属人化の対策|1人しかできない仕事を洗い出す
「あの人が休むと止まる」という作業は、どの職場にもあります。普段は問題になりませんが、急な休みや異動が重なったときに、そこから崩れます。
属人化の対策というと、マニュアルを作る話になりがちです。ただ、マニュアルを作っても解けない属人化があります。この記事では、属人化の対策を、洗い出しの手順、優先順位の付け方、そして代われる人の作り方の順にまとめます。
この記事の内容(8項目)
- 属人化の対策は、洗い出しから
- 作業の粒度をそろえる
- 本人に書いてもらわない
- 「できる」の定義を決める
- 優先順位の付け方
- 頻度が低くても、影響が大きいものは上げる
- 上位3つだけに絞る
- 1年で3つ減れば十分
- マニュアルだけでは解けない
- 判断が要る作業は、基準を言葉にする
- 関係で成り立っている仕事
- 権限が要る作業は、権限を移す
- 代われる人の作り方
- 定期的に担当してもらう
- 教える側の時間を確保する
- 覚えた記録を残す
- 不在のときにどう回すか
- 「その日はやらない」も選択肢
- 計画的な休みは、前後に寄せる
- 急な休みへの備えが本命
- 属人化が生まれ続ける理由
- 新しい仕事こそ2人で始める
- 「速さ」を優先しすぎない
- 手順は始めた月に書く
- 属人化の対策でつまずきやすい3つ
- その1:洗い出して終わる
- その2:本人が抱えたがる
- その3:教える時間が取れない
- よくある質問
属人化の対策は、洗い出しから
どの作業が1人しかできないかは、聞かないと分かりません。1つずつ聞くのではなく、作業を並べて印を付ける形にすると、30分で終わります。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | その部署の作業を並べる。粒度は「日常業務の単位」で15〜30個 |
| 2 | 作業ごとに、できる人の名前を書く |
| 3 | できる人が1人の作業に印を付ける |
| 4 | 印の付いた作業に、影響度と頻度を付ける |
| 5 | 上位から手を打つ |
作業の粒度をそろえる
「製造」のような大きな単位だと属人化が見えず、「ボタンを押す」まで細かいと数が多すぎます。日常の会話で使う単位にすると、15個から30個に収まります。
本人に書いてもらわない
1人しかできない作業を持っている本人は、それを守りたい気持ちが働くことがあります。周りの人に「この作業は誰ができますか」と聞くほうが、実態が出ます。
「できる」の定義を決める
「やったことがある」と「1人でできる」は違います。1人で、通常の時間内に、判断を含めてできるを基準にすると、実態に合います。この基準で見ると、できる人が思ったより少ないことが分かります。
優先順位の付け方
1人しかできない作業を全部なくすのは無理です。止まったときの影響で順位を付けます。
| 優先度 | あてはまる作業 | 対応の期限 |
|---|---|---|
| 高 | 毎日発生する。止まると生産か出荷が止まる | 今期中に代われる人を作る |
| 中 | 週や月に発生する。止まると後工程が困る | 来期までに手順を残す |
| 低 | 年に数回。止まっても待てる | 手順のメモだけ残す |
頻度が低くても、影響が大きいものは上げる
年に1回しかやらない作業でも、その日に止まると困るもの(決算、監査、更新手続き)は優先度を上げます。頻度だけで判断すると、こうした作業が漏れます。
上位3つだけに絞る
印が10個付いても、一度に手を打てるのは2つか3つです。上位3つに絞って、今期はそれだけやると決めると、実際に動きます。全部に手を付けると、どれも中途半端になります。
1年で3つ減れば十分
属人化は一気に解けません。年に2つか3つずつ減らすペースが現実的です。数年続けると、大きく変わります。
マニュアルだけでは解けない
属人化の対策としてマニュアルを作っても、読んでもできない作業があります。作業の性格によって、打つ手が変わります。
| 作業の性格 | マニュアルで解けるか | 打つ手 |
|---|---|---|
| 手順が決まっている | 解ける | 手順書を作る。書けば渡せる |
| コツが要る | 一部解ける | 手順書+実際にやって見せる。動画も有効 |
| 判断が要る | 解けない | 判断の基準を言葉にする。見本を作る |
| 関係で成り立っている | 解けない | 相手側の窓口を複数にする。同席して引き継ぐ |
| 権限が要る | 解けない | 権限を移す、または代行の仕組みを作る |
判断が要る作業は、基準を言葉にする
「見れば分かる」で済ませている判断は、渡せません。合否の基準を数値か見本にすると、初めての人でも判断できます。見本の作り方は限度見本の管理で扱っています。
関係で成り立っている仕事
特定の取引先と、特定の担当者だけで話が通っている状態です。相手側の窓口を複数にする、同席する機会を作るところから始めます。書類では引き継げません。
権限が要る作業は、権限を移す
承認や決裁が要る作業は、手順を書いても代われません。代行できる範囲を決めて、権限そのものを整理します。ここは仕組みの話なので、上位の判断が要ります。
代われる人の作り方
手順を渡しただけでは、代われるようにはなりません。実際にやってもらう機会を作るのが唯一の方法です。
定期的に担当してもらう
1回できたとしても、半年やらなければ忘れます。月に1回はその人が担当するという形にすると、維持されます。ここまでやらないと、いざというときに使えません。
教える側の時間を確保する
教えるには時間がかかり、教える側の作業も遅くなります。その時間を業務として認めるのが前提です。認めないと、忙しさを理由に先送りされ続けます。
覚えた記録を残す
誰がどの作業をできるようになったかを、洗い出しの表に反映します。できる人の欄が2人になった時点で、その作業の印が消えます。進み具合が目に見えると、続きます。
不在のときにどう回すか
属人化が解けるまでの間も、休みは来ます。いますぐ代われなくても、止まらない形を用意しておきます。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 連絡先を決める | 判断が要るとき、誰に連絡するか。本人でもよい |
| やらないと決める | その日はやらない、と決めておく。翌日に回す |
| 簡易な手順を置く | 完全でなくてよい。最低限の動作だけ |
| 予定を共有する | 休む日が分かっていれば、前後に寄せられる |
「その日はやらない」も選択肢
すべてを代わりにやる必要はありません。翌日に回せるものは回すと決めておけば、無理に代わって間違えるより安全です。回せないものだけを、代われるようにします。
計画的な休みは、前後に寄せる
有給や出張が分かっているなら、その作業を前後にずらすだけで問題が消えます。予定を共有していれば、この調整ができます。
急な休みへの備えが本命
計画的な休みは調整できますが、急な休みは調整できません。属人化の対策が本当に効くのは、急な休みのときです。優先順位を付けるときは、この場面を想定します。応急処置の引継ぎと同じ考え方が使えます。詳しくは応急処置の引継ぎで扱っています。
属人化が生まれ続ける理由
一度解消しても、放っておくとまた属人化します。生まれる仕組みのほうに手を打たないと、いたちごっこになります。
| 生まれる理由 | 手の打ち方 |
|---|---|
| 新しい仕事を、できる人に振り続ける | 新規の仕事は、意識して2人に割り当てる |
| できる人が抱えたほうが速い | 速さより、代われることを優先する期間を作る |
| 教える時間が業務と認められていない | 教育の時間を業務時間に入れる |
| 手順が書かれないまま定着する | 新しい作業は、始めた月に手順を書くと決める |
新しい仕事こそ2人で始める
新しい業務が発生したとき、いちばん手が空いている人1人に任せると、そこから属人化が始まります。最初から2人で始めると、あとから代われる人を作る手間が要りません。
「速さ」を優先しすぎない
できる人がやるほうが速いのは事実です。ただ、それを続けると誰も代われなくなります。期間を区切って、遅くなることを許すと決めないと、育ちません。
手順は始めた月に書く
作業が定着してから手順を書こうとすると、暗黙のやり方が積み上がって書けなくなります。始めた月に粗くても書いておくと、あとの更新で済みます。
属人化の対策でつまずきやすい3つ
その1:洗い出して終わる
一覧を作ると達成感がありますが、そこで止まると翌年また同じ一覧を作ることになります。上位3つに担当と期限を付けるところまでやります。
その2:本人が抱えたがる
自分しかできない状態が、その人の存在価値になっていることがあります。代われる人ができても、その人の評価が下がらないことを伝えるのが先です。教えたこと自体を評価する形にすると、進みます。
その3:教える時間が取れない
教育の時間が業務として認められていないと、いつまでも先送りされます。月に2時間、と決めて予定に入れるだけで動き出します。まとまった時間が取れないなら、30分ずつに割ります。
よくある質問
- Q. 属人化は必ず解消すべきですか?
- すべてを解消するのは無理です。止まったときの影響が大きいものから順に、年に2つか3つずつ減らすのが現実的です。影響が小さく、止まっても待てる作業は、手順のメモだけ残しておけば足ります。
- Q. 洗い出しはどのくらいの頻度で行いますか?
- 年に1回で足ります。人の異動があった直後に見直すと、実態に合った一覧になります。前回の表に、できる人の欄を書き足していく形にすると、進み具合も同時に見えます。
- Q. 属人化している作業はどう洗い出しますか?
- 作業を15〜30個並べて、それぞれできる人の名前を書き、1人しかいない作業に印を付けてください。1つずつ聞くより速く、30分で終わります。本人に書いてもらうより、周りの人に聞くほうが実態が出ます。
- Q. 「できる」の基準はどう決めますか?
- 1人で、通常の時間内に、判断を含めてできることを基準にしてください。「やったことがある」と「1人でできる」は違います。この基準で見ると、できる人が思ったより少ないことが分かります。
- Q. マニュアルを作れば属人化は解消しますか?
- 手順が決まっている作業は解けますが、判断が要る作業、関係で成り立っている仕事、権限が要る作業は解けません。判断が要るものは基準を数値か見本にし、関係で成り立つものは同席の機会を作り、権限が要るものは権限そのものを整理してください。
- Q. 一度教えたのに、いざというときにできません。
- 1回できただけでは維持されません。月に1回はその人が担当する、というところまで進めて初めて代われます。教えた記録だけ残して満足すると、半年後には忘れられています。
- Q. 属人化した作業が多すぎて手が回りません。
- 上位3つに絞ってください。止まったときの影響が大きいものから順に、年に2つか3つずつ減らすペースが現実的です。数年続けると大きく変わります。
- Q. 本人が仕事を抱え込んで手放しません。
- 自分しかできない状態が存在価値になっていることがあります。代われる人ができても評価が下がらないことを先に伝えてください。教えたこと自体を評価の対象にすると進みます。
- Q. 一度解消してもまた属人化します。
- 新しい仕事をできる人に振り続けるのが主な原因です。新規の業務は意識して2人に割り当て、始めた月に粗くても手順を書く、という運用にすると、生まれ方が変わります。
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