AQLとは?「この率まで不良を出してよい」ではない
AQLは、抜取検査でロットの合否を決めるときに使う水準です。日本産業規格にも検査の手順が定められていて、取引先との取り決めに出てくることがあります。
この言葉でいちばん多い取り違えが1つあります。AQLは「この率までなら不良を出してよい」という許可ではありません。ここを取り違えると、社内の目標が緩む方向に働きます。この記事では、仕組みと水準の決め方をまとめます。
この記事の内容(8項目)
AQLは、ロットを通すか止めるかの物差し
抜取検査は、ロットの中から決まった数だけ取り出して調べ、その結果でロット全体の合否を決める方法です。全部を調べないので、判断には必ず不確かさが残ります。
AQLは、この不確かさをどう扱うかを決めるための水準です。「このくらいの品質のロットなら、ほぼ合格として通す」という線を先に決めておき、そこから取り出す数と合格の判定数を導きます。
合否は「ロット」に対して出る
抜取検査が判定するのは、取り出した数個ではなくロット全体です。合格したロットの中に不適合品が混ざっていることはあります。抜取である以上、そこはゼロにできません。
だから、抜取検査で通したものを「全部良品」と説明してはいけません。顧客への説明でここを混同すると、後で大きな行き違いになります。
AQLは、許してよい不良率ではない
ここがこの記事の本題です。AQLを「この率まで不良を出してよい」と読むと、社内の運用が2つの方向で崩れます。
| 取り違え | 起きること |
|---|---|
| AQLを社内の目標にする | その率までなら改善しなくてよい、という空気になる |
| AQL以下だから問題なしと報告する | 不具合が出ているのに、原因が調べられない |
AQLは、ロットを通すか止めるかを機械的に決めるための線であって、品質の目標ではありません。目標は別に持ちます。
合格したロットでも、不適合品は調べる
抜取で見つかった不適合品は、ロットが合格でも原因を調べます。見つかったこと自体が情報だからです。合格したから何もしない、という運用にすると、工程の変化に気づけません。
1個でも出たら困るものには使わない
安全にかかわる特性や、1個流出しただけで大きな影響が出るものには、抜取検査は向きません。全数検査か、工程で作り込んで保証するほうへ寄せます。抜取は、通す仕組みであって、止める仕組みではありません。
水準の決め方
AQLの数値は、自社だけで決めるものではありません。顧客との取り決めか、社内の基準として先に決めておくものです。
| 見るところ | 厳しくする方向 |
|---|---|
| 不適合が出たときの影響 | 人に危害が及ぶ、使えなくなる |
| 後で見つかるかどうか | 後工程でも顧客でも見つからない |
| 直すのにかかる費用 | 組み付けた後では直せない |
| 取引先の要求 | 指定がある場合はそれに従う |
1つのロットに対して、特性ごとに違うAQLを決める形もよく使われます。外観のわずかな汚れと、寸法の外れを同じ線で扱う必要はありません。
検査の厳しさは3段階で切り替える
同じAQLでも、検査の厳しさを切り替える仕組みがあります。通常の検査から始めて、不合格が続けば厳しく、良い状態が続けば緩く切り替えます。
- 通常|取り決めた状態。ここから始める
- きつい|不合格が続いたとき。取る数や判定が厳しくなる
- ゆるい|安定して合格が続いたとき。手間を減らせる
この切替えを決めずに通常だけで回すと、工程が悪くなっても検査の手間が変わりません。切替えの条件を、取り決めの紙に一緒に書いておきます。
取り出し方で結果が変わる
表から引いた数だけ取れば正しい、というわけではありません。どこから取るかで、結果はまったく変わります。
手前から取る
箱の上のほうだけ取りやすい
ロット全体を映していない。
ばらして取る
箱・段・時間帯を散らす手間はかかる
ロットの中の偏りが見える。
不適合は、たいてい偏って出ます。特定の時間帯、特定の号機、特定の段。手前から取ると、その偏りを丸ごと見落とします。
取った場所を記録する
どこから取ったかを記録しておくと、不適合が見つかったときに偏りを追えます。「3段目の右側から2個」のように書いておくだけで、後の調査が早く進みます。
ロットの区切り方も決めておく
何をもって1ロットとするかが決まっていないと、判定の意味が変わります。同じ材料ロット、同じ条件、同じ日のように、区切りの条件を書いておきます。都合で区切りを変えると、判定が甘くなります。
検査する人によってぶれないようにする
外観のように判断が入る特性では、人によって判定が変わります。限度見本を用意して、迷ったらそれと比べる形にします。AQLの表をいくら正しく引いても、判定がぶれていれば結果は当てになりません。
顧客や外注先と取り決めるときに書くこと
AQLは、社内だけで完結しません。取り決めるときに書いておく項目は5つです。
- 特性ごとのAQL|外観、寸法、機能。まとめて1つにしない
- 検査の水準|どの水準で表を引くか
- ロットの区切り|何をもって1ロットとするか
- 切替えの条件|きつい検査、ゆるい検査へいつ移るか
- 不合格になったときの扱い|返すのか、全数選別するのか、誰が費用を持つか
5つ目を書いていない取り決めが、実務ではよくあります。不合格が出たときに初めて相談する形になると、そのときの力関係で決まります。先に書いておきます。
外注先には、判定の見本まで渡す
数値だけを伝えても、外観の判定はそろいません。限度見本と、その使い方まで渡します。外注先の検査結果を自社で確かめる回数も、取り決めに入れておきます。
取り決めを見直す時期を決める
工程が安定してきたら、水準や検査の厳しさを見直せます。年に1回など、見直す時期を先に書いておくと、話を切り出しやすくなります。
AQLを使う抜取検査が向かない場面
次の3つでは、抜取検査そのものが合いません。
| 場面 | なぜ向かないか | 代わりに使うもの |
|---|---|---|
| 1個でも流出したら困る | 抜取では必ず不確かさが残る | 全数検査、または工程で作り込む |
| ロットの数が少ない | 取る数が少なく、判定が偶然に左右される | 全数検査 |
| 壊さないと調べられない | 調べた分は出荷できない | 条件の管理と記録で保証する |
検査を増やす前に、工程を見る
不適合が続くと、検査を厳しくする方向に話が向きます。ただし、検査を増やしても不適合の数は減りません。見つかる数が増えるだけです。減らすには工程側に手を打ちます。
検査の強化は、工程に手を打つまでの間の暫定の手当てとして位置づけると、話が整理できます。暫定対策と恒久対策の違いと同じ考え方です。
社内で回すための3つの決めごと
AQLを社内で扱うために決めることは、3つです。
- 置き場所を分ける|AQLは検査の取り決め、品質の目標は別の紙。混ぜない
- 取り出し方|どこから何個取るか、取った場所をどう記録するか
- 切替えの条件|きつい検査、ゆるい検査へいつ移るか。取り決めの紙に書く
この3つが決まっていれば、担当が代わっても判定の重さが変わりません。
合格したロットの不適合も数える
抜取で見つかった不適合は、ロットが合格でも集計に入れます。月ごとに並べると、工程の変化が先に見えます。合否だけを記録していると、良くなっているのか悪くなっているのかが分かりません。
用語を社内でそろえる
AQL、合格判定数、検査水準。言葉の意味が人によって違うと、取り決めの読み方が変わります。1枚の用語表を作って、検査の場所に貼っておきます。3行から5行で足ります。
よくある質問
- Q. AQLは「この率まで不良を出してよい」という意味ですか。
- 違います。ロットを通すか止めるかを決めるための線です。品質の目標ではありません。社内の目標と同じ紙に書くと、混ざって運用が緩みます。
- Q. 合格したロットに不適合品が混ざっていることはありますか。
- あります。抜取である以上、そこはゼロにできません。だから、抜取で通したものを「全部良品」と説明してはいけません。
- Q. AQLの数値はどう決めますか。
- 取引先の指定があればそれに従います。無い場合は、不適合が出たときの影響・後で見つかるか・直す費用で決めます。特性ごとに分けて決める形が実務的です。
- Q. 検査のきつさを切り替える仕組みとは何ですか。
- 通常の検査から始めて、不合格が続けば厳しく、良い状態が続けば緩く切り替える仕組みです。切替えの条件を取り決めの紙に書いておきます。
- Q. どこから何個取ればよいですか。
- 数は表から引けます。大事なのは取る場所で、箱・段・時間帯を散らして取ります。手前から取ると、偏って出ている不適合を丸ごと見落とします。
- Q. 合格したロットで見つかった不適合は、調べなくてよいですか。
- 調べます。見つかったこと自体が情報です。合格したから何もしない運用にすると、工程の変化に気づけません。
- Q. 1個でも流出したら困るものにも使えますか。
- 向きません。全数検査か、工程で作り込んで保証するほうへ寄せます。抜取は通す仕組みであって、止める仕組みではありません。
- Q. 外注先と取り決めるとき、何を書きますか。
- 特性ごとのAQL、検査の水準、ロットの区切り、切替えの条件、不合格になったときの扱いと費用の持ち方の5つです。最後の1つが抜けがちです。
- Q. 不適合が続くので検査を厳しくすべきですか。
- 検査を増やしても不適合の数は減りません。見つかる数が増えるだけです。暫定の手当てとして位置づけ、工程側に手を打つのが本筋です。
- Q. ロットの区切りはどう決めますか。
- 同じ材料ロット、同じ条件、同じ日のように、区切りの条件を先に書いておきます。都合で区切りを変えると、判定が甘くなります。取り決めの紙に入れておく項目です。
- Q. 外観の判定が人によって違います。
- 限度見本を用意して、迷ったらそれと比べる形にします。表を正しく引いても、判定がぶれていれば結果は当てになりません。見本は外注先にも渡します。
- Q. 取り決めはいつ見直しますか。
- 工程が安定してきたら、水準や検査の厳しさを見直せます。年に1回など、見直す時期を先に書いておくと、話を切り出しやすくなります。
- Q. 壊さないと調べられない特性はどうしますか。
- 調べた分は出荷できないので、抜取そのものが合いません。条件の管理と記録で保証するほうへ寄せます。条件が守られた証拠を残す形にします。
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