管理図とは?規格の合否と、工程の異常を分けて見る
管理図は、測った値を時間の順に打っていき、上下に引いた線からはみ出していないかを見る図です。工場の壁に貼ってあるのをよく見かけます。
ところが、使われ方でいちばん多い誤解がここにあります。管理図の上下の線は、規格の線ではありません。規格に全部入っていても、管理図では異常になることがあります。この記事では、その違いから、異常が出たあとの動き方までまとめます。
この記事の内容(8項目)
管理図は「工程が変わったか」を見る図
管理図の役目は、合否の判定ではありません。工程がいつもと同じ状態で動いているかを見ることです。
どんな工程にも、避けられないばらつきがあります。材料のわずかな差、室温、測る人の癖。これが普段のばらつきです。管理図の上下の線は、この普段のばらつきから計算して引きます。
規格線
図面や顧客が決めた合否の線外れたら不良
製品1個ごとの判定。
管理限界線
工程のばらつきから計算した線外れたら何かが変わった合図
工程の状態の判定。
だから、全部の点が規格の中に入っていても、管理図では異常になります。これは矛盾ではありません。今のところ不良は出ていないが、工程に何かが起きている、という意味です。
規格線を管理図に書き込まない
同じ図に2種類の線を引くと、読む人が混乱します。規格線は書かないか、書くなら色と線種をはっきり分けます。「線を超えた」という会話が、どちらの線の話なのか分からなくなるのを防ぎます。
管理図の種類は、測るものの性質で決まる
種類がいくつもありますが、選び方は単純です。測って数字が出るものか、数えるものかで大きく2つに分かれます。
| 測るもの | 使う管理図 | 例 |
|---|---|---|
| 寸法や重さなど、数字で測るもの | 平均値と範囲の管理図 | 内径、板厚、充填量 |
| 不適合品の個数 | 不適合品率の管理図 | ロットごとの不良品の数 |
| 1つの中の欠点の数 | 欠点数の管理図 | 1枚のキズの数 |
迷ったら、数字で測れるものは数字のまま使います。合否に直してから数えると、情報が落ちます。「規格内だった」より「上限に近づいている」のほうが、早く気づけます。
平均と範囲を2段で見る
数字で測る場合は、何個かをまとめて1組にして、その平均とばらつきの幅の2つを上下に並べて打ちます。
平均だけを見ていると、ばらつきが広がっていることに気づけません。逆にばらつきだけを見ていると、全体がずれていることに気づけません。2段そろって初めて読めます。
1組を何個にするか
4個か5個で1組にするのが一般的です。同じ条件で連続して取れた分を1組にします。朝と夕方の値を混ぜて1組にすると、ばらつきの中に時間の差が入り込んで、線が広がります。
異常の合図は、線を超えることだけではない
管理図で異常と判定するのは、点が上下の線を超えたときだけではありません。線の中にあっても、並び方に癖があれば異常です。
| 並び方 | 読み方 |
|---|---|
| 線を超えた | その時点で何かが起きた |
| 中心線の片側に続けて並ぶ | 工程の中心がずれた |
| 続けて上がる、続けて下がる | 摩耗や温度の変化など、進んでいくもの |
| 上下に規則正しく揺れる | 交互に使う設備や、直の違い |
点が線の中に収まりすぎるのも変
すべての点が中心の近くに寄りすぎている場合、線の計算がおかしいか、測り方が変わっている可能性があります。丸めすぎている、同じ人が続けて測って値を合わせている、といったことが起きています。
合図が出たら、その場で1行書く
異常の合図が出たときに何が起きていたかは、その日のうちにしか分かりません。図の下に、材料のロット、作業者、設備の調整、気温を1行書きます。後から原因を探すときの材料になります。
異常と判定したあとの動き
管理図は、貼ってあるだけでは何も生みません。合図が出たときに何をするかを、先に決めておきます。
2の「何が変わったか」は、変更点管理の記録と突き合わせると早く進みます。材料のロットが切り替わった日、設備を調整した日。管理図の合図と日付が合えば、そこが出発点になります。
調整しすぎない
点が中心から少し外れるたびに設備を調整すると、かえってばらつきが大きくなります。普段のばらつきの範囲なら、触らない。これが管理図を使う理由の1つです。触るのは、合図が出たときだけにします。
線は作り直す時期を決める
工程を改善してばらつきが小さくなったら、古い線のままでは異常を捉えられません。設備や条件を大きく変えたとき、半年に1回など、線を引き直す時期を決めておきます。引き直したら、いつ引き直したかを図に書きます。
管理図を続けるための現実的な形
全部の工程・全部の寸法で管理図を作ると、貼る場所も測る時間も足りません。絞ります。
- 不具合が出ている工程|いま困っているところから始める
- 顧客に届く特性|外れたときの影響が大きいもの
- 調整が多い工程|触りすぎているかどうかが分かる
- 改善の効果を見たい工程|前後で線が変われば効果の証拠になる
目安として、1つの職場で3枚から5枚あれば十分に働きます。20枚あっても誰も見ません。
打つのは現場の人がやる
測ったその場で点を打つと、異常に気づくのがいちばん早くなります。事務所でまとめて入力する形にすると、気づくのが翌日以降になります。手書きで構いません。
見る場を決める
朝礼で30秒、前日の図を見る。これだけで、貼りっぱなしにはなりません。見る人が決まっていない図は、必ず止まります。
管理図が向かない場面
次の3つの場面では、管理図を作っても読めません。
| 場面 | なぜ向かないか | 代わりに使うもの |
|---|---|---|
| 少量多品種で、同じものを続けて作らない | 並べて比べる前提が崩れる | 品種ごとの初物検査と記録 |
| 測るのに時間や費用がかかる | 点が少なすぎて並びが読めない | 全数の合否記録と、条件の記録 |
| 工程がまだ安定していない | 線を計算する土台が無い | まず条件を固めてから作る |
立ち上げ直後は、まず条件を固める
新しいラインで管理図を作ろうとしても、ばらつきが大きすぎて線が広がるだけです。条件を決めて、安定して作れるようになってから線を計算します。それまでは、条件と結果を並べた記録で足ります。
点が少ないときは、そのまま並べる
1日1点しか取れないような工程では、平均も範囲も出せません。測った値をそのまま時間順に並べた折れ線にして、傾向だけを見ます。線を引かなくても、上がり続けていることは読めます。
社内で回すための3つの決めごと
管理図を続けるために決めることは、3つです。
- 異常の目安|線を超えたとき以外に、片側に何点続いたら見に行くか。自社の数を決める
- 合図が出たときの動き|誰に知らせ、何を確かめ、どこに書き戻すか
- 線を引き直す時期|設備や条件を変えたとき、半年に1回など。引き直した日を図に書く
この3つを図の余白に印刷しておくと、担当が代わっても同じ運用になります。
規格線と管理限界線の呼び分けを社内でそろえる
「限界を超えた」という言葉が、どちらの線の話か分からないと、対応の重さが変わります。規格外と、工程の異常。この2つの言葉を使い分けると決めておきます。
図と一緒に、その日の条件を残す
点だけが並んでいる図は、後から読めません。材料のロット、作業者、設備の調整、気温。図の下に欄を作っておくと、異常が出たときに突き合わせられます。書くのは異常が出た日だけでも構いません。
よくある質問
- Q. 管理限界線と規格線は何が違いますか。
- 規格線は図面や顧客が決めた合否の線で、製品1個ごとの判定に使います。管理限界線は工程のばらつきから計算した線で、工程の状態を見るためのものです。別のものなので、混ぜません。
- Q. 全部規格内なのに管理図が異常になりました。
- 矛盾ではありません。不良はまだ出ていないが、工程に何かが起きているという意味です。むしろ、不良が出る前に気づけた状態です。
- Q. どの種類の管理図を使えばよいですか。
- 寸法や重さのように数字で測れるものは平均値と範囲の管理図、不適合品の数を数えるものは不適合品率の管理図です。迷ったら、数字で測れるものは数字のまま使います。
- Q. 1組は何個にしますか。
- 4個か5個が一般的です。同じ条件で連続して取れた分を1組にします。朝と夕方を混ぜると、ばらつきの中に時間の差が入ってしまいます。
- Q. 線を超えていなければ安心ですか。
- 並び方も見ます。中心線の片側に続けて並ぶ、続けて上がる、規則正しく揺れる。どれも工程が変わった合図です。線を超える前に出ます。
- Q. 点がぶれるたびに設備を調整してよいですか。
- 調整しすぎると、かえってばらつきが大きくなります。普段のばらつきの範囲なら触らないのが管理図を使う理由の1つです。
- Q. 線はいつ引き直しますか。
- 設備や条件を大きく変えたとき、半年に1回など、時期を決めておきます。引き直した日を図に書いておくと、前後の比較ができます。
- Q. 何枚くらい作ればよいですか。
- 1つの職場で3枚から5枚で十分に働きます。20枚あっても誰も見ません。不具合が出ている工程と、顧客に届く特性から始めます。
- Q. 少量多品種でも使えますか。
- 同じものを続けて作らない場合は、並べて比べる前提が崩れます。品種ごとの初物検査と条件の記録のほうが実務に合います。
- Q. 点だけが並んだ図では読めません。
- 図の下に、材料のロット、作業者、設備の調整、気温を書く欄を作ります。異常が出た日だけ書くのでも構いません。突き合わせの材料になります。
- Q. 点を打つのは誰がやりますか。
- 測ったその場で現場の人が打ちます。事務所でまとめて入力すると、気づくのが翌日以降になります。手書きで構いません。
- Q. 見る場はどう作りますか。
- 朝礼で30秒、前日の図を見るだけで足ります。見る人が決まっていない図は、必ず止まります。
- Q. 規格外と工程の異常を、社内でどう呼び分けますか。
- 言葉を2つに分けて決めておきます。「規格外」と「工程の異常」。どちらの線の話か分からないと、対応の重さが変わってしまいます。
- Q. 全部の工程で作る必要がありますか。
- ありません。1つの職場で3枚から5枚で十分に働きます。不具合が出ている工程と、顧客に届く特性から始めます。
- Q. 点が少ない工程ではどうしますか。
- 1日1点しか取れないなら、平均も範囲も出せません。測った値をそのまま時間順に並べた折れ線にして、傾向だけを見ます。
- Q. 改善の効果を管理図で示せますか。
- 示せます。改善の前後で線を引き直すと、ばらつきが小さくなったことが目に見えます。引き直した日を図に書いておくと、前後を比べられます。
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-09-22時点のものです。