検査成績書とは?差し戻されるのは判定の根拠がないとき
検査成績書は、出荷する製品について、どの項目をどう検査して、結果がどうだったかを示す書面です。納品のときに添付を求められることが多く、取引先の受入検査の材料になります。
様式は取引先から渡されることも、自社の形で出すこともあります。差し戻されるのは、判定の根拠が読み取れないときです。数値は並んでいるが、何と比べて合格なのかが書かれていない。
この記事では、検査成績書を、必ず要る項目・判定の根拠の示し方・似た書面との違い・控えの残し方までまとめます。
この記事の内容(9項目)
検査成績書に必ず要る項目
様式が違っても、求められるものはほぼ共通しています。
| 項目 | 書くこと | 抜けると |
|---|---|---|
| 対象の識別 | 品番、品名、図面番号と版 | どの製品の成績か分からない |
| 数量とロット | 納入数、ロット番号、製造日 | あとで範囲を絞れない |
| 検査項目 | 何を見たか | 見ていない項目があるか分からない |
| 規格値 | いくつからいくつまでか | 合否の判断ができない |
| 実測値 | 実際の数値 | 「合格」だけでは根拠がない |
| 判定 | 合格・不合格 | 読む側が計算することになる |
| 検査した人と日付 | 誰がいつ | 問い合わせ先が分からない |
| 発行者 | 会社名、部署、責任者 | 正式な書面として扱えない |
ポイントはここです。規格値と実測値が並んでいて、はじめて判定に意味が出ます。実測値だけ、あるいは「合格」だけの成績書は、受け取る側で確かめようがありません。
図面の版も入れます。版が変われば規格も変わるので、どの版に対する合格かが分からないと使えません。
項目の並びは、図面や仕様書と同じ順にします。読む側が突き合わせるので、順番が違うと確かめに時間がかかります。
検査していない項目がある場合は、その旨を書きます。空欄のままだと、見たのに書き忘れたのか、見ていないのかが分かりません。
検査成績書は全数か抜取かを書く
受け取る側がいちばん知りたいことの1つです。
全数検査の結果なのか、抜取の結果なのか。抜取なら何個取ったのか。これが書いていないと、成績書の意味する範囲が分かりません。
| 書き方 | 受け取る側から見ると |
|---|---|
| 「寸法A 10.02 合格」 | 1個測ったのか、全数なのか不明 |
| 「寸法A 全数100個 最小10.01/最大10.04 規格10.00-10.05 合格」 | 範囲が分かる |
| 「寸法A 抜取5個(n=5)実測値5点を記載 規格10.00-10.05 合格」 | どこまでを保証しているか分かる |
全数のときは、最小と最大を書く形がよく使われています。100個分の数値を並べるより読みやすく、範囲も分かります。
抜取のときは、取った個数と実測値を並べます。どの水準で取ったかも書けると、なおよくなります。
取り方の考え方は抜取検査にまとめてあります。
測定に使った器具も書けると、なおよくなります。ノギスで測ったのかマイクロメータで測ったのかで、読み取れる細かさが変わります。
取引先から指定された測定方法がある場合は、そのとおりに測ったことも記載します。方法が違うと、同じものを測っても値が変わることがあります。
検査成績書の外観項目には基準が要る
寸法は数値で書けますが、外観は書き方に困ります。
「良好」「異常なし」だけでは、何と比べたのかが分かりません。受入側で見方が違えば、そこで食い違います。
そのため、限度見本の番号を書きます。「外観 限度見本No.3と比較 合格」という形です。何を基準にしたかが1行で伝わります。
限度見本が無いなら、先に作ります。取引先と一緒に決めた見本があれば、判定の食い違いはほとんど無くなります。
見本の管理そのものは限度見本の管理にまとめてあります。期限切れの見本で判定した記録は、あとから使えません。
検査成績書とミルシートは別のもの
似た書面がいくつかあり、混ざります。
| 書面 | 誰が出すか | 何を示すか |
|---|---|---|
| 検査成績書 | 製品を作った会社 | その製品の検査結果 |
| ミルシート(材料証明書) | 材料メーカー | 材料の成分と機械的性質 |
| 試験成績書 | 試験を行った機関や部署 | 特定の試験の結果 |
| 出荷検査記録 | 自社(社内用) | 出荷前に確かめた内容 |
ミルシートを求められているのに検査成績書を出すと、材料の証明にはなりません。逆も同じです。
そのため、依頼を受けたときに、どちらを求められているかを確かめます。「証明書をください」とだけ言われることが多いので、用途を聞くのが確実です。
両方を求められる場合もあります。材料はミルシートで、加工後の寸法は検査成績書で、という形です。
検査成績書が差し戻される理由
受け取る側で止まるのは、だいたい決まっています。
- 規格値が入っていない。実測値だけでは合否を確かめられない
- 図面の版が古い。改訂前の規格で判定している
- ロット番号が納品書と合わない。どの品物の成績か追えない
- 検査した日が出荷日より後。順番が逆になっている
- 押印や署名が無い。正式な書面として受け取れない
4つ目は、日付の入れ間違いで起きます。まとめて作ったときに、作成日を検査日の欄に入れてしまう形です。
そのため、出す前に3つだけ突き合わせます。納品書のロット番号、図面の版、検査日と出荷日の順番。ここで多くが防げます。
複数の取引先に出している場合、様式ごとに項目の並びが違います。社内では1つの形で記録を持ち、出すときだけ様式に合わせる形にすると、間違いが減ります。
差し戻しが多い取引先については、その会社向けの確認項目を1枚作っておきます。毎回同じところで止まっているなら、そこを先に見ます。
差し戻された件数も数えておきます。月に何件かを見ていると、様式を直したあとに減ったかどうかが分かります。
減っていないなら、直した場所が原因ではありません。もう一度、戻された理由を並べ直します。
差し戻されたら、直した理由も記録に残します。同じ理由が続くなら、様式か手順のほうを直します。
検査成績書を電子で出すとき
紙で渡す形から、データで送る形に移っています。
気をつけるのは3つです。誰が発行したものか分かること、あとから書き換えられないこと、どの版が最新か分かること。
編集できる形式のまま送ると、受け取った側で数値を書き換えられます。PDFにして送る形が一般的になっています。
取引先のシステムに直接入力する形もあります。この場合、社内の控えを別に残しておかないと、あとから自社で確かめられません。
そのうえで、送った日と送り先を記録します。「送ったはず」で止まると、納品が遅れた原因の切り分けができません。
検査成績書の控えを社内に残す
出したものと同じ内容を、自社でも保管します。
| 残すもの | 後で使う場面 |
|---|---|
| 成績書そのもの | 再発行を求められたとき |
| もとになった検査記録 | 数値の出どころを確かめるとき |
| 誰がいつ出したか | 問い合わせが来たとき |
成績書だけ残して、もとの検査記録を残していないことがあります。そうすると、数値の出どころを確かめられません。
不具合が出たときに、まず見るのがこの記録です。成績書では合格なのに不具合が出ているなら、検査そのものか、検査後の工程に原因があります。
保存期間は、取引先から求められる期間と、自社で追いたい期間の長いほうに合わせます。製品の寿命が長いものは、それに合わせて長く持ちます。
不具合が出たあとの報告の形は8Dレポート、原因の追い方は原因分析の進め方にまとめてあります。
検査成績書を作る手間を減らす
納品のたびに1枚作るので、手間が積み上がります。
減らし方は3つあります。
- 検査記録からそのまま出す。転記をやめる。転記は間違いの元にもなる
- 品番ごとに雛形を持つ。検査項目と規格値は毎回同じなので、埋めるのは実測値だけにする
- 取引先の様式を写しでためる。毎回作り直さない
とくに1つ目が効きます。検査のときに使う記録用紙と、成績書の項目をそろえておけば、そのまま出せます。
項目がそろっていないと、毎回転記が発生します。転記のたびに、数値を写し間違える可能性が入ります。
そのうえで、規格値は図面から引きます。雛形に手で入れた値は、図面が改訂されたときに取り残されます。改訂があったら雛形も直す、という手順を変更点管理に入れておきます。
雛形を直したら、直した日と版を雛形そのものに書いておきます。どの版の雛形で出した成績書かが、あとで追えます。
よくある質問
- Q. 検査成績書は毎回添付しますか。
- 取引先との取り決めによります。毎回求められる場合、初回とロットが変わったときだけの場合、求められたときだけの場合があります。取り決めが曖昧なままだと、要るはずのときに出ていない事故が起きます。
- Q. 押印は必要ですか。
- 取引先の要求によります。電子で送る形が増えていて、押印を求めない取引先も多くなっています。求められている場合は、誰の名義で押すかを社内で決めておきます。
- Q. 過去の成績書を再発行できますか。
- 控えともとの検査記録が残っていれば発行できます。再発行であることが分かるようにして、発行日を新しく入れます。元の検査日はそのままにします。
- Q. 検査成績書とミルシートは違うものですか。
- 別のものです。ミルシートは材料メーカーが出す材料の証明で、成分や機械的性質を示します。検査成績書は製品を作った会社が出すもので、その製品の検査結果を示します。両方を求められることもあります。
- Q. 実測値は全部書く必要がありますか。
- 全数検査なら、最小と最大を書く形がよく使われています。100個分を並べるより読みやすく、範囲も分かります。抜取なら、取った個数と実測値を並べます。
- Q. 外観の項目はどう書きますか。
- 限度見本の番号を書きます。「限度見本No.3と比較 合格」という形です。「良好」「異常なし」だけでは、何と比べたのかが伝わりません。
- Q. 差し戻される原因で多いものは何ですか。
- 規格値が入っていない、図面の版が古い、ロット番号が納品書と合わない、の3つが多くなっています。出す前にこの3つを突き合わせるだけで、多くが防げます。
- Q. 電子で送っても問題ありませんか。
- 問題ありません。ただし、編集できる形式のまま送ると受け取った側で書き換えられます。PDFにする形が一般的です。取引先のシステムに直接入力する場合は、社内の控えを別に残しておきます。
- Q. 控えはどのくらい残しますか。
- 取引先から求められる期間と、自社で追いたい期間の長いほうに合わせます。成績書だけでなく、もとになった検査記録も残します。数値の出どころを確かめられなくなるためです。
- Q. 作る手間を減らせませんか。
- 検査に使う記録用紙と成績書の項目をそろえると、転記が要らなくなります。品番ごとに雛形を持ち、埋めるのは実測値だけにする形も有効です。ただし、雛形の規格値は図面の改訂に合わせて直します。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-09-22時点のものです。