類似不具合の調べ方|過去に同じことが起きていないか
不具合が出たとき、原因分析に入る前に5分だけ使って過去を見ると、そのあとが大きく変わります。過去に同じことが起きていれば、そのときの分析結果がそのまま使えるためです。
ただ、実際には探し方が決まっていないので探されないことが多くあります。この記事では、類似不具合の調べ方を、探す5つの軸と、見つからなかったときの記録の残し方、そして探せる状態を作る分類のつけ方までまとめます。
この記事の内容(8項目)
- 類似不具合を探す5つの軸
- 現象から探すのがいちばん速い
- 5分で切り上げる
- 見つかったときに、まず確かめること
- 再発だった場合は、掘る場所が変わる
- 見つからなかったことも記録する
- 残すのは3つだけ
- 「該当なし」は初出の根拠になる
- 探せる状態を作る
- 現象の言葉を統一する
- 分類は月次の集計にもそのまま使える
- 過去を見ることと、これからを見ることをつなぐ
- 検索で出た工程は、展開の候補になる
- 年に1回、検索できなかった件を数える
- 検索を、日々の運用に組み込む
- 起票の時点で過去の件数が見える形にする
- 対策を決める前にも一度見る
- 新しく入った人ほど、検索が効く
- 探す人を決めない
- 類似不具合の検索でつまずきやすい3つ
- その1:担当者の記憶に頼る
- その2:報告書がファイルで散っている
- その3:似ているのに言葉が違って当たらない
- よくある質問
類似不具合を探す5つの軸
「似た不具合」は、人によって思い浮かべるものが違います。軸を決めておくと、誰がやっても同じ精度で探せます。
| 軸 | 探し方 | 見つかったときの意味 |
|---|---|---|
| 現象 | 「ヒケ」「異物」「寸法外れ」など、起きたことの名前 | 同じ現象。前回の分析がそのまま使える |
| 工程 | 同じ工程で過去に起きたもの | その工程に共通の弱点がある |
| 設備 | 同じ機械・治具・工具 | 設備の劣化や設定を先に疑える |
| 材料・仕入先 | 同じ材料、同じ仕入先のロット | 受入側の問題として切り分けられる |
| 時期 | 同じ月、同じ曜日、同じ直 | 要員や環境など、条件側の問題 |
現象から探すのがいちばん速い
5つのうち、最初に試すのは現象です。同じ現象が過去にあったなら、そのときの原因と対策がそのまま材料になります。他の4つは、現象で見つからなかったときに広げる軸です。
5分で切り上げる
探すのは長くても5分から10分です。それ以上かけても出てこないなら、探せる状態になっていないということなので、探すのをやめて分析に進みます。探せない状態そのものは、別途直す課題として残します。
見つかったときに、まず確かめること
似た記録が見つかっても、同じ不具合とは限りません。現象が同じでも原因が違うことはよくあります。ここを混ぜると、間違った前提で分析が進みます。
| 状態 | 扱い |
|---|---|
| 現象も原因も同じ | 再発。前回の対策が効かなかった理由を掘る |
| 現象は同じだが原因が違う | 別件。前回の記録は参考として残す |
| 現象は違うが原因が同じ | 水平展開の対象だった可能性。範囲の見直しへ |
| 似ているが判断できない | 今回の原因が確定してから、もう一度突き合わせる |
再発だった場合は、掘る場所が変わる
再発と判断したら、掘るのは現象の原因ではなく前回の対策が効かなかった理由です。実施されていなかったのか、実施したが守られなかったのか、原因の特定が違っていたのか。この切り分けは対策後に再発したときで扱っています。
見つからなかったことも記録する
探して何も出てこなかったとき、記録に残らないまま終わりがちです。すると次の担当者が、同じ検索をもう一度します。
残っていない
探したかどうかが分からない。次の人も同じ検索をする。
「初めてのはず」と言い切れない。
1行残っている
「過去3年分、現象『ヒケ』と工程『成形』で検索。該当なし」次の人は範囲を広げるところから始められる。
残すのは3つだけ
手間をかける必要はありません。いつからいつまでを、どの軸で、結果はどうだったかの3つで足ります。1行、20秒の作業です。
「該当なし」は初出の根拠になる
客先へ報告するとき、「過去に同種の事例はありません」と書く場面があります。探した記録が無いままこれを書くと、あとで過去の事例が出てきたときに信用を落とします。探した範囲が残っていれば、その範囲では無かったと正確に書けます。
探せる状態を作る
類似不具合が探せないのは、探し方が悪いのではなく、記録に検索できる分類が付いていないためです。1件あたり10秒の入力で、あとの検索が変わります。
| 付ける分類 | 粒度の目安 | 付けないと |
|---|---|---|
| 現象 | 10〜20種類。増やしすぎない | 言葉が人ごとに違い、検索で当たらない |
| 工程 | 工程表と同じ名前 | 「製造部」では絞れない |
| 設備 | 設備台帳の番号 | 「あの機械」では追えない |
| 製品・品番 | 品番そのまま | 製品群でまとめると個別が見えない |
| 発生/流出の工程 | 両方を別の列で | どこで作り込んだかの傾向が出ない |
現象の言葉を統一する
「ヒケ」「へこみ」「くぼみ」が混在すると、検索で当たりません。使う言葉を10〜20個の一覧にして、そこから選ぶ形にすると揃います。一覧に無い現象が出たら、そのとき追加します。
分類は月次の集計にもそのまま使える
検索のために付けた分類は、月ごとの集計でもそのまま使えます。件数を現象別・工程別に数えると、どこに手を入れるかが決まります。集計の作り方は月次の不具合集計で扱っています。
過去を見ることと、これからを見ることをつなぐ
類似不具合の検索は「すでに起きた場所」を探す作業です。同じ原因が成り立つ「これから起きるかもしれない場所」を探すのが水平展開です。この2つは同じ日にやると効率が良くなります。
| 類似不具合の検索 | 水平展開 | |
|---|---|---|
| 向き | 過去 | これから |
| 探すもの | 同じ現象が起きた記録 | 同じ原因が成り立つ場所 |
| いつやるか | 分析を始める前 | 原因が確定した直後 |
| 成果 | 前回の分析が使える/再発と分かる | 次の不具合を1件減らせる |
検索で出た工程は、展開の候補になる
過去の検索で「同じ現象が別の工程でも起きていた」と分かったら、その工程は水平展開の候補です。検索の結果をそのまま展開の対象一覧に移せるので、二度手間になりません。範囲の決め方は水平展開の進め方にまとめています。
年に1回、検索できなかった件を数える
探したが出てこなかった件が多いなら、分類の付け方に問題があります。年に1回、該当なしで終わった件数と、その理由を見ておくと、記録の作り方を直す材料になります。
検索を、日々の運用に組み込む
類似不具合の検索は、やろうと決めても続きません。手順の中に位置を作ってしまうと、意識せずに回るようになります。
| 組み込む場所 | やること | かかる時間 |
|---|---|---|
| 不具合を起票するとき | 現象の分類を選ぶ。選んだ時点で過去の件数が見える | 10秒 |
| 原因分析を始める前 | 同じ分類の過去案件を開く | 5分 |
| 対策を決めるとき | 過去に同じ対策を打っていないか見る | 3分 |
| 月次の集計のとき | 件数の多い分類を確認する | 集計の中で |
起票の時点で過去の件数が見える形にする
分類を選んだときに、その分類の過去件数が分かると、探しにいかなくても再発かどうかの見当がつきます。表計算でも、分類ごとの件数を集計しておけば実現できます。件数が多い分類が出たら、そこは個別対応ではなく仕組みの問題です。
対策を決める前にも一度見る
過去に同じ対策を打っていて効かなかった、ということがあります。対策の候補が固まった時点で、その対策を過去に打っていないか確認すると、同じ失敗を避けられます。効かなかった記録が残っていれば、そこが手がかりになります。
新しく入った人ほど、検索が効く
経験の長い人は記憶で当たりを付けられますが、新しく入った人にはそれができません。検索できる状態は、経験の差を埋める仕組みでもあります。担当が替わっても調査の質が落ちないという効果は、日々の運用では見えませんが、数年単位では大きく効きます。
探す人を決めない
「検索は品質部門がやる」と決めると、品質部門の手が空くまで止まります。誰でも5分でできる形にしておくのが目標です。分類が付いていて、一覧で絞れるなら、それは達成できます。
類似不具合の検索でつまずきやすい3つ
その1:担当者の記憶に頼る
「前にもあった気がする」で探すと、その人が知っている範囲しか出ません。異動や退職で、その記憶ごと消えます。記録を検索する形にしておけば、誰がやっても同じ結果になります。
その2:報告書がファイルで散っている
案件ごとの報告書が個別のファイルになっていると、横断して探せません。1件1行の一覧を別に持っておくと、検索はその表だけで済みます。詳細が要るときに報告書を開きます。
その3:似ているのに言葉が違って当たらない
同じ現象に違う言葉が付いていると、検索から漏れます。分類の一覧から選ばせる形にするのがいちばん確実ですが、すでに自由記入で積み上がっている場合は、よく使われる言い換えを検索のときに一緒に試すという運用でも拾えます。
探した結果から原因を絞る流れは原因分析の進め方で扱っています。
よくある質問
- Q. 検索は誰の仕事にすべきですか?
- 担当を決めると、その人の手が空くまで止まります。分類が付いていて一覧で絞れる状態にして、誰でも5分でできる形にするのが目標です。起票する人がその場で確認できるのが理想の形です。
- Q. 同じ分類の件数が多いときはどう扱いますか?
- 個別に対応するのではなく、仕組みの問題として扱ってください。件数が多い分類は、その工程や条件に共通の弱点があるということです。1件ずつ是正処置を回すより、工程そのものを見直すほうが早く減ります。
- Q. 類似不具合の検索にはどのくらい時間をかけるべきですか?
- 5分から10分が目安です。それ以上かけても出てこないなら、記録が探せる状態になっていないということなので、いったん分析に進んでください。探せない状態そのものは、別の課題として残します。
- Q. 現象が同じなら再発として扱ってよいですか?
- 原因まで確かめてください。現象が同じでも原因が違うことはよくあります。前回の確定原因を読んで、今回の条件に当てはまるかを突き合わせてから判断します。
- Q. 何年分まで遡って探すべきですか?
- 一律の目安はありません。同じ製品を作り続けているなら3年前後、設備や工法が変わっているなら、変わった時点までで十分です。探した範囲を記録に残しておけば、あとから広げるときの起点になります。
- Q. 不具合の分類はどのくらいの粒度がよいですか?
- 現象は10〜20種類が扱いやすい粒度です。細かくしすぎると入力の負担が増え、粗すぎると絞れません。工程と設備は、工程表や設備台帳と同じ名前・番号を使うと、他の記録とつながります。
- Q. 過去の記録が紙しかない場合はどうしますか?
- すべてを電子化する必要はありません。1件1行の一覧だけを作って、詳細は紙の保管場所を書いておく形でも検索は成り立ちます。まず直近1年分から始めて、必要になったときに遡るのが現実的です。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。