8Dレポートとは?差し戻される理由はD4とD5にある
8Dレポートは、不具合が出たときに取引先へ出す報告書の型です。8つのステップに分かれていて、自動車業界を中心に広く使われています。
様式そのものは取引先から渡されることが多く、埋める欄は決まっています。それでも差し戻されるのは、D4とD5の中身が薄いときです。原因が特定できていない、対策が原因に対応していない。この2つで戻ってきます。
この記事では、8Dレポートを、差し戻される理由という目で整理します。応急処置と恒久対策の線引き、発生原因と流出原因の書き分け、出したあとの扱いまでまとめます。
この記事の内容(9項目)
8Dレポートの8つのステップ
呼び方は様式によって少し違いますが、並びは共通しています。
| やること | よくある落とし穴 | |
|---|---|---|
| D1 チーム編成 | 誰が対応するか決める | 名前だけ並べて、実際は1人で書いている |
| D2 問題の記述 | 何が、いつ、どれだけ起きたか | 「不良が発生」で止まる |
| D3 応急処置 | お客様側と自社側を止める | 自社側だけ書いて、市場在庫に触れない |
| D4 原因の特定 | なぜ起きたか、なぜ流出したか | 1本しか書かない |
| D5 恒久対策の選定 | 何をするか決める | 原因と対応していない |
| D6 恒久対策の実施 | 実際にやって、効いたか確かめる | 実施日だけ書いて効果が無い |
| D7 再発防止 | 他にも広げる、標準に落とす | 「水平展開します」で終わる |
| D8 完了 | チームの解散と評価 | 省略される |
ポイントはここです。D4で原因を2本立てにするかどうかが、全体の出来を決めます。なぜ作ってしまったか(発生原因)と、なぜ出荷まで気づかなかったか(流出原因)。どちらかが抜けると、D5も片方しか書けません。
D8まで書いて閉じる様式ですが、実務ではD7まで書いた時点で提出することも多くなっています。
D0を置く様式もあります。緊急の対応が要るかどうかを最初に判断する欄で、お客様のラインが止まっているかどうかをここで見ます。
8つを順に埋めていく形ですが、実際にはD3とD4が並行します。応急処置を打ちながら原因を掘るので、書く順番と進める順番は一致しません。
8DレポートのD2は数字で書く
問題の記述で、差し戻しの1つ目が出ます。
| 書き方 | 受け取る側から見ると |
|---|---|
| 「A部品に寸法不良が発生」 | 何個か、どのロットか分からない |
| 「A部品(品番123)の外径が上限を0.03mm超過。8月ロット500個中12個」 | 範囲が分かる。自分の在庫を確かめられる |
書くのは5つです。何が、どこで、いつ、どれだけ、どうやって見つかったか。
とくに「どうやって見つかったか」が抜けやすくなります。お客様のラインで見つかったのか、受入検査で見つかったのか。ここが流出原因の入口になります。
そのうえで、影響する範囲も書きます。同じ条件で作ったものが他にもあるなら、その数量まで含めます。
範囲が確定していない段階では、「調査中」と書いて、いつまでに確定するかを添えます。空欄のまま出すと、範囲を把握していないと読まれます。
写真があれば添えます。文章で説明するより早く伝わり、受け取った側が自社の在庫を見分けるときにも使えます。
8DレポートのD3は、お客様側から書く
応急処置では、止める対象が2つあります。
- お客様側。すでに出ているものをどうするか。選別、回収、代品の手配
- 自社側。これから作るものをどうするか。工程を止める、全数検査に切り替える
順番はお客様側が先です。相手のラインが止まっているなら、そこへの手当がいちばん急ぎます。
書くときは、対象の範囲と期限を入れます。「在庫を選別」ではなく「倉庫在庫300個を9月20日までに全数選別」。読む側が確かめられる形にします。
応急処置はあくまで一時のものです。恒久対策が入るまで続けること、いつ解除するかも書いておきます。解除の条件を書かないと、全数検査がそのまま何年も続きます。
2つの線引きは暫定対策と恒久対策の違いにまとめてあります。出荷を止めるかどうかは出荷停止の判断で整理しています。
8DレポートのD4は発生と流出を分けて書く
差し戻しのほとんどが、ここで起きます。
| 問い | 答えの例 | |
|---|---|---|
| 発生原因 | なぜそれを作ってしまったか | 刃具の摩耗が進み、寸法が上限側へ動いた |
| 流出原因 | なぜ気づかず出荷したか | 抜取検査の頻度が4時間ごとで、その間の変化を捉えられない |
2つは別のものです。発生原因だけ直すと、次に別の理由で不具合が出たときに、また流出します。
そのため、D5の対策も2本立てになります。作らない対策と、出さない対策。片方しかない8Dレポートは、読む側から見ると半分しか答えていないことになります。
掘り方は、なぜを重ねる形が一般的です。ただし回数を目的にしないところが大事です。3回で事実に行き着いたなら、そこで止めます。
途中で「注意不足」「確認漏れ」に行き着いたら、まだ掘れます。人の注意に原因を置くと、対策も「注意する」になり、効きません。
掘った経過も残します。確かめたが違っていた要因も書いておくと、読む側が「そこは見たのか」と聞かずに済みます。
再現試験ができるなら、その結果を添えます。同じ条件で再現したという事実があると、原因の説明がぐっと強くなります。やり方は再現試験の進め方にまとめてあります。
掘り方はなぜなぜ分析、要因の出し方は特性要因図にまとめてあります。
8DレポートのD5は原因と1対1で並べる
対策が原因に対応していないと、読む側はすぐ気づきます。
いちばん多いのが、原因は設備の話なのに、対策が「教育を実施する」になっている形です。原因と対策の主語が変わっています。
そのため、様式の中で原因と対策を左右に並べます。1つの原因に1つ以上の対策があり、対策のない原因が無い状態にします。
対策には、担当と期限を入れます。誰がいつまでにやるかが無いと、D6で書くことがありません。
対策が複数の案から選ばれたなら、選んだ理由も1行入れます。読む側が「なぜその方法か」を聞かずに済みます。案の比べ方は対策案の比較にまとめてあります。
対策に費用や期間がかかる場合は、その間どうするかも書きます。恒久対策が入るまで応急処置を続ける、という1行があれば、間が空きません。
設備の改造のように月単位でかかるものは、実施予定日を書いて、入ったあとに追加で報告する形にします。
対策が複数あるときは、番号を振って原因の番号と対応させます。読む側が目で追えます。
8DレポートのD6は効果を数字で示す
実施したことと、効いたことは別です。
D6で書くのは、実施日と、そのあとの結果です。対策後に作ったものが何個で、そのうち不具合が何件だったか。
確認する期間も要ります。もとの不具合が月に数件なら、1週間では判断できません。発生の頻度に合わせて期間を決めます。
数字が足りない段階で提出することもあります。そのときは「9月末まで確認を継続」と書いて、いつ最終の報告をするかを明記します。曖昧にしたまま出すと、そこで差し戻されます。
測り方は改善効果の測定にまとめてあります。効果が出ないときは、D4に戻ります。
8DレポートのD7は「水平展開します」では通らない
再発防止の欄で、もう1つの差し戻しが起きます。
「水平展開します」「同様の工程に展開します」とだけ書かれていると、何もしていないのと同じに読まれます。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| どこに広げたか | 同じ設備を使う3ラインすべて |
| いつ広げたか | 9月18日から19日 |
| 何に落としたか | QC工程表の検査頻度を4時間から1時間へ改訂 |
| 誰が確かめたか | 品質保証課で実施を確認 |
標準に落とすところまで書けていれば、差し戻されることはほとんどありません。手順書、QC工程表、様式、設備の設定。どれかに残っている形にします。
広げ方は水平展開の進め方、落とす先の考え方はQC工程表にまとめてあります。
8Dレポートを出したあと
提出して受理されたら終わり、とはなりません。
多くの場合、一定期間のあとに効果の確認を求められます。3か月後、半年後といった形です。そのときに数字が出せるよう、対策後の記録を残しておきます。
社内にも残します。同じ不具合が別の製品で出たときに、前の8Dレポートがあれば、D4から始められます。
そのうえで、探せる形にしておきます。品番や不具合の名前で引けるようにしておかないと、あっても使われません。探し方は類似不具合の検索にまとめてあります。
複数の取引先から様式を渡されている場合も、中身は同じものを使い回せます。埋める欄の並びが違うだけなので、社内の記録は1つの形に統一しておくほうが早く書けます。
D3で対象の範囲を出すときは、どこまで追えるかが効きます。追える範囲の確かめ方はトレーサビリティ体系図にまとめてあります。
よくある質問
- Q. 様式は取引先のものを使いますか。
- 渡されていればそちらを使います。無ければ自社の様式で足ります。複数の取引先から違う様式を渡されている場合も、社内の記録は1つの形に統一しておくほうが書きやすくなります。
- Q. 8Dレポートと是正処置報告書は違うものですか。
- 中身はほぼ同じです。8Dレポートは8つのステップという型が決まっている点が特徴で、自動車業界で使われることが多くなっています。求められているものは、原因と対策と確認結果という点で変わりません。
- Q. D1のチーム編成は形式的でも構いませんか。
- 名前を並べるだけでは意味がありませんが、実際に関わる人を書けば足ります。設計・製造・品質の3つから1人ずつ入っている形が一般的です。1人で全部書いていると、流出原因の見方が偏ります。
- Q. なぜを5回繰り返す必要がありますか。
- 回数は目的ではありません。事実に行き着いたところで止めます。3回で設備の状態にたどり着いたなら、それ以上は推測になります。逆に「注意不足」で止まっているなら、回数にかかわらずまだ掘れます。
- Q. 応急処置はいつまで続けますか。
- 恒久対策が入って、効果が確かめられるまでです。解除の条件を最初に書いておきます。書いておかないと、全数検査が何年も続いて、それが当たり前になります。
- Q. 取引先から差し戻されました。どこを見ますか。
- D4とD5が多くなっています。原因が2本立てになっているか、対策が原因と1対1で並んでいるか。この2つを先に見ます。D7が「水平展開します」で止まっている場合も戻されます。
- Q. どのくらいの期間で提出しますか。
- 取引先から期限を指定されることが多く、初回の報告は数日、最終の報告は数週間という形が一般的です。期限までに効果の確認が終わらないときは、その旨と最終報告の日を書いて出します。
- Q. 同じ不具合が再発したらどうしますか。
- 前の8Dレポートを見直します。D4の原因が違っていたのか、D5の対策が実施されていなかったのか、D7で標準に落ちていなかったのか。再発したという事実そのものが、どこが弱かったかを示しています。
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