出荷停止の判断基準|回収の範囲をどこまで広げるか
不具合が客先で見つかったとき、いちばん重い判断が出荷停止です。止めれば納期に影響し、止めなければ被害が広がります。しかも判断は、原因が分かる前にしなければなりません。
一般には、出荷停止の判断は原因ではなく、疑わしい範囲で行います。確認できたものから戻すほうが、あとから追いかけるより早く終わるためです。この記事では、出荷停止の判断基準と、回収の範囲をどう決めるか、連絡の順番までをまとめます。
この記事の内容(8項目)
- 出荷停止の判断は、疑わしい範囲で引く
- 止める単位を先に決めておく
- 社内在庫と出荷済みを分けて考える
- 社内在庫は、迷ったら止める
- 出荷済みは、止めるより先に連絡する
- 出荷停止で押さえる対象の洗い出し
- 抜けやすい置き場所
- 外注先にも同時に連絡する
- 連絡の順番を決めておく
- 客先への連絡は、範囲が固まる前でもよい
- 連絡した相手と時刻を記録する
- 出荷停止をいつ解除するか
- 部分解除を使う
- 手直し品は、通常品と区別できる形で戻す
- 解除した日と根拠を残す
- 止めるコストと、止めないコストを並べる
- 過去の案件で実額を出しておく
- 判断が遅れるほど、選べる手が減る
- 止めた判断が空振りでも責めない
- 出荷停止の判断でつまずきやすい3つ
- その1:判断できる人がその場にいない
- その2:範囲を狭く取りすぎる
- その3:止めた対象が現物で分からない
- よくある質問
出荷停止の判断は、疑わしい範囲で引く
止める範囲を「確認できた範囲」で引くと、確認が終わるまで何も止まりません。疑わしい範囲で止めて、確認できたものから戻すという順番にすると、動き出しが早くなります。
確認してから止める
確認に半日から数日かかる。その間も出荷は続く。
あとから出荷先を追いかけることになる。
範囲が時間とともに広がる。
疑わしい範囲で止める
その場で止まる。確認できたものから順に戻す。
納期の調整は必要になる。
範囲が時間とともに狭まる。
止める単位を先に決めておく
止める単位が決まっていないと、その場で範囲の議論が始まります。あらかじめ次の単位を決めておくと、判断が早くなります。
| 止める単位 | 使う場面 |
|---|---|
| 同一ロット | 材料や製造条件が原因として疑われるとき |
| 同一設備・同一ライン | 設備や治具が原因として疑われるとき |
| 同一日・同一直 | 作業条件や人が原因として疑われるとき |
| 同一仕入先ロット | 受入品が原因として疑われるとき |
社内在庫と出荷済みを分けて考える
出荷停止の判断は、実際には2つの判断に分かれます。難しさがまったく違うので、分けて扱います。
| 社内在庫の保留 | 出荷済みの回収・使用停止 | |
|---|---|---|
| 誰の判断か | 製造・品質の責任者 | 経営判断になることが多い |
| かかる時間 | その場でできる | 連絡だけで半日から数日 |
| 影響 | 納期の調整 | 取引先の生産、費用、信用 |
| 迷ったら | 止める。戻すのは簡単 | まず連絡する。判断は相手と一緒に |
社内在庫は、迷ったら止める
社内で止めるコストは、納期の調整に限られます。戻すのも簡単です。迷っている時間のほうが高くつくので、先に止めてから確認します。
出荷済みは、止めるより先に連絡する
すでに出ているものについては、「回収するかどうか」を自社だけで決める前に、相手に状況を伝えるほうが結果が良くなります。相手の在庫がまだ使われていないのか、すでに組み込まれているのかで、取るべき手が変わるためです。連絡が遅れるほど、選べる手が減ります。
出荷停止で押さえる対象の洗い出し
止める判断をしたら、対象を特定します。ここで漏れると、あとから「まだ出ていた」が出ます。
抜けやすい置き場所
倉庫の在庫は数えられますが、次の場所は数え漏れます。洗い出しの手順に、置き場所の一覧を入れておくと抜けません。
- 工程内の仕掛品と、次工程の手前に積んである分
- 検査待ち・保留品の棚
- サンプルとして先方に渡した分
- 社内で試作や教育に使っている分
- 外注先に預けている支給品
外注先にも同時に連絡する
加工を外に出している場合、相手の工程にも自社の品が流れています。止める連絡は、社内と外注先へ同時に出します。順番に伝えると、その間に外注先から出荷されます。伝え方と記録の残し方は外注先への品質連絡で扱っています。
連絡の順番を決めておく
止める判断をしてから連絡までの間に時間が空くと、その間の出荷は止まりません。誰に、どの順で、何を伝えるかを先に決めておきます。
| 順 | 連絡先 | 伝える内容 |
|---|---|---|
| 1 | 出荷・物流の担当 | 止める対象。いますぐ出荷を保留 |
| 2 | 製造・工程の責任者 | 作るのを止めるか、条件を変えて続けるか |
| 3 | 外注先・協力会社 | 該当ロットの加工・出荷の保留 |
| 4 | 営業・窓口 | 客先への連絡内容のすり合わせ |
| 5 | 客先 | 状況、対象範囲、次の連絡の時期 |
客先への連絡は、範囲が固まる前でもよい
範囲が確定してから連絡しようとすると、遅くなります。「調査中で、対象範囲は明日までに確定します」でも先に伝えるほうが、相手は動けます。伝えるべきは、いま分かっていることと、次に連絡する時期の2つです。
連絡した相手と時刻を記録する
誰にいつ伝えたかが残っていないと、「聞いていない」という話が出たときに確かめられません。連絡先ごとに、伝えた時刻と担当者名を残します。電話で伝えたときは、あとから要点をメールで送っておくと記録になります。
出荷停止をいつ解除するか
止めるより難しいのが、解除の判断です。条件を決めずに止めると、いつまでも動かせません。
| 解除の条件 | 確認すること |
|---|---|
| 全数確認して良品と判定した | 確認の方法と判定基準が記録に残っているか |
| 疑わしい条件に該当しないと確認した | 製造記録で、条件が外れていることを示せるか |
| 選別・手直しをして基準を満たした | 手直し品であることが分かる形になっているか |
| 客先の了解を得た | 誰の了解を、いつ、どの形で得たか |
部分解除を使う
止めた範囲を全部いっぺんに戻す必要はありません。確認が終わったロットから順に戻すほうが、納期への影響が小さくなります。表の上で、対象ごとに状態を持たせておくと、どこまで戻したかが一目で分かります。
手直し品は、通常品と区別できる形で戻す
選別や手直しをして基準を満たしたものは、通常品と同じ扱いに見えてしまいます。手直しを経た品であることが、あとから分かる形にしてから戻します。ロットの枝番を分ける、出荷記録に注記を入れるといった方法があります。次に同じ客先から連絡が来たとき、手直し品かどうかで調べ方が変わります。
解除した日と根拠を残す
解除の記録が無いと、あとで「あのロットは確認済みだったか」が分からなくなります。解除日、確認方法、判定した人の3つを残しておけば足ります。再発したときに、解除の判断が正しかったかを検証できます。
止めるコストと、止めないコストを並べる
出荷停止の判断が遅れるのは、止めることのコストだけが目に見えていて、止めなかった場合のコストが誰にも見えていないためです。両方を並べると、判断が早くなります。
止めるコスト
納期の遅れと、その調整。代替品の手配費用。
確認作業の工数。
その場で金額が出る。だから重く感じる。
止めなかったコスト
流出が広がったぶんの回収費用。相手の生産を止めた損害。
取引条件の見直し、監査の増加。
あとから来る。だから軽く見える。
過去の案件で実額を出しておく
止めなかったことで広がった案件が過去にあるなら、そのときにかかった費用を1度だけ集計しておくと、次の判断で使えます。回収の運賃、選別の工数、代替品の費用、訪問の回数。桁が分かるだけで十分です。
判断が遅れるほど、選べる手が減る
時間が経つと、社内在庫は出荷され、出荷済みの品は相手の工程に組み込まれます。1日遅れるごとに、止められる範囲が狭くなり、費用は増えます。「もう少し情報を集めてから」という判断は、集めている間に選択肢を失います。
止めた判断が空振りでも責めない
疑わしい範囲で止めた結果、問題が無かったということは起こります。これを失敗として扱うと、次から止められなくなります。空振りは正しい判断の副作用として受け止める、という共有が要ります。
出荷停止の判断でつまずきやすい3つ
その1:判断できる人がその場にいない
止める権限を持つ人が不在だと、判断が翌日に持ち越されます。止める判断だけは代行できる人を決めておくと、この待ち時間が消えます。戻す判断は慎重に行えばよく、止めるほうは元に戻せます。
その2:範囲を狭く取りすぎる
納期への影響を心配して範囲を絞ると、あとから2件目、3件目が出ます。範囲を広げ直すたびに、客先への連絡も繰り返すことになり、信用の損失が積み上がります。1回で広めに取って、確認しながら戻すほうが結果的に軽く済みます。
その3:止めた対象が現物で分からない
記録の上では保留になっているのに、現物に表示が無いと出荷されます。表示と記録の両方をそろえるのが原則です。表示は、通常の作業動線から見て気づく場所に置きます。
止めたあとの原因究明は原因分析の進め方、社内での案件管理は不具合の初動対応で扱っています。
よくある質問
- Q. 出荷停止の連絡はどこまでの範囲に出すべきですか?
- 出荷と物流、製造の責任者、外注先には同時に出してください。順番に伝えると、その間に外注先から出荷されます。営業と客先への連絡は、伝える内容をすり合わせてから出すほうが混乱しません。
- Q. 止めたことを現物にどう表示しますか?
- 通常の作業動線から見て気づく場所に表示してください。記録の上では保留になっているのに現物に表示が無いと、出荷されます。表示と記録の両方をそろえるのが原則です。
- Q. 出荷停止は誰が判断すべきですか?
- 社内在庫の保留は製造や品質の責任者、出荷済みの回収は経営判断になることが多くあります。大事なのは役職より、止める判断をその場でできる人が決まっていることです。不在時に代行できる人もあわせて決めておいてください。
- Q. 止める範囲はどう決めればよいですか?
- 原因が分かる前なので、疑わしい範囲で引きます。同一ロット、同一設備、同一日・同一直、同一仕入先ロットのどれかを単位にして、確認できたものから戻すという順番が扱いやすくなります。
- Q. 客先への連絡は範囲が確定してからのほうがよいですか?
- 確定を待たずに連絡したほうが、相手は動けます。いま分かっていることと、次に連絡する時期の2つを伝えれば十分です。連絡が遅れるほど、相手が選べる手が減ります。
- Q. 出荷停止を解除する条件はどう決めますか?
- 全数確認して良品と判定した、疑わしい条件に該当しないと確認できた、選別や手直しで基準を満たした、客先の了解を得た、のいずれかです。確認の方法と判定した人を記録に残し、確認が終わったロットから順に戻す部分解除が現実的です。
- Q. 回収が必要かどうかの基準はありますか?
- 社内基準としては、安全に関わるか、相手の生産に影響するか、そのまま使うと不具合が顕在化するか、で判断している例が多くあります。製品によっては法令に基づく報告や公表が求められる場合があるため、該当するかは所管の行政庁にご確認ください。
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