工程FMEAとは?点数を付けたあとが本番になる
工程FMEAは、工程のどこで何が起こりうるかを先に洗い出して、危ないところに手を打つための道具です。製品の設計を対象にする設計FMEAに対して、作り方のほうを対象にします。
やり方は表に埋めていく形で、書き方の説明はどこにでもあります。実務で止まるのは、点数を付けたあとです。点数の高い順に並んだところで、何から手をつけるかが決まらない。
この記事では、工程FMEAを、工程の分け方から点数のあとの動かし方まで、止まりやすいところを中心にまとめます。
この記事の内容(9項目)
工程FMEAは5つの列でできている
様式はいろいろありますが、骨格は同じです。
| 列 | 書くこと | 問い |
|---|---|---|
| 工程 | 対象の作業 | どこの話か |
| 故障モード | その工程で起こりうる不具合の形 | 何が起きるか |
| 影響 | 起きたら後工程やお客様がどうなるか | どれだけ困るか |
| 原因 | なぜそれが起きるか | どこから来るか |
| 現在の管理 | いま何で防いで/見つけているか | 気づけるか |
ポイントはここです。故障モードは「起きること」で、原因は「起きる理由」です。ここが混ざると、表の行がそろいません。
「寸法が外れる」が故障モード、「刃具が摩耗する」が原因です。逆に書くと、影響の欄に書くことが無くなります。
この5列を埋めてから、点数を付けます。点数から始めると、埋まっていない列があるまま数字だけが並びます。
「現在の管理」の列は、防ぐ側と見つける側に分けて書きます。治具で間違えられないようにしているのが防ぐ側、検査で見つけるのが見つける側です。
この2つを分けておくと、あとで点を付けるときに迷いません。見つけにくさの点は、見つける側の管理だけを見て付けます。
工程FMEAは工程の分け方で決まる
最初に工程をどう割るかで、表の大きさも中身も変わります。
粗く割ると、1行に複数の故障モードが入って読めなくなります。細かく割りすぎると、行が数百になって埋めきれません。
目安は、QC工程表と同じ粒度です。すでにQC工程表があるなら、その行をそのまま持ってきます。2つの表の行が対応していると、あとで対策を反映するときに楽になります。
そのうえで、危ないところだけ細かく割ります。全工程を同じ細かさで書く必要はありません。
工程の並べ方はQC工程表にまとめてあります。
新しい工程を立ち上げるときは、QC工程表を作る前にFMEAをやる順が向いています。危ないところが先に分かれば、管理特性の選び方が決まります。
すでに動いている工程なら、逆にQC工程表からFMEAを起こします。実際に管理している項目が分かっているぶん、早く埋まります。
工程FMEAの故障モードは、過去の記録から出す
想像だけで出すと、実際に起きることが抜けます。
| 材料 | 拾えるもの |
|---|---|
| 過去の不具合の記録 | 実際に起きたこと。いちばん確か |
| ヒヤリハット | 起きかけたこと |
| 他の製品・他のラインの記録 | 自分のところではまだ起きていないこと |
| 取引先からの指摘 | 外から見て危ないところ |
1つの工程につき、3つから5つ出れば足ります。それ以上出るときは、工程の割り方が粗すぎることが多くなります。
形で考えると出しやすくなります。多い・少ない、大きい・小さい、有る・無い、逆・違う、遅い・早い。この対で当てはめると、抜けが減ります。
過去の記録の集め方は月間の不具合集計、起きかけた事例はヒヤリハットが集まらないときにまとめてあります。
工程FMEAの点数は3つを掛ける
影響の大きさ、起こりやすさ、見つけにくさ。この3つに点を付けて掛けたものがRPNです。
| 見るもの | 高くなるのは |
|---|---|
| 影響の大きさ | お客様の手元まで届く、安全にかかわる |
| 起こりやすさ | 過去に何度も起きている |
| 見つけにくさ | 検査で見つからない、後工程でも分からない |
点の付け方は、社内で基準を決めます。1から10で付けるのが一般的ですが、1から5でも構いません。大事なのは、同じ基準で全員が付けることです。
基準が無いまま感覚で付けると、人によって倍ちがう点が出ます。そうなると、順に並べた意味がありません。
そのため、点数の定義を表の先頭に置いておきます。「10は安全にかかわる」「5は後工程で手直しが要る」といった形です。
3つのうち、いちばん動かせるのは見つけにくさです。影響の大きさは製品の性質で決まり、起こりやすさは工程の実力で決まります。
点を付けるときは、3人以上で付き合わせます。1人で付けると、その人の経験の範囲で偏ります。意見が割れたら、割れた理由を1行残します。
割れる行は、たいてい大事な行です。人によって見え方が違うということは、条件によって結果が変わる工程だということでもあります。
工程FMEAは点数の高い順に並べただけでは動かない
ここが止まりやすいところです。
RPNの大きい順に並べても、上位が「影響が大きいが滅多に起きない」ものばかりになることがあります。掛け算なので、1つが大きいと全体が上がるためです。
そのため、点数だけで切らずに、次の2つも見ます。
- 影響の大きさが単独で高いもの。安全にかかわるものは、頻度が低くても先に手を打つ
- 見つけにくさが高いもの。流出につながる。検査を足せば下げられることが多い
実務では、RPNの上位から2割、影響の点が最高のもの、見つけにくさの点が高いもの。この3つの束を対象にする形が扱いやすくなります。
逆に、全部の行に対策を付けようとすると終わりません。優先順位を付けるための表なので、付けないと決めた行があってよいものです。
付けないと決めた行には、その理由を1行書きます。「後工程で必ず見つかるため」「発生実績が過去5年で0件のため」。理由が書いてあれば、次に見直すときに判断をやり直せます。
理由が書いていないと、次の人が最初から全部を検討し直すことになります。
対象にした行は、担当と期限を入れます。表の中に期限の列を持っておくと、進んでいない行がひと目で分かります。
期限が過ぎている行が並んでいるなら、対象を広げすぎています。次の見直しでは数を絞ります。
工程FMEAの対策は、どの点を下げるかで書く
対策を書くときに、3つのどれを下げるのかを意識すると、内容が具体的になります。
| 下げるもの | 対策の形 |
|---|---|
| 起こりやすさ | そもそも間違えられない治具にする、工程を変える |
| 見つけにくさ | 検査を足す、頻度を上げる、自動で止まる仕組みを入れる |
| 影響の大きさ | 設計を変える。工程側では下げにくい |
強いのは、起こりやすさを下げる対策です。見つけにくさを下げる対策は、不具合が出ること自体は変わりません。
とはいえ、起こりやすさを下げるには設備や治具の投資が要ることが多く、すぐには入りません。先に検査で止めておいて、並行して進める形が現実的です。
対策を入れたら、点を付け直します。下がっていなければ、その対策は効いていません。
対策を標準に落とすところまでが一区切りです。落とし先は作業標準の改訂とQC工程表になります。
工程FMEAの更新が止まる理由
作ったあと、一度も更新されていない表をよく見かけます。
止まる理由はだいたい同じです。更新するきっかけが決まっていないためです。
そのため、変更点管理と結びつけます。材料が変わる、設備が入れ替わる、工程の順番が変わる、人が大きく替わる。このときにFMEAの該当行を見る、と決めておきます。
全体を見直す必要はありません。変わった工程の行だけを見れば足ります。1行なら10分で終わります。
逆に、年に1回まとめて見直す運用だけにすると、その1年はずれたままです。しかも量が多くて手が付かなくなります。
結びつけ方は変更点管理にまとめてあります。
工程FMEAとDRBFMの使い分け
どちらも先に問題を洗い出す道具ですが、対象が違います。
| 工程FMEA | DRBFM | |
|---|---|---|
| 対象 | 工程全体 | 変えたところ |
| 出発点 | 工程を順に見る | 前回との違いを見る |
| 向く場面 | 新しい工程の立ち上げ、定期の見直し | 設計や工程を一部変えるとき |
| かかる時間 | 長い | 変更点だけなので短い |
新しく立ち上げるなら工程FMEA、一部を変えるならDRBFM、という分け方が使いやすくなります。
両方を持つ場合は、DRBFMで出たことを工程FMEAの該当行に反映します。別々に持つと、どちらが最新か分からなくなります。
変更点に絞った見方はDRBFMにまとめてあります。
よくある質問
- Q. どこから手をつければよいですか。
- 過去に不具合が出た工程からです。実際に起きたことがある工程は、故障モードも原因も記録から拾えます。何も起きていない工程から始めると、想像で埋めることになって時間がかかります。
- Q. 設計FMEAが無くても作れますか。
- 作れます。工程FMEAは作り方のほうを対象にするので、設計側の検討が無くても進みます。ただし、設計で決まっている条件が厳しすぎることが原因の場合は、工程側だけでは下げられません。
- Q. 点数を付けずに使えますか。
- 使えます。故障モードと原因と現在の管理を並べるだけでも、抜けている管理が見えます。点数は優先順位を付けるための道具なので、対象が少ないときは並べるだけで足ります。
- Q. 工程FMEAとFMEAは違うものですか。
- FMEAという手法のうち、工程を対象にしたものが工程FMEAです。製品の設計を対象にするものは設計FMEAと呼ばれます。PFMEAという言い方も同じものを指します。
- Q. 故障モードと原因の区別がつきません。
- 故障モードは「起きること」、原因は「起きる理由」です。「寸法が外れる」が故障モードで、「刃具が摩耗する」が原因になります。迷ったら、後工程やお客様から見て何が困るかを書くと故障モードになります。
- Q. 点数は何点から対策しますか。
- 一律の基準はありません。社内で線を決めます。ただしRPNだけで切ると、影響が大きいが滅多に起きないものが漏れます。影響の点が最高のものは、RPNにかかわらず対象にする形が一般的です。
- Q. 全部の行に対策が要りますか。
- 要りません。優先順位を付けるための表なので、対策を付けないと決めた行があってよいものです。ただし、付けないと決めた理由は1行残しておきます。
- Q. 何人で作りますか。
- 製造・品質・技術から1人ずつ入る形が一般的です。1人で作ると、故障モードが自分の見えている範囲に偏ります。現場の作業者が入ると、実際に起きかけたことが出てきます。
- Q. 更新はどのタイミングでしますか。
- 変更が入ったときです。材料・設備・工程の順番・人が変わったら、その工程の行だけを見ます。定期の見直しだけにすると、その間はずれたままになります。
- Q. エクセルで作って問題ありませんか。
- 問題ありません。列が多いので、印刷範囲と文字の大きさだけ気をつけます。行が増えると読めなくなるので、工程ごとにシートを分ける形もよく使われています。
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