新規案件のリスク確認|受ける前に見る5つ
不具合の記録を並べると、初めてやることが重なった案件に集中していることがよくあります。新しい客先、新しい材料、新しい工法。1つなら対応できても、3つ重なると想定外が出ます。
一般には、こうした案件は受ける前に条件を確認することで、あとの手戻りを減らせます。この記事では、新規案件のリスク確認について、見る5つの観点、初めての条件の数え方、そして条件付きで受ける形をまとめます。
この記事の内容(8項目)
- 新規案件で見る5つ
- 「初めて」がいくつあるかを数える
- 検査の項目がいちばん抜ける
- 見積もりの前に見る
- 条件のあいまいさを潰す
- 外観の基準は見本で決める
- 決まっていないことを、決まっていないと書く
- 確認の期限を切る
- 断る判断、条件付きで受ける判断
- 条件付きが、いちばん現実的
- 断る基準を先に決めておく
- 受けると決めたら、前向きに準備する
- 初回の立ち上げで見ること
- 時間を測っておく
- 作業者に聞く
- 強化をいつまで続けるか決める
- 案件が始まったあとの見直し
- 拾えなかったリスクを記録する
- 出なかったリスクも記録する
- 既存工程のリスク一覧に合流させる
- 誰が確認するか
- 15分の打ち合わせで足りる
- 誰が最終的に決めるかを決めておく
- 確認したことを記録に残す
- 新規案件のリスク確認でつまずきやすい3つ
- その1:受注が決まってから確認する
- その2:確認項目が多すぎて続かない
- その3:リスクを挙げただけで終わる
- よくある質問
新規案件で見る5つ
確認する項目を5つに絞ると、見積もりの段階で回せます。全部を細かく見るより、5つを毎回見るほうが続きます。
| 観点 | 見ること | 危ないサイン |
|---|---|---|
| 相手 | 初めての客先か。品質要求の水準 | 要求が書面で示されない。窓口が不明確 |
| もの | 初めての材料・形状・寸法 | 社内に実績が無い。測定器が無い |
| 作り方 | 初めての工法・設備・外注先 | 試作をしていない。条件が決まっていない |
| 量と納期 | ロットの大きさ、納期の余裕 | 初回から量産。試作の時間が無い |
| 検査 | 合否の判定方法。測定器の有無 | 基準が「良品と同等」など曖昧 |
「初めて」がいくつあるかを数える
5つの観点のうち、いくつが初めてかを数えます。3つ以上が初めてなら、想定外が出る前提で準備します。1つだけなら、通常の変更点管理で足ります。
検査の項目がいちばん抜ける
作れるかどうかは検討しても、作ったものをどう合否判定するかは見落とされます。測定器が無い、基準が決まっていない、という状態で量産に入ると、初回の出荷で止まります。
見積もりの前に見る
受注が決まってから確認すると、断れない状態で問題が見つかります。見積もりを出す前に5つを見ると、条件や価格に反映できます。5分から10分で済みます。
条件のあいまいさを潰す
新規案件で後から問題になるのは、決まっていなかった条件です。図面に書いていない項目こそ、先に確認します。
| 確認する項目 | あいまいなまま進めると |
|---|---|
| 外観の基準 | 初回の出荷で「これでは受け取れない」と言われる |
| 検査の範囲と方法 | 全数と思っていたら抜取だった、またはその逆 |
| 付属する書類 | 成績書やミルシートの要否が直前に判明する |
| 梱包と表示 | 指定があったのに知らずに出荷する |
| 納期の起点 | 出荷日か到着日かで数日ずれる |
| 変更時の連絡 | 材料を替えたら承認が必要だった |
外観の基準は見本で決める
「きれいに」「傷が無いこと」では、初回の出荷で必ず揉めます。限度見本を作って合意するのが確実です。試作の段階で相手と一緒に決められると、あとが楽になります。見本の扱いは限度見本の管理で扱っています。
決まっていないことを、決まっていないと書く
すべてを確定させてから始められる案件はまれです。未確定の項目を一覧にしておくと、あとで問題になったときに「そこは未確定だった」と示せます。空欄にすると、決まっていたことになります。記録の残し方は受注条件の認識違いを防ぐにまとめました。
確認の期限を切る
未確定の項目には、いつまでに決めるかの期限を入れます。期限が無いと、量産が始まるまで決まりません。
断る判断、条件付きで受ける判断
確認の結果、そのままでは受けられないことがあります。断る以外に、条件を付けて受ける形があります。
| 判断 | あてはまる場面 |
|---|---|
| そのまま受ける | 初めての要素が1つ以下。実績のある範囲 |
| 条件付きで受ける | 試作を先にする、初回ロットを小さくする、納期に余裕をもらう |
| 価格を見直して受ける | 検査の負担が大きい、測定器の購入が要る |
| 断る | 安全に関わる要求に応えられない。設備が無い |
条件付きが、いちばん現実的
断るのは営業上難しく、そのまま受けるのは危ない。その間に「条件付き」があることを共有しておくと、判断が現実的になります。試作を1回挟むだけで、多くの問題は事前に見つかります。
断る基準を先に決めておく
案件が来てから断るかどうかを議論すると、営業と製造で対立します。「これは受けない」という線を先に決めておくと、その場の議論になりません。安全に関わる要求、必要な設備が無い工程などが該当します。
受けると決めたら、前向きに準備する
リスクを挙げるのは、断るためではなく準備すべきことを洗い出すためです。挙げたリスクに対して、誰が何をいつまでにやるかを決めれば、受けられる案件は増えます。
初回の立ち上げで見ること
受けたあと、初回の生産で確認を厚くします。変更点管理の初品確認と同じ考え方です。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 試作・初品を全数見る | 通常が抜取でも、初回は全数か多めの抜取 |
| 項目を増やして測る | 図面の指示以外に、心配な特性も測っておく |
| 時間を測る | 見積もりの前提と合っているか |
| 作業者に聞く | やりにくい点、迷った点 |
| 相手に見てもらう | 初回だけでも、現物を確認してもらう |
時間を測っておく
見積もりの前提と実際の作業時間がずれていると、続けるほど赤字になります。初回に測っておくと、次回の見積もりが正確になります。ずれが大きいなら、価格の見直しを相談する材料になります。
作業者に聞く
初回に「やりにくい」と感じた点は、量産でそのまま不具合につながります。初回の日に10分聞くだけで、あとの手戻りが減ります。
強化をいつまで続けるか決める
初回の確認強化は、いつまで続けるかを決めておきます。「3ロット連続で問題なければ通常に戻す」といった形です。決めないと、居座るか、いつのまにか消えます。
案件が始まったあとの見直し
受ける前に見たリスクは、始まってから変わります。初回のあとに1回見直すと、実態に合った形になります。
| 見直すタイミング | 見ること |
|---|---|
| 初回の生産後 | 挙げたリスクが実際に出たか。出なかったか |
| 3か月後 | 安定したか。強化した確認を通常に戻せるか |
| 不具合が出たとき | 受ける前の確認で拾えていたか |
| 条件が変わったとき | 材料、工法、量、納期の変更 |
拾えなかったリスクを記録する
実際に出た不具合が、受ける前の確認で拾えていなかったなら、確認の項目が足りていないということです。次の案件から、その項目を追加します。5つの観点は、こうして育てていきます。
出なかったリスクも記録する
心配していたが問題にならなかった項目も残しておくと、次の似た案件で過剰に構えずに済みます。経験が記録として積み上がります。
既存工程のリスク一覧に合流させる
案件が量産に入ったら、その工程は既存の工程になります。新規案件のリスク一覧から、工程別のリスク一覧へ移すと、以後は通常の見直しに乗ります。工程別の洗い出しは工程ごとのリスク洗い出しで扱っています。
誰が確認するか
新規案件のリスク確認は、営業だけでも製造だけでもできません。短時間でよいので、複数の目で見ます。
| 役割 | 見るところ |
|---|---|
| 営業 | 相手の要求、納期、価格、変更時の取り決め |
| 製造 | 作れるか、時間はどれだけかかるか、設備は足りるか |
| 品質 | 合否をどう判定するか、測定器はあるか、記録は何を残すか |
| 購買 | 材料が手に入るか、外注先はあるか |
15分の打ち合わせで足りる
大がかりな会議は要りません。5つの観点を1枚の紙で回して、15分で確認する形にすると続きます。全員が集まれないなら、紙を回して書き込む形でも成立します。
誰が最終的に決めるかを決めておく
意見が分かれたときに決める人が決まっていないと、案件が宙に浮きます。受注の可否を決める人を1人決めておくと、その場で結論が出ます。
確認したことを記録に残す
誰が何を確認したかを残しておくと、あとで問題が出たときに、どこで見落としたかが分かります。責任追及のためではなく、次の案件で同じ見落としをしないためです。
新規案件のリスク確認でつまずきやすい3つ
その1:受注が決まってから確認する
断れない状態で問題が見つかると、無理をして受けることになります。見積もりを出す前に5つを見るのが原則です。5分から10分で済みます。
その2:確認項目が多すぎて続かない
30項目のチェックリストを作ると、最初の数件で使われなくなります。5つに絞って毎回見るほうが、実際に効きます。足りない項目は、問題が出たときに追加します。
その3:リスクを挙げただけで終わる
心配なことを挙げても、誰が何をするかが決まっていなければ何も変わりません。挙げたリスクのうち上位2つに、担当と期限を付けるところまでやります。
よくある質問
- Q. 既存の相手からの新製品も対象ですか?
- 対象です。相手は既存でも、もの・作り方・検査が新しければリスクは同じです。5つの観点のうち「相手」だけが既存になるので、残りの4つを見てください。慣れた相手ほど確認が省かれがちな点に注意が要ります。
- Q. 新規案件のリスク確認はいつ行うべきですか?
- 見積もりを出す前です。受注が決まってから確認すると、断れない状態で問題が見つかります。5つの観点を見るだけなら5分から10分で済むので、見積もりの段階で回せます。
- Q. 確認する項目はいくつが適当ですか?
- 5つが目安です。相手、もの、作り方、量と納期、検査。30項目のチェックリストを作ると、最初の数件で使われなくなります。足りない項目は、問題が出たときに追加してください。
- Q. 「初めて」がいくつあると危ないですか?
- 3つ以上重なると、想定外が出る前提で準備してください。1つだけなら通常の変更点管理で足ります。数えること自体が、案件の性格を把握する近道になります。
- Q. リスクが高い案件は断るべきですか?
- 断る以外に、条件を付けて受ける形があります。試作を先にする、初回ロットを小さくする、納期に余裕をもらう、価格を見直す。断るのは、安全に関わる要求に応えられない、必要な設備が無いといった場合です。
- Q. 外観の基準はどう決めればよいですか?
- 限度見本を作って相手と合意するのが確実です。「きれいに」「傷が無いこと」では、初回の出荷で必ず揉めます。試作の段階で相手と一緒に決められると、あとが楽になります。
- Q. 確認は誰が行うべきですか?
- 営業、製造、品質、購買がそれぞれの観点で見てください。大がかりな会議は要りません。5つの観点を1枚の紙で回して15分で確認する形にすると続きます。意見が分かれたときに決める人も、先に決めておいてください。
- Q. 初回の生産で気をつけることは?
- 通常が抜取でも初回は全数か多めの抜取で見て、図面の指示以外に心配な特性も測っておいてください。あわせて作業時間を測ると、見積もりの前提と合っているかが分かります。強化をいつまで続けるかも決めておきます。
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