原因を掘る

FTA分析とは?重なって起きる不具合を、図で分けて書く

公開 2026-09-11更新 2026-09-22 執筆 改善板 編集部

FTA分析は、起きてほしくない出来事を上に置いて、それが起きる条件を下へたどっていく図です。フォールトツリー解析とも呼ばれ、安全や信頼性の分野で長く使われてきました。

なぜなぜ分析と似て見えますが、1つだけ決定的に違うところがあります。2つ以上の条件が重なったときだけ起きる、という形を図に書けることです。この記事では、その書き分けを中心にまとめます。

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この記事の内容(8項目)

FTA分析は、上から下へたどる

FTA分析では、いちばん上に起きてほしくない出来事を1つ置きます。そこから「それが起きるには何が必要か」と下へ下ろしていきます。

下ろすときに使う記号が2つあります。ここがこの図の中心です。

または

下のどれか1つが起きれば、上が起きる
単独で起きる要因。

かつ

下の全部がそろって初めて、上が起きる
重なって初めて起きる要因。

この2つを書き分けられることが、FTA分析の値打ちです。「かつ」でつながっているところは、どれか1つを断てば止まります。対策の的が、ここで自動的に決まります。

FTA分析の下ろし方
1. 上を決める起きてほしくない1つ
2. 条件を出す何が要るか
3. 記号を選ぶかつか、または
4. 止める確かめられる段まで
3を適当に選ぶと、図の形は同じでも結論が変わる

かつとまたはを、正しく選ぶ

記号の選び方を間違えると、対策が変わります。ここだけは丁寧に見ます。

記号対策の向き
材料が違う/条件がずれている/工具が摩耗または全部にそれぞれ手を打つ必要がある
寸法が上限寄り かつ 相手部品も上限寄りかつどちらか片方を狭めれば止まる
検査をすり抜けた かつ 後工程でも気づかないかつどちらか1つに気づく仕組みを足す

実務で効くのは、3行目の形です。流出の不具合は、たいてい「見逃した」と「その先でも気づかない」が重なって起きます。片方を断てば流出は止まるので、対策が軽くなります。

迷ったら、こう聞きます。「下の1つだけが起きたとき、上は起きるか」。起きるなら「または」、起きないなら「かつ」です。この1問でほとんど決まります。

ときどき起きる不具合は「かつ」を疑う

毎回は起きないのに、たまに起きる。この形は、複数の条件が重なったときだけ成立していることが多くあります。なぜなぜ分析では1本の線しか書けないので、この形は追えません。

条件が重なる形が疑われるときは、発生した日の条件を横に並べて、共通しているものを探すところから始めます。再現試験で条件を振ってみると、重なりがはっきりします。

どこまで下ろすか

下ろしすぎると、材料の分子の話まで行ってしまいます。止める場所の目安は3つです。

  • 確かめられるところ|測る、見る、記録を引く。どれかで確認できる
  • 手を打てるところ|自社で変えられる。設備、手順、検査、設計
  • それ以上分けても対策が変わらないところ|分けても打つ手が同じなら、そこで止める

3つ目が実務的です。分けた結果、対策が同じになるなら、分けた意味がありません。

末端には、確かめる方法を書く

末端まで下りたら、そこにどうやって確かめるかを1行書きます。「治具の固定を測る」「入荷記録を引く」「実際に作って見る」。これが書けない末端は、まだ抽象的です。

確かめた結果を図に書き戻す

調べた末端には、日付と結果を書きます。違っていた枝も消さずに残します。消すと、後から来た人が同じところをもう一度調べます。特性要因図と同じ扱い方です。

確率の計算は、必要になってから

FTA分析には、末端の発生確率から上の確率を計算する使い方もあります。ただし、現場の不具合解析では、確率まで出さなくても十分に働きます。数値の根拠がそろわないまま計算すると、桁だけが独り歩きします。

なぜなぜ分析やFMEAとの使い分け

似た道具が3つあるので、役目で分けて覚えます。

道具向きいちばん向く場面
なぜなぜ分析上から下へ1本すでに起きた不具合を1件掘る
FTA分析上から下へ枝分かれ条件が重なって起きる。流出の構造を見る
FMEA下から上へ部位や工程から、何が起きうるかを洗う

使う順番の目安はこうです。起きたことを掘るならなぜなぜ、たまにしか起きないならFTA、これから起きうることを洗うならFMEA。

なぜなぜで止まったらFTAへ移る

なぜなぜ分析を進めていて、「これとこれが重なったときだけ起きる」と分かったら、そこからFTAに書き直します。1本の線では書けない形に入った合図です。

変更点があるならDRBFMも見る

何かを変えた後に出た不具合なら、変更点に絞って心配点を出す進め方も併用できます。DRBFMで変更の影響を洗ってから、残った不明点をFTAで構造にすると、重複が減ります。

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流出の側を書くと、対策が軽くなる

FTA分析でいちばん役に立つ使い方が、流出の構造を書くことです。

顧客に届いた不具合は、必ず2つが重なっています。作ってしまったことと、出荷までに気づけなかったこと。この2つを「かつ」でつなぐところから始めます。

流出は「かつ」でできている
作ってしまった発生の側
かつ
気づけなかった流出の側
顧客に届いた
どちらか片方を断てば、顧客には届かない

この形を書くと、対策の選択肢が2倍になります。発生側を直すのに時間がかかるなら、先に流出側だけを止めるという判断ができます。

流出側をさらに下ろす

「気づけなかった」の下には、たいてい「または」が並びます。検査項目に無かった、見たが判定できなかった、記録はあるが誰も見ていない。それぞれが単独で流出につながるので、記号は「または」です。

気づける場所を1つ足す

流出側の枝を見ると、どこに気づける仕組みを足せばよいかが分かります。工程の中か、出荷前か、顧客の手前か。いちばん早く気づける場所に1つ足すのが、費用対効果の高い手になります。

出荷前の検査が抜取である場合、そこは「必ず気づく」枝にはなりません。AQLと抜取検査の考え方を踏まえて、抜取で通したものを全数確認したことにしないよう、図の上でも分けて書きます。

FTA分析が向かない場面

次の3つでは、図を書いても前に進みません。

場面なぜ向かないか代わりに使うもの
原因の候補が1つも浮かばない下ろす枝が出ない特性要因図で候補を広げる
いま止まっていて急ぐ構造を書く時間が無い初動の対応を先に回す
原因がはっきり1つに絞れている枝分かれが起きないそのまま対策の検討へ

図を大きくしすぎない

段が5つを超えると、紙に収まらず読めなくなります。3段から4段で、末端が確かめられる形になるのがちょうどよい大きさです。大きくなるなら、枝を1本取り出して別紙にします。

記号にこだわりすぎない

正式なFTAには、ここで挙げた2つ以外にも記号があります。社内で共有するだけなら、「かつ」と「または」の2つで十分です。記号の勉強に時間を使うより、書き分けを正しくするほうが結果につながります。

社内で回すための3つの決めごと

FTA分析を使うために決めることは、3つです。

  • 記号の判定|「下の1つだけが起きたとき、上は起きるか」で決める。この1問を全員で共有する
  • 末端の基準|確かめる方法を1行書けるところまで下ろす。書けなければもう1段
  • 流出側を必ず書く|顧客に届いた不具合は、発生と流出を「かつ」でつないでから下ろす

この3つを紙の隅に印刷しておくと、書く人が代わっても同じ形になります。

図は手書きで足りる

作図の道具を用意する必要はありません。白板に四角と線を書けば成立します。写真を1枚撮って、末端と確かめる方法だけを文字で残します。

たまに起きる不具合の記録を集めておく

条件が重なって起きる形は、1件だけでは見えません。発生した日の条件を横に並べた表を持っておくと、3件たまったところで共通点が浮かびます。FTAを書くのはその後で足ります。

よくある質問

Q. FTA分析となぜなぜ分析はどう違いますか。
なぜなぜ分析は1本の線で掘ります。FTA分析は枝分かれさせられるので、2つ以上の条件が重なったときだけ起きる形を書けます。ここが決定的な違いです。
Q. 「かつ」と「または」はどう見分けますか。
「下の1つだけが起きたとき、上は起きるか」と聞きます。起きるなら「または」、起きないなら「かつ」です。この1問でほとんど決まります。
Q. FMEAとはどう使い分けますか。
FMEAは部位や工程から上へ洗う向き、FTAは起きてほしくない事象から下へたどる向きです。これから起きうることを洗うならFMEA、たまに起きる不具合を解くならFTAです。
Q. どこまで下ろせばよいですか。
確かめられて、手を打てるところまでです。それ以上分けても対策が変わらないなら、そこで止めます。末端には確かめる方法を1行書きます。
Q. 確率の計算は必要ですか。
現場の不具合解析では、出さなくても十分に働きます。根拠のそろわない数値で計算すると、桁だけが独り歩きします。必要になってからで構いません。
Q. たまにしか起きない不具合に使えますか。
いちばん向く場面です。複数の条件が重なったときだけ成立していることが多いためです。発生した日の条件を並べて共通点を探すところから始めます。
Q. 流出の分析にも使えますか。
使えます。顧客に届いた不具合は「作ってしまった」かつ「気づけなかった」でできています。片方を断てば届きません。対策の選択肢が2倍になります。
Q. 記号を全部覚える必要がありますか。
ありません。社内で共有するだけなら「かつ」と「または」の2つで十分です。記号より、書き分けを正しくするほうが結果につながります。
Q. 図が大きくなりすぎます。
3段から4段が目安です。段が5つを超えると紙に収まらず読めません。大きくなるなら、枝を1本取り出して別紙にします。
Q. 確かめて違っていた枝は消しますか。
消しません。日付と結果を書いて残します。消すと、後から来た人が同じところをもう一度調べることになります。
Q. 作図の道具が必要ですか。
不要です。白板に四角と線を書けば成立します。写真を1枚撮って、末端と確かめる方法だけを文字で残せば足ります。
Q. 1件目からFTAを書けますか。
条件が重なる形は1件だけでは見えません。発生した日の条件を横に並べた表を持っておき、3件たまったところで書くと当たります。
Q. なぜなぜ分析の途中から移ってよいですか。
移ってよい場面です。「これとこれが重なったときだけ起きる」と分かったら、1本の線では書けません。そこからFTAに書き直します。
Q. 起きてほしくない出来事は、いくつ置けますか。
1つです。上に2つ置くと、下の枝がどちらのものか分からなくなります。2つあるなら、図を2枚に分けます。末端が重なっても構いません。
Q. 対策はどの段に打ちますか。
「かつ」でつながっているところが狙い目です。下のどれか1つを断てば、上は起きません。「または」の下は、全部にそれぞれ手を打つ必要があります。
Q. 図はどれくらいの時間で書きますか。
1回30分で区切ります。その場で末端まで下りなくても構いません。確かめる担当を決めて、結果を持ってもう一度集まるほうが早く進みます。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-09-22時点のものです。