原因を掘る

類似不具合の調べ方|探す5つの軸と「該当なし」の残し方(ISO 9001 10.2.1 b)対応)

公開 2026-08-30更新 2026-10-03 執筆 改善板 編集部
改善板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

不具合が出たとき、原因分析に入る前に5分だけ使って過去を見ると、そのあとが大きく変わります。過去に同じことが起きていれば、そのときの分析結果がそのまま使えるためです。

ただ、実際には探し方が決まっていないので探されないことが多くあります。この記事では、類似不具合の調べ方を、探す5つの軸と、見つからなかったときの記録の残し方、そして探せる状態を作る分類のつけ方までまとめます。是正処置という言葉の意味と報告書の書き方は是正処置とは、対策したはずの不具合がまた起きたときの切り分けは対策後に再発したときで扱っています。

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この記事の内容(11項目)

類似不具合を探す5つの軸

「似た不具合」は、人によって思い浮かべるものが違います。軸を決めておくと、誰がやっても同じ精度で探せます。

軸探し方見つかったときの意味
現象「ヒケ」「異物」「寸法外れ」など、起きたことの名前同じ現象。前回の分析がそのまま使える
工程同じ工程で過去に起きたものその工程に共通の弱点がある
設備同じ機械・治具・工具設備の劣化や設定を先に疑える
材料・仕入先同じ材料、同じ仕入先のロット受入側の問題として切り分けられる
時期同じ月、同じ曜日、同じ直要員や環境など、条件側の問題

現象から探すのがいちばん速い

5つのうち、最初に試すのは現象です。同じ現象が過去にあったなら、そのときの原因と対策がそのまま材料になります。他の4つは、現象で見つからなかったときに広げる軸です。

5分で切り上げる

探すのは長くても5分から10分です。それ以上かけても出てこないなら、探せる状態になっていないということなので、探すのをやめて分析に進みます。探せない状態そのものは、別途直す課題として残します。

見つかったときに、まず確かめること

似た記録が見つかっても、同じ不具合とは限りません。現象が同じでも原因が違うことはよくあります。ここを混ぜると、間違った前提で分析が進みます。

見つかった記録の扱い分け
現象が同じまず候補として拾う
→
原因を見る前回の確定原因を読む
→
今回に当てはまるか条件を突き合わせる
→
再発/別件どちらかを決める
現象だけで「再発」と決めると、違う原因を前回の対策でふさごうとすることになる
状態扱い
現象も原因も同じ再発。前回の対策が効かなかった理由を掘る
現象は同じだが原因が違う別件。前回の記録は参考として残す
現象は違うが原因が同じ水平展開の対象だった可能性。範囲の見直しへ
似ているが判断できない今回の原因が確定してから、もう一度突き合わせる

再発だった場合は、掘る場所が変わる

再発と判断したら、掘るのは現象の原因ではなく前回の対策が効かなかった理由です。実施されていなかったのか、実施したが守られなかったのか、原因の特定が違っていたのか。この切り分けは対策後に再発したときで扱っています。

見つからなかったことも記録する

探して何も出てこなかったとき、記録に残らないまま終わりがちです。すると次の担当者が、同じ検索をもう一度します。

残っていない

探したかどうかが分からない。
次の人も同じ検索をする。
「初めてのはず」と言い切れない。

1行残っている

「過去3年分、現象『ヒケ』と工程『成形』で検索。該当なし」
次の人は範囲を広げるところから始められる。

残すのは3つだけ

手間をかける必要はありません。いつからいつまでを、どの軸で、結果はどうだったかの3つで足ります。1行、20秒の作業です。

「該当なし」は初出の根拠になる

客先へ報告するとき、「過去に同種の事例はありません」と書く場面があります。探した記録が無いままこれを書くと、あとで過去の事例が出てきたときに信用を落とします。探した範囲が残っていれば、その範囲では無かったと正確に書けます。

探せる状態を作る

類似不具合が探せないのは、探し方が悪いのではなく、記録に検索できる分類が付いていないためです。1件あたり10秒の入力で、あとの検索が変わります。

付ける分類粒度の目安付けないと
現象10〜20種類。増やしすぎない言葉が人ごとに違い、検索で当たらない
工程工程表と同じ名前「製造部」では絞れない
設備設備台帳の番号「あの機械」では追えない
製品・品番品番そのまま製品群でまとめると個別が見えない
発生/流出の工程両方を別の列でどこで作り込んだかの傾向が出ない

現象の言葉を統一する

「ヒケ」「へこみ」「くぼみ」が混在すると、検索で当たりません。使う言葉を10〜20個の一覧にして、そこから選ぶ形にすると揃います。一覧に無い現象が出たら、そのとき追加します。

分類は月次の集計にもそのまま使える

検索のために付けた分類は、月ごとの集計でもそのまま使えます。件数を現象別・工程別に数えると、どこに手を入れるかが決まります。集計の作り方は月次の不具合集計で扱っています。

月次 不具合集計表(Excel・無料)月ごとの発生件数を分類別に数え、前月との差を見ます。登録不要でダウンロードできます。
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過去を見ることと、これからを見ることをつなぐ

類似不具合の検索は「すでに起きた場所」を探す作業です。同じ原因が成り立つ「これから起きるかもしれない場所」を探すのが水平展開です。この2つは同じ日にやると効率が良くなります。

類似不具合の検索水平展開
向き過去これから
探すもの同じ現象が起きた記録同じ原因が成り立つ場所
いつやるか分析を始める前原因が確定した直後
成果前回の分析が使える/再発と分かる次の不具合を1件減らせる

検索で出た工程は、展開の候補になる

過去の検索で「同じ現象が別の工程でも起きていた」と分かったら、その工程は水平展開の候補です。検索の結果をそのまま展開の対象一覧に移せるので、二度手間になりません。範囲の決め方は水平展開の進め方にまとめています。

年に1回、検索できなかった件を数える

探したが出てこなかった件が多いなら、分類の付け方に問題があります。年に1回、該当なしで終わった件数と、その理由を見ておくと、記録の作り方を直す材料になります。

水平展開確認表(Excel・無料)同じ原因が起こり得る部署・製品だけを対象に、展開状況を確認します。登録不要でダウンロードできます。
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検索を、日々の運用に組み込む

類似不具合の検索は、やろうと決めても続きません。手順の中に位置を作ってしまうと、意識せずに回るようになります。

組み込む場所やることかかる時間
不具合を起票するとき現象の分類を選ぶ。選んだ時点で過去の件数が見える10秒
原因分析を始める前同じ分類の過去案件を開く5分
対策を決めるとき過去に同じ対策を打っていないか見る3分
月次の集計のとき件数の多い分類を確認する集計の中で

起票の時点で過去の件数が見える形にする

分類を選んだときに、その分類の過去件数が分かると、探しにいかなくても再発かどうかの見当がつきます。表計算でも、分類ごとの件数を集計しておけば実現できます。件数が多い分類が出たら、そこは個別対応ではなく仕組みの問題です。

対策を決める前にも一度見る

過去に同じ対策を打っていて効かなかった、ということがあります。対策の候補が固まった時点で、その対策を過去に打っていないか確認すると、同じ失敗を避けられます。効かなかった記録が残っていれば、そこが手がかりになります。

新しく入った人ほど、検索が効く

経験の長い人は記憶で当たりを付けられますが、新しく入った人にはそれができません。検索できる状態は、経験の差を埋める仕組みでもあります。担当が替わっても調査の質が落ちないという効果は、日々の運用では見えませんが、数年単位では大きく効きます。

探す人を決めない

「検索は品質部門がやる」と決めると、品質部門の手が空くまで止まります。誰でも5分でできる形にしておくのが目標です。分類が付いていて、一覧で絞れるなら、それは達成できます。

類似不具合の検索でつまずきやすい3つ

その1:担当者の記憶に頼る

「前にもあった気がする」で探すと、その人が知っている範囲しか出ません。異動や退職で、その記憶ごと消えます。記録を検索する形にしておけば、誰がやっても同じ結果になります。

その2:報告書がファイルで散っている

案件ごとの報告書が個別のファイルになっていると、横断して探せません。1件1行の一覧を別に持っておくと、検索はその表だけで済みます。詳細が要るときに報告書を開きます。

その3:似ているのに言葉が違って当たらない

同じ現象に違う言葉が付いていると、検索から漏れます。分類の一覧から選ばせる形にするのがいちばん確実ですが、すでに自由記入で積み上がっている場合は、よく使われる言い換えを検索のときに一緒に試すという運用でも拾えます。

過去の記録は捨てない 案件を閉じたあとに記録を消してしまうと、この検索が成り立ちません。閉じた案件も行として残し、状態で絞れる形にしておくと、検索と集計の両方で使えます。保存の期間は業種によって規制がある場合があるので、該当するかは所管の行政庁にご確認ください。

探した結果から原因を絞る流れは原因分析の進め方で扱っています。

類似不具合にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

類似不具合を探す作業は、多くの会社で ISO 9001 の是正処置の一部として決められています。その規格の版の動きと、1社の問題をきっかけに「ほかでも起きていないか」を業界全体で調べさせた行政の動きを、日付順に並べます。

時期出来事類似不具合の調べ方への影響
2015年9月ISO 9001:2015 が発行された(日本では JIS Q 9001:2015)。10.2.1 b) 3) で、類似の不適合の有無と、それが発生する可能性を明確にすることが求められているいま多くの会社が認証を受けている版。この記事の箇条番号はこの版による
2024年2月23日ISO 9001:2015 の追補1(気候変動への対応)が発行された不適合及び是正処置の 10.2 は変わっていない
2024年6月3日国土交通省が、型式指定を取得している自動車メーカーなど85社に指示していた不正行為の有無の調査について、5月末までに5社から不正があったとの報告があったと公表した1件の問題を受けて、同じ種類の問題をほかで探した例。社内で類似不具合を探すときも、探した範囲と結果を残す形は同じ
2026年9月16日ISO 9001:2026 が発行された。移行期限は2029年9月30日とされている類似の不適合の確認に当たる箇条の番号と文言は、2026年版の本文で確かめる

類似不具合の調べ方で、ポイントは探した範囲と結果を、該当なしのときも記録に残すことです。規格の版が変わっても、この形はそのまま使えます。

出典:ISO 9001:2015(ISO)、ISO 9001:2015/Amd 1:2024(ISO)、ISO 9001:2026 の発行(ISO)、型式指定申請における不正行為の調査結果(国土交通省、2024年6月3日)

確認日は2026年10月3日です。規格の移行の時期と審査での扱いは、認証を受けている認証機関にご確認ください。

類似不具合に出てくる用語

入力候補には「類似不具合とは」「類似の不適合とは」が出てきます。どちらも、規格や法令で用語として定義された言葉ではありません。近い言葉と並べて、この記事での意味を示します。

用語意味出典
類似不具合今回の不具合と、現象・原因・条件のどれかが似ている、過去またはほかの場所の不具合。「類似不良」とも呼ばれる規格上・法令上の定義はない
類似の不適合是正処置の必要性を評価するときに、有無と発生する可能性を明確にするよう求められているものISO 9001:2015 10.2.1 b) 3)(用語としての定義はない)
不適合要求事項を満たしていないことJIS Q 9000:2015 3.6.9
是正処置不適合の原因を取り除き、再発を防ぐための処置JIS Q 9000:2015 3.12.2
修正見つかった不適合を取り除くための処置JIS Q 9000:2015 3.12.3
再発対策をしたあとに、同じ原因で同じ不具合がまた起きること規格上・法令上の定義はない
初出過去の記録を探した範囲では、同じ不具合が見つからなかったもの規格上・法令上の定義はない
水平展開同じ原因を持つほかの工程や製品にも対策を広げること規格上の定義はない。10.2.1 b) 3) の「発生する可能性」の確認が近い

類似不具合で混ざりやすいのは、類似と再発です。似た記録が見つかっただけでは類似で、原因まで同じと確かめられて初めて再発になります。この記事の「見つかったときに、まず確かめること」の表は、この線を引くためのものです。

類似不具合と一緒に押さえておきたいこと

類似不具合の解説は、検索のしくみやデータベースの話で終わることが多くあります。品質の記録として抜けやすいことを3つ挙げます。

規格が求めているのは「有無」と「可能性」の2つ

ISO 9001:2015 の 10.2.1 b) 3) では、類似の不適合の有無と、それが発生する可能性の両方を明確にすることが求められています。前者は過去の記録を探すこの記事の作業、後者は同じ原因が成り立つ場所を探す水平展開です。報告書の欄も「過去の類似(有無)」と「展開先(発生する可能性)」の2つに分けておくと、片方だけで終わりません。探した範囲と結果は、10.2.2 で残すことが求められている文書化した情報の一部として扱えます。展開の進め方は水平展開の進め方にあります。

是正処置・再発の記事との役割の違い

改善板では、不具合が出たあとの流れを場面ごとに分けて書いています。どこから読むかの目安です。

場面読む記事
不具合が出て、原因分析を始める前に過去を探したいこの記事(類似不具合の調べ方)
是正処置という言葉の意味や、報告書のどの欄に何を書くかを知りたい是正処置とは
対策して閉じた案件が、また起きた対策後に再発したとき

検索で「現象も原因も同じ」と分かったら、それは類似ではなく再発です。そこからは掘る場所が、前回の対策が効かなかった理由に変わります。

社外の事故情報も、探す範囲に入れられる

消費者向けの製品を作っているなら、社内の記録に加えて、製品評価技術基盤機構(NITE)の製品事故情報の検索「NITE SAFE-Lite」や、消費者庁のリコール情報サイトも探す範囲に入れられます。他社の同じ種類の製品で起きた事故は、自社ではまだ起きていない不具合の手がかりになります。また、重大製品事故に当たる事故が起きたことを知ったときは、知った日を含めて10日以内に消費者庁へ報告すると定められています(消費生活用製品安全法第35条)。社内の類似不具合の検索を待たずに、報告の要否は先に判断する形にしておきます。

出典:製品事故情報(NITE)、リコール情報サイト(消費者庁)、消費生活用製品安全法(e-Gov法令検索)

改善板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 検索は誰の仕事にすべきですか?
担当を決めると、その人の手が空くまで止まります。分類が付いていて一覧で絞れる状態にして、誰でも5分でできる形にするのが目標です。起票する人がその場で確認できるのが理想の形です。
Q. 同じ分類の件数が多いときはどう扱いますか?
個別に対応するのではなく、仕組みの問題として扱ってください。件数が多い分類は、その工程や条件に共通の弱点があるということです。1件ずつ是正処置を回すより、工程そのものを見直すほうが早く減ります。
Q. 類似不具合の検索にはどのくらい時間をかけるべきですか?
5分から10分が目安です。それ以上かけても出てこないなら、記録が探せる状態になっていないということなので、いったん分析に進んでください。探せない状態そのものは、別の課題として残します。
Q. 現象が同じなら再発として扱ってよいですか?
原因まで確かめてください。現象が同じでも原因が違うことはよくあります。前回の確定原因を読んで、今回の条件に当てはまるかを突き合わせてから判断します。
Q. 何年分まで遡って探すべきですか?
一律の目安はありません。同じ製品を作り続けているなら3年前後、設備や工法が変わっているなら、変わった時点までで十分です。探した範囲を記録に残しておけば、あとから広げるときの起点になります。
Q. 不具合の分類はどのくらいの粒度がよいですか?
現象は10〜20種類が扱いやすい粒度です。細かくしすぎると入力の負担が増え、粗すぎると絞れません。工程と設備は、工程表や設備台帳と同じ名前・番号を使うと、他の記録とつながります。
Q. 過去の記録が紙しかない場合はどうしますか?
すべてを電子化する必要はありません。1件1行の一覧だけを作って、詳細は紙の保管場所を書いておく形でも検索は成り立ちます。まず直近1年分から始めて、必要になったときに遡るのが現実的です。
類似不具合検索表(Excel・無料)過去に似た不具合が無かったかを、探した結果ごと記録します。登録不要でダウンロードできます。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点のものです。