見直しと報告

苦情件数の分析|増えた減ったで終わらせない

公開 2026-08-30 執筆 改善板 編集部

苦情の件数は、月に1件か2件という現場が多くあります。この規模では、前月と比べても偶然の差しか出ません。「今月は増えました」と報告しても、次の手につながりません。

件数が少ないものは、期間を長く取り、分類して読みます。この記事では、苦情件数の分析について、期間の取り方、分類の切り方、そして重さをどう見るかをまとめます。社内で見つけた不具合の集計は月次の不具合集計で扱っています。

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この記事の内容(8項目)

苦情件数は、期間を長く取って読む

件数が少ないものを月次で比べると、1件の増減が50パーセントの変動になります。傾向ではなく偶然を読んでいることになります。

月あたりの件数読む単位比べる相手
10件以上月次前月、前年同月
3〜9件四半期前四半期、前年同期
2件以下半期または年度前年

件数が少ないほど、1件を深く見る

年に10件しか出ないなら、統計として読むより、1件ずつ内容を見るほうが得るものが多くなります。件数の推移は年に1回の報告用として置いておき、日々は個別に対応します。

月次の表は作っておく

読むのは四半期でも、数字は月ごとに入れておきます。年度末にまとめて数え直すと時間がかかります。1か月に1回、数字を入れるだけなら5分です。

ゼロの月も行を残す

苦情がゼロだった月も、行として残します。ゼロが続いていることが分かるので、対策が効いている証拠になります。行を消すと、いつからゼロなのかが分かりません。

分類の切り方

苦情は、社内の不具合とは違う軸で分類します。相手から見て何が問題だったかで分けると、対策の方向が決まります。

分類中身対策の向く先
品質品物そのものの不具合製造・検査の工程
数量数が違う、欠品出荷、在庫の管理
納期遅れた、早すぎた生産計画、輸送
対応連絡が遅い、説明が不十分窓口の運用、期限の管理
書類成績書の不備、記載の誤り書類を作る工程
条件の相違頼んだものと違う受注時の確認

「対応」の苦情を見落とさない

品物に問題が無くても、連絡が遅い、説明が足りないことへの苦情があります。これを品質の苦情と混ぜると、製造の工程を調べても何も出てきません。分けて数えると、窓口の運用に手を入れる根拠になります。

条件の相違も別に数える

「頼んだものと違う」は、品物の不具合ではありません。受注時の確認の問題です。件数が多いなら、受注条件の記録のしかたを見直します。進め方は受注条件の認識違いを防ぐで扱っています。

分類は6つ程度に収める

件数が少ないので、分類を細かくすると各分類が0件か1件になります。6つ程度にしておくと、傾向が読めます。

件数だけでなく、重さを見る

苦情は1件ごとに重さが違います。件数が減っても、重い案件が増えていれば悪化しています。

重さあてはまる案件
相手の生産が止まった/回収が必要/安全に関わる
代替品の手配が必要/書面の回答を求められた
その場で説明して済んだ/次回からの改善で了解を得た

重い案件の割合を見る

全体の件数に対して、重い案件が何割かを見ます。件数が同じでも、重の割合が上がっていれば状態は悪くなっています。割合は四半期か半期で読みます。

重い案件は、個別に振り返る

重の案件は、件数として数えるだけでなく、1件ずつ、なぜ重くなったかを振り返ります。初動が遅れたのか、範囲の特定に時間がかかったのか、そもそも流出させたのか。ここに改善の材料があります。

回答期限を守れたかも数える

苦情の対応で相手が見ているのは、品物だけではありません。約束した回答が期限どおりに返ったかも評価されています。期限を守った割合を数えておくと、対応の質が見えます。管理のしかたはクレームの回答期限にまとめました。

相手別・製品別に見る

件数が少なくても、どこに集中しているかは読み取れます。集中が見えたら、そこに手を打ちます。

集中している場所読み取れることやること
特定の相手その取引の条件が実態と合っていない条件を見直す。窓口の運用を確認
特定の製品その製品の工程に弱点がある工程のリスク洗い出し
特定の時期繁忙期、季節の要因その時期の要員と条件を見直す
特定の工程そこで作り込んでいる発生対策と流出対策を打つ

1社に集中しているとき

特定の相手からの苦情が多いのは、品質が悪いのではなく、要求が高いか、条件がずれている可能性があります。他の相手で問題が出ていないなら、その取引固有の話です。

相手の受入検査の厳しさも影響する

相手が全数検査をしていれば、同じ品質でも苦情の件数は増えます。件数を相手どうしで比べるときは、この差を頭に置きます。件数の多さが、そのまま品質の差ではありません。

製品別に見ると、工程の弱点が出る

特定の製品に集中しているなら、その製品の工程に手を入れます。苦情の分析から、工程のリスク洗い出しにつなぐと、対策が具体になります。進め方は工程ごとのリスク洗い出しで扱っています。

社内の不具合と突き合わせる

苦情の件数だけを見ていても、なぜ流出したかは分かりません。社内の不具合の集計と並べると、検査で止まっているかどうかが見えます。

状態読み取れること
社内の不具合が多く、苦情が少ない検査で止まっている。望ましい状態
社内も苦情も多い発生そのものが多い。工程に手を入れる
社内が少なく、苦情が多い検査で止まっていない。検査の設計に穴
社内も苦情も少ない安定している。またはどちらも拾えていない

3番目がいちばん危ない

社内で見つかる不具合が少ないのに苦情が多い状態は、検査が機能していないということです。検査の項目、頻度、判定基準のどれかに穴があります。

4番目は、拾えていない可能性もある

どちらも少ないのは良い状態ですが、起票の基準が緩くて記録されていないだけのこともあります。現場に聞くと、記録されていない手直しが出てくることがあります。

年に1回、2つの表を並べる

月次では別々に見ていても、年に1回は並べて読みます。この4つの状態のどれにいるかが分かると、次の1年で何に手を入れるかが決まります。

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分析から次の手を決める

苦情の分析は、報告のためだけにやるものではありません。年に1回か2回、次にやることを1つ決めるところまでつなげます。

見えた状態次の手
品質の苦情が多い件数の多い現象を1つ選んで、是正処置に回す
対応の苦情が多い回答期限の管理を見直す。窓口を決める
条件の相違が多い受注時の確認と記録の形を変える
重い案件の割合が上がっている初動の速さを見直す。止める判断の権限を確認
特定の相手に集中その取引の条件を相談する

1つに絞る

複数の手を同時に打つと、どれが効いたか分かりません。次の期は1つと決めて、その効果を見るほうが、結果につながります。

決めたことを、次回の分析で確認する

前回決めたことがどうなったかを、次の分析の冒頭で見ます。やっていなければ、分析そのものが形だけになっています。1行の確認で足ります。

受付の記録がそろっていることが前提

分析の質は、日々の受付記録で決まります。相手の言葉、分類、重さ、回答期限が記録されていることが条件です。記録の残し方はクレームの初動対応で扱っています。

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苦情件数の分析でつまずきやすい3つ

その1:件数の増減だけを報告する

「今期は3件増えました」で終わると、次の手が決まりません。分類、重さ、集中している場所まで読んで、初めて手が打てます。

その2:件数を減らすことが目的になる

件数を減らそうとすると、苦情を苦情として起票しないという動きが起きます。「これは苦情ではなく相談」といった扱いが増えると、記録が実態を映さなくなります。件数は結果として見るものです。

その3:分析はするが、報告先が無い

読んだ結果を誰にも伝えないと、次の期も同じことを繰り返します。年度の報告に1ページ入れるだけで、活動として認識されます。まとめ方は改善実績の報告で扱っています。

苦情の記録に含まれる情報 苦情の記録には、取引先の担当者名や、相手の生産に関する情報が含まれます。集計や分析で共有するときは、必要な範囲を超えて広げないでください。分析に使うのは分類と件数なので、個別の内容は元の記録に残しておけば足ります。

よくある質問

Q. 苦情として数える範囲はどこまでですか?
相手から不満や指摘を受けたものすべてです。「相談」「問い合わせ」として処理すると件数が減りますが、実態が見えなくなります。軽い案件も含めて数え、重さで分けるほうが読める分析になります。
Q. 分析は誰が行うべきですか?
数える作業は誰でもかまいませんが、読んで次の手を決める場には、営業と製造の両方を入れてください。苦情には品物の話と対応の話が混ざるため、片方だけで読むと打つ手が偏ります。
Q. 苦情件数はどのくらいの期間で比べるべきですか?
月あたりの件数によります。10件以上なら月次、3〜9件なら四半期、2件以下なら半期か年度です。件数が少ないものを月次で比べると、1件の増減が大きな変動に見えて、偶然を読むことになります。
Q. 苦情の分類はいくつが適当ですか?
6つ程度です。品質、数量、納期、対応、書類、条件の相違。件数が少ないので、細かくすると各分類が0件か1件になって傾向が読めません。
Q. 品物に問題が無い苦情はどう扱いますか?
「対応」や「条件の相違」として別に数えてください。連絡が遅い、説明が足りないという苦情を品質と混ぜると、製造の工程を調べても何も出てきません。分けて数えると、窓口の運用や受注時の確認に手を入れる根拠になります。
Q. 件数が減っていれば良い状態と言えますか?
重い案件の割合も見てください。件数が減っても、相手の生産が止まった、回収が必要になったといった重い案件が増えていれば、状態は悪くなっています。
Q. 特定の取引先からの苦情が多いのですが。
品質が悪いとは限りません。要求が高い、条件がずれている、相手の受入検査が厳しいといった理由があります。他の相手で問題が出ていないなら、その取引固有の話として条件を見直す相談をしてください。
Q. 社内の不具合の集計と一緒にすべきですか?
月次では分けて、年に1回は並べて読んでください。社内で見つかる不具合が少ないのに苦情が多い状態は、検査が機能していないということです。この読み分けは、並べないとできません。
Q. 苦情件数を減らすことを目標にしてよいですか?
目標にすると、苦情を苦情として起票しない動きが起きます。「これは苦情ではなく相談」といった扱いが増えると、記録が実態を映さなくなります。件数は結果として見て、目標は重い案件の割合や回答期限の遵守率に置くほうが健全です。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。