 |
現地確認と一緒に押さえておきたいこと
現地確認の段取りが決まったら、次の3つも訪問記録の欄に入れておくと、その後の話し合いで事実を確かめやすくなります。
受け取った日、気づいた日、連絡を受けた日を分けて聞く
商人どうしの売買では、買主は受け取ったら遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに売主に通知するとされ、すぐには見つけられない不適合は、受け取ってから6か月以内に見つけたときに同じく直ちに通知することとされています(商法526条2項)。契約で別の決まりを置いていることも多いので、現地では日付を3つ分けて聞いて記録し、扱いは持ち帰って契約と照らします。その場で期限の話を持ち出す必要はありません。
使われ方を記録するのは、責任の線を引くため
民法562条は、契約に合わない物を引き渡したときの修補や代替品の請求を定めていますが、不適合が買主の責めによるときは請求できないとしています(同条2項)。現地確認で使われ方や保管状態を写真と言葉で残しておくのは、この線を後から確かめるためです。だからこそ、その場では原因を口にせず、記録に徹するのが近道になります。
人やほかの物への被害があれば、製造物責任も視野に入れる
製品の欠陥で人の生命・身体や、ほかの財産に被害が出たときは、製造物責任法の対象になります(3条。被害がその製品だけにとどまるときは対象外)。損害賠償の請求権は、損害と賠償義務者を知ったときから3年(人の生命・身体の被害は5年)、引き渡したときから10年で時効になると定められています(5条)。訪問記録に「製品以外への被害の有無」の欄を設けておくと、社内で扱いを分ける判断が早くなります。
確認先:契約の扱いは顧問の弁護士、取引の扱いは公正取引委員会または中小企業庁の相談窓口。条文は商法(e-Gov法令検索)、製造物責任法(e-Gov法令検索)で確認できます。
よくある質問
- Q. 現地確認に行くかどうかはどう判断しますか?
- 相手の生産が止まっている、使われ方が関係していそう、大きくて動かせない、複数件まとまって出ている、のいずれかなら行く価値があります。現物を送ってもらえば分かる案件は、送付の依頼で足ります。
- Q. 訪問には何を持っていけばよいですか?
- 良品のサンプル、測定器、カメラ、該当ロットの製造・検査記録、記録用紙です。良品を持っていくと、その場で比べられるので説明の時間が短くなります。撮影の可否は事前に確認してください。
- Q. 現地で原因を聞かれたら答えるべきですか?
- その場の推測は会社の見解として相手に残ります。「持ち帰って確認し、◯日までにご連絡します」と伝えて、期限だけその場で決めるのが安全です。あとで違っていたときに、訂正そのものが新しい問題になります。
- Q. 相手の使い方が原因だと感じたときはどうしますか?
- 確認が済む前に言うと、話がこじれて事実確認そのものが止まります。写真と記録を残して、社内で確認してから伝えてください。その場では、使われ方も含めて確認したいと伝えるにとどめます。
- Q. 現物を預かるときに気をつけることはありますか?
- 何を何個、いつ、誰が預かったかを書いて相手に控えを渡してください。返却するのかしないのか、破壊調査をしてよいのかも、その場で確認しておきます。あとから聞くと調査が止まります。
- Q. 訪問記録はいつ書けばよいですか?
- その場で書いてください。帰社してから書くと、細かい数値や言われた言葉が抜けます。書きながら聞くと、相手も丁寧に答えてくれます。
- Q. 訪問は誰が行くべきですか?
- 可能なら営業と技術の2人です。関係の修復は営業、現物を測って原因の見当を付けるのは技術の仕事です。1人で行く場合は、測るための準備を厚くしてください。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点のものです。