PDPC法とは?うまくいかない場合を先に書いておく
PDPC法は、目標にたどり着くまでの道筋を描きながら、途中でうまくいかなかった場合の迂回路も一緒に書いておく図です。過程決定計画図とも呼ばれ、新QC7つ道具のひとつです。
ふつうの計画は、うまくいく前提で書きます。PDPC法が違うのは、つまずく場面を先に書き込んでしまうところです。予定どおりに進まなかったときに、その場で考えずに済みます。
この記事では、PDPC法を、描く順番・アローダイアグラムとの使い分け・どこまで先を読むかまでまとめます。
この記事の内容(8項目)
PDPC法は「うまくいかない場合」を先に書く
通常の工程計画との違いは、1本道かどうかです。
| ふつうの計画 | PDPC法 | |
|---|---|---|
| 描くもの | うまくいったときの順番 | 順番+つまずいたときの分岐 |
| 前提 | 予定どおり進む | 途中で予定が崩れる |
| 崩れたとき | その場で考える | 書いてある道に移る |
| 向く場面 | やり方が決まっている作業 | 初めてやること、相手のある話 |
ポイントはここです。初めてやることほど、崩れる前提で描いておく価値があります。前例がある作業なら、ふつうの工程表で足ります。
新規の立ち上げ、初めての取引先との交渉、期限が決まっているトラブル対応。どれも途中で条件が変わる前提のものです。
新しい案件のリスクを洗い出す場面での使い方は新規案件のリスク確認にまとめてあります。
もうひとつの違いは、描く人の姿勢です。ふつうの計画は「こう進める」と決めるために描きますが、PDPC法は「何が起きうるか」を出すために描きます。
そのため、悲観的に描くほうがうまくいきます。楽観的に描いた図は分岐が少なく、結局ふつうの工程表と同じものになります。
PDPC法の描き方は4つに分かれる
順番は決まっています。
| 順番 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1 | 出発点と目標を決める | 目標は「いつまでに何がどうなっているか」で書く |
| 2 | うまくいく道筋を並べる | まず1本道で書く。5から10段くらい |
| 3 | 各段で「うまくいかない場合」を足す | 全部の段でなくてよい。崩れやすいところだけ |
| 4 | その場合の迂回路を書く | 迂回路も最後は目標につなげる |
2つ目で細かく書きすぎると、3つ目で分岐が増えすぎます。まず粗く1本道を引きます。
3つ目では、「ここは相手次第」「ここは日程が読めない」という段を選びます。自分だけで決められる段は、たいてい崩れません。
4つ目の迂回路が、この図でいちばん価値のある部分です。迂回路の先が目標につながっていないなら、その分岐はまだ考え切れていません。
迂回路の先が「関係者と相談」で止まっている図をよく見かけます。相談したあと何をするかまで書いて、はじめて使えます。
どうしても先が書けない分岐もあります。そのときは「ここから先は読めない」と正直に書いておきます。読めないと分かっているだけでも、そこに近づいたときの備えが変わります。
PDPC法とアローダイアグラムは目的が違う
どちらも順番を描く図なので混ざりますが、見たいものが違います。
| アローダイアグラム | PDPC法 | |
|---|---|---|
| 見るもの | 日程と、遅れが響く経路 | つまずきと、その迂回路 |
| 分岐 | 並行して進む作業 | うまくいかなかった場合 |
| 出てくる答え | どこが最短の期間を決めているか | 崩れたときにどう動くか |
| 前提 | 作業の順序と所要日数が読める | 読めない部分がある |
日程が組めるならアローダイアグラム、組めないならPDPC法、という分け方が実務では使いやすくなります。
両方使う場面もあります。全体の日程はアローダイアグラムで組んで、読めない部分だけPDPC法で分岐を書く形です。
日程のほうはアローダイアグラムにまとめてあります。
似た図に系統図もあります。系統図は目的を手段に展開していくもので、時間の流れは持ちません。「何をやるか」を漏れなく出すのが系統図、「どう進めるか」を描くのがPDPC法です。
手段の出し方は系統図にまとめてあります。系統図で手段を出してから、PDPC法で進め方を描く順もよく使われます。
PDPC法はどこまで先を読むか
分岐をいくつも重ねると、図が読めなくなります。
目安は、1つの段につき分岐は1つか2つ、分岐の先は2段先までです。それ以上先は、そこまで来てから描き足します。
実際、3段先の分岐を書いても、そこに着くころには前提が変わっています。書いた時間が無駄になります。
段の数も増やしすぎません。出発点から目標まで5段から10段が目安です。20段になると、1つ1つが細かすぎて、どこで崩れるかが見えなくなります。
細かい手順は、別の工程表に分けます。PDPC法の図には、判断が要る段だけを残します。
そのため、PDPC法の図は途中で描き直す前提で持ちます。最初に描いた図がそのまま最後まで使えることは、ほとんどありません。
だからこそ、清書に時間をかけません。手書きかエクセルの図形で、その場で直せる形にしておきます。
描き直したら、前の版も残します。どこで想定が外れたかが分かるためです。捨ててしまうと、次に同じ種類の案件をやるときに学びが残りません。
版を分けるのが面倒なら、同じ図の上に日付つきで書き足していく形でも足ります。読める形であれば方法は問いません。
PDPC法の分岐には、判断の基準を書く
分岐を書いただけでは、実際には動けません。いつ迂回路に移るかが決まっていないためです。
| 書き方 | 現場で起きること |
|---|---|
| 「回答が遅れたら」 | いつまで待つのか決まらず、待ち続ける |
| 「3営業日で回答が無ければ」 | 4日目に迂回路へ移れる |
日付、件数、金額。数えられるもので書きます。
判断する人も書いておきます。誰が「移る」と決めるかが決まっていないと、全員が様子を見ます。
期限つきの対応では、この2つが効きます。応急の対応を並行して進めるなら暫定対策と恒久対策の違いも併せて見ておきます。
PDPC法をトラブル対応に使う
期限の決まったトラブルは、この図が向いています。
たとえば、出荷までに原因が特定できるか分からない場面です。特定できた場合、できなかった場合、途中で別の不具合が見つかった場合。それぞれの先を先に書いておきます。
書いておく効果は2つあります。1つは、判断の時間が短くなること。もう1つは、関係する人に先に共有できることです。
共有しておくと、担当が不在のときにも動けます。期限のある対応でいちばん困るのは、決める人がつかまらないまま時間が過ぎることです。
分岐と基準が書いてあれば、その場にいる人が判断できます。あとから報告を受ける形にしておけば、止まりません。
とくに2つ目が効きます。「こうなったらこう動く」を先に伝えておけば、実際にそうなったときの連絡が短く済みます。
出荷を止めるかどうかの判断そのものは出荷停止の判断にまとめてあります。
お客様への連絡が絡む場面では、連絡の時点も図に入れます。原因が分かってから連絡するのか、分からない段階でいったん一報を入れるのか。ここは案件ごとに変わります。
回答の期限が決まっているなら、そこから逆算して各段の期限を入れます。期限の入っていないPDPC図は、順番だけの図になります。
PDPC法の図を記録として残す
終わったあとに、実際にどの道を通ったかを書き込みます。
想定した分岐のどれに入ったか、想定していなかったことが起きたか。この2つを残すと、次に似た案件をやるときの下敷きになります。
想定していなかったことが起きたなら、それは次の図では最初から分岐として書けます。図が回を重ねるごとに当たるようになります。
逆に、一度も通らなかった分岐は、次からは省いて構いません。図が軽くなります。
そのうえで、迂回路を通った案件は、なぜ本筋を通れなかったかを1行残します。同じ理由が続いているなら、そこは分岐ではなく工程そのものの問題です。
残す場所は、その案件の記録と同じところにします。図だけ別のフォルダに置くと、次に案件を振り返るときに見つかりません。
3件から5件たまると、自社でよく起きるつまずきの型が見えてきます。そこまで来ると、新しい案件の図は最初から当たりが良くなります。
よくある質問
- Q. PDPC法という名前はどこから来ていますか。
- Process Decision Program Chart の頭文字です。日本語では過程決定計画図と呼ばれます。名前は堅いですが、やっていることは「うまくいかなかったときの道を先に書いておく」だけです。
- Q. ふつうの工程表に分岐を書き足すのではだめですか。
- それでも構いません。分岐と迂回路と、移る基準が書いてあれば、呼び方は問いません。ただし工程表は日程を見るための形なので、分岐が増えると読みにくくなります。分岐が3つ以上出るなら、分けたほうが読めます。
- Q. 想定していないことが起きたらどうしますか。
- その場で図に書き足します。起きたことと、そのとき取った道を残せば、次の案件で使えます。図のとおりに進まなかったこと自体は失敗ではありません。読めなかった部分が分かったということです。
- Q. PDPC法はどんな場面で使いますか。
- 初めてやること、相手の反応で進み方が変わること、期限が決まっているトラブル対応です。やり方が決まっている作業なら、ふつうの工程表のほうが早く書けます。
- Q. アローダイアグラムとどちらを使いますか。
- 作業の順序と所要日数が読めるならアローダイアグラム、読めない部分があるならPDPC法です。全体はアローダイアグラムで組んで、読めない部分だけPDPC法にする形も使えます。
- Q. 分岐はどこまで書きますか。
- 1つの段につき1つか2つ、先は2段先までが目安です。それ以上先は前提が変わるので、そこまで来てから描き足します。
- Q. 図を清書したほうがよいですか。
- 読めれば手書きで構いません。PDPC法の図は途中で描き直す前提のものなので、清書に時間をかけると直しにくくなります。
- Q. どのタイミングで迂回路に移りますか。
- 移る基準を図に書いておきます。「3営業日で回答が無ければ」のように、日付や件数で書きます。基準が無いと、様子を見ているうちに期限が来ます。
- Q. 分岐が多くなりすぎます。
- 崩れやすい段だけに絞ります。自分たちだけで決められる段は、たいてい崩れません。相手がいる段、日程が読めない段、初めてやる段の3つに絞ると、分岐は自然に減ります。
- Q. できあがった図はどこに置きますか。
- 関係する人がその場で見られるところです。案件の期間だけ壁に貼る形でも構いません。しまい込むと、実際に分岐に差しかかったときに誰も見ません。
- Q. 1人で描いてもよいですか。
- 描けますが、つまずく場面の想定が偏ります。工程や立場の違う人に一度見てもらうと、書いていない分岐が出てきます。
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