ゲージR&R|測る側のばらつきを、工程と分けて見る
寸法がばらついている。工程を調整しても収まらない。よく調べたら、ばらついていたのは測っている側だった。
ゲージR&Rは、そのばらつきがどこから来ているかを分けて見る方法です。測る人によって値が変わるのか、同じ人が測り直しても変わるのか。ここを分けずに工程をいじると、直らないまま時間だけが過ぎます。
この記事では、ゲージR&Rを、何人で何回測るか・結果の読み方・%が大きかったときの手当て・やる前に確かめることまでまとめます。
この記事の内容(11項目)
ゲージR&Rは2つのばらつきを分ける
名前のR&Rは、2つの言葉の頭文字です。
| 見ているもの | 原因になりやすいもの | |
|---|---|---|
| 繰り返し性 | 同じ人が同じものを測り直したときの差 | 測定器そのもの。分解能、がたつき |
| 再現性 | 人が替わったときの差 | 測り方。当て方、読み方、力加減 |
ポイントはここです。どちらが大きいかで、直す相手が変わります。繰り返し性が悪ければ測定器、再現性が悪ければ手順と教育です。
測定器を買い替えても、当て方がばらばらなら値は揃いません。逆に、いくら教えても分解能が足りない測定器では限界があります。
そのため、まず分けて見ます。分けずに「測定がおかしい」とだけ言うと、打つ手が決まりません。
工程側のばらつきの見方は工程能力指数にまとめてあります。
何人で、何個を、何回測るか
一般には次の形で行われます。
- 測る人:3人
- 対象:10個
- 回数:1人が同じものを2〜3回
3人 × 10個 × 3回で90回。半日あれば終わります。
対象の10個は、ふだん作っているもののばらつきを含む形で選びます。全部が同じ寸法のものだと、差が出ているのか測定のせいなのか分かりません。
規格の上限に近いもの、下限に近いもの、真ん中のもの。この3種類が混ざるように選びます。
測る順番はばらばらにします。同じ順で測ると、前の値を覚えていて引きずります。
そのうえで、測る人にはどれが何番か分からないようにします。番号を裏に書くだけで足ります。
ゲージR&Rをやる前に確かめる3つ
これを飛ばすと、結果が読めません。
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 測定器の校正が生きているか | 期限切れの器で測った値は使えない |
| 分解能が足りているか | 規格の幅に対して目盛りが粗すぎないか |
| 測る場所が決まっているか | 同じ部品でもどこを測るかで値が変わる |
2つ目が実務でいちばん効きます。目安として、規格の幅を10で割った値より細かく読めることが求められます。
規格が0.1mmの幅なのに0.05mm刻みでしか読めない測定器では、そもそも判断できません。この場合、ゲージR&Rをやるまでもなく測定器を替える話になります。
3つ目については、測る位置を図で示しておきます。作業標準書に1枚入れるだけで、再現性がかなり変わります。
標準の直し方は作業標準の改訂にまとめてあります。
結果をどう読むか
出てくるのは、全体のばらつきに占める測定の割合です。
| %の目安 | 扱い |
|---|---|
| 10%未満 | 問題なしとされることが多い |
| 10〜30% | 用途による。重要な特性なら手を打つ |
| 30%超 | そのままでは使えない |
線の引き方は業界や取引先の要求で変わります。自社が何を求められているかを先に確かめます。
大事なのは%の数字より、繰り返し性と再現性のどちらが大きいかです。合計が同じ20%でも、中身が違えば打つ手が違います。
そのうえで、部品のばらつきが小さすぎると%は大きく出ます。分母が小さくなるためです。選んだ10個が似すぎていないかを、ここで確かめ直します。
計算は表計算でできます。専用のソフトが無くても、分散を分けるところまでは追えます。
繰り返し性が悪いとき
同じ人が測り直しても値が変わる状態です。測定器側を見ます。
- 分解能が足りない。目盛りが粗い
- 器そのものが傷んでいる。がたつき、摩耗、ゼロ点のずれ
- 測る対象が動く。柔らかい、薄い、たわむ
- 置き方が安定しない。治具が無く、手で持っている
- 環境が変わる。温度で寸法が変わるもの
4つ目は見落とされがちですが、効き目が大きいところです。測定用の治具を作るだけで、ばらつきが半分になることがあります。
3つ目については、測る力を決めます。定圧の機構が付いた測定器を使うか、当てる力を手順で決めます。
5つ目は、精度の高い測定で問題になります。測る場所の温度を決めるか、時間を置いてから測ります。
再現性が悪いとき
人が替わると値が変わる状態です。手順と教育を見ます。
| 見るところ | 手当て |
|---|---|
| 測る位置 | 図で示す。目印を付ける |
| 測る向き | 縦か横か。基準面を決める |
| 当てる力 | 定圧の機構。または回数を決める |
| 読み方 | 目盛りの読み、桁の丸め方 |
| 器の使い方 | ゼロ合わせのタイミング |
どれも、文章より図と実演のほうが伝わります。1回集まって、同じものを全員で測ってみるのがいちばん早く揃います。
そのうえで、測り方を作業標準書に入れます。口頭で教えると、伝言のたびに変わります。
新しく入った人には、この確認を教育の中に入れます。作業標準の改訂と同じ形で、測れるかどうかも見ます。
ゲージR&Rをやる場面
全部の測定でやる必要はありません。
- 新しい測定器を入れたとき
- 新しい製品や工程を立ち上げたとき
- 工程を調整しても不良が減らないとき
- 取引先から求められたとき
- 測る人が大きく入れ替わったとき
3つ目が、実務でいちばん助かる使い方です。工程をいじっても収まらないなら、測っている側を疑う番です。
そのため、不良の原因を掘るときの選択肢に入れておきます。原因分析の進め方で要因を挙げるときに、測定を1つの枝として置きます。
逆に、外観のように数値で測らないものには使えません。そちらは限度見本で揃えます。
見本の扱いは限度見本の管理にまとめてあります。
結果を記録として残す
やりっぱなしにすると、次に求められたときに繰り返すことになります。
| 残すもの | 後で使う場面 |
|---|---|
| いつ、誰が、どの測定器で | 条件を再現する |
| 測った対象と測定値の生データ | 計算をやり直せる |
| 繰り返し性・再現性・合計の% | 結論 |
| 判定と、やったこと | 次につながる |
2つ目を残すのが大事です。%だけ残っていると、あとから条件を変えて計算し直せません。
取引先へ提出する場面もあります。そのときは生データも求められることが多くなっています。
手を打ったあとは、もう一度測ります。%が下がっていなければ、打った手が効いていません。
前後で比べられる形にしておくのが、いちばんの価値です。
簡易に確かめる方法
本格的にやる時間が無いときの形です。
1人が同じものを10回測って、ばらつきを見ます。これだけで繰り返し性の目安は分かります。
次に、3人が同じものを1回ずつ測ります。値が揃っていなければ、再現性に問題があります。
| 簡易な確認 | かかる時間 | 分かること |
|---|---|---|
| 1人×1個×10回 | 10分 | 繰り返し性の目安 |
| 3人×1個×1回 | 10分 | 再現性の目安 |
20分あれば、測定が怪しいかどうかの当たりは付きます。怪しければ、そこから本式のゲージR&Rに進みます。
この簡易な確認は、不良が出たときの初動に入れておくと効きます。工程を止める前に20分で確かめられます。
初動の進め方は不具合の初動対応にまとめてあります。
測定器そのものの管理
ゲージR&Rの前提になる部分です。
校正の期限が切れた測定器で測った値は、あとから使えません。ゲージR&Rの結果も同じです。
| 管理すること | 中身 |
|---|---|
| 台帳 | どの器が、どこに、何台あるか |
| 校正の期限 | 次はいつか |
| 点検 | 日常の確認。ゼロ点、外観 |
| 持ち出し | 誰がいつ持って行ったか |
| 不具合のとき | 使用を止める。その器で測ったものを追う |
5つ目が効きます。測定器に異常が見つかったら、前回の校正以降にその器で測ったものが対象になります。
そのため、どのロットをどの器で測ったかが分かる形にしておきます。検査の記録に器の番号を1列足すだけです。
遡る範囲の絞り方はトレーサビリティ体系図と同じ考え方が使えます。
よくある質問
- Q. ゲージR&Rで何が分かりますか。
- 測っている側のばらつきが、全体のどれくらいを占めるかです。繰り返し性(同じ人が測り直したときの差)と再現性(人が替わったときの差)に分けて見ます。どちらが大きいかで、直す相手が変わります。
- Q. 何人で何回測りますか。
- 3人が10個を2〜3回ずつ、という形が一般的です。3人×10個×3回で90回、半日あれば終わります。対象の10個は、ふだんのばらつきを含むように選びます。
- Q. 対象はどう選びますか。
- 規格の上限に近いもの、下限に近いもの、真ん中のものが混ざるようにします。全部が同じ寸法だと、差が出ているのか測定のせいなのか分かりません。測る順番はばらばらにして、番号は裏に書きます。
- Q. やる前に確かめることはありますか。
- 校正が生きているか、分解能が足りているか、測る場所が決まっているかの3つです。規格の幅を10で割った値より細かく読めない測定器では、ゲージR&Rをやるまでもなく器を替える話になります。
- Q. %はいくつなら合格ですか。
- 10%未満で問題なしとされることが多く、30%を超えるとそのままでは使えません。線の引き方は業界や取引先の要求で変わるので、自社が何を求められているかを先に確かめます。
- Q. %だけ見ればよいですか。
- 繰り返し性と再現性のどちらが大きいかのほうが大事です。合計が同じ20%でも、中身が違えば打つ手が違います。繰り返し性なら測定器、再現性なら手順と教育です。
- Q. 繰り返し性が悪いときは何を見ますか。
- 分解能、器の傷み、対象が動くこと、置き方、環境です。測定用の治具を作るだけで、ばらつきが半分になることがあります。手で持って測っているなら、そこから直します。
- Q. 再現性が悪いときは何を見ますか。
- 測る位置・向き・当てる力・読み方・ゼロ合わせです。文章より図と実演のほうが伝わります。1回集まって同じものを全員で測るのが、いちばん早く揃います。
- Q. どんなときにやりますか。
- 新しい測定器を入れたとき、新しい工程を立ち上げたとき、工程を調整しても不良が減らないとき、取引先から求められたとき、測る人が入れ替わったときです。3つ目がいちばん助かる使い方です。
- Q. 時間が無いときの簡易な方法はありますか。
- 1人が同じものを10回測って繰り返し性、3人が1回ずつ測って再現性の目安を見ます。合わせて20分です。怪しければ、そこから本式に進みます。
- Q. 結果は何を残しますか。
- いつ誰がどの測定器で、測定値の生データ、繰り返し性と再現性と合計の%、判定とやったことです。生データが無いと、あとから条件を変えて計算し直せません。手を打ったあとは、もう一度測って下がったかを見ます。
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