FTA分析とは?重なって起きる不具合を、図で分けて書く
FTA分析は、起きてほしくない出来事を上に置いて、それが起きる条件を下へたどっていく図です。フォールトツリー解析とも呼ばれ、安全や信頼性の分野で長く使われてきました。
なぜなぜ分析と似て見えますが、1つだけ決定的に違うところがあります。2つ以上の条件が重なったときだけ起きる、という形を図に書けることです。この記事では、その書き分けを中心にまとめます。
この記事の内容(8項目)
FTA分析は、上から下へたどる
FTA分析では、いちばん上に起きてほしくない出来事を1つ置きます。そこから「それが起きるには何が必要か」と下へ下ろしていきます。
下ろすときに使う記号が2つあります。ここがこの図の中心です。
または
下のどれか1つが起きれば、上が起きる単独で起きる要因。
かつ
下の全部がそろって初めて、上が起きる重なって初めて起きる要因。
この2つを書き分けられることが、FTA分析の値打ちです。「かつ」でつながっているところは、どれか1つを断てば止まります。対策の的が、ここで自動的に決まります。
かつとまたはを、正しく選ぶ
記号の選び方を間違えると、対策が変わります。ここだけは丁寧に見ます。
| 例 | 記号 | 対策の向き |
|---|---|---|
| 材料が違う/条件がずれている/工具が摩耗 | または | 全部にそれぞれ手を打つ必要がある |
| 寸法が上限寄り かつ 相手部品も上限寄り | かつ | どちらか片方を狭めれば止まる |
| 検査をすり抜けた かつ 後工程でも気づかない | かつ | どちらか1つに気づく仕組みを足す |
実務で効くのは、3行目の形です。流出の不具合は、たいてい「見逃した」と「その先でも気づかない」が重なって起きます。片方を断てば流出は止まるので、対策が軽くなります。
ときどき起きる不具合は「かつ」を疑う
毎回は起きないのに、たまに起きる。この形は、複数の条件が重なったときだけ成立していることが多くあります。なぜなぜ分析では1本の線しか書けないので、この形は追えません。
条件が重なる形が疑われるときは、発生した日の条件を横に並べて、共通しているものを探すところから始めます。再現試験で条件を振ってみると、重なりがはっきりします。
どこまで下ろすか
下ろしすぎると、材料の分子の話まで行ってしまいます。止める場所の目安は3つです。
- 確かめられるところ|測る、見る、記録を引く。どれかで確認できる
- 手を打てるところ|自社で変えられる。設備、手順、検査、設計
- それ以上分けても対策が変わらないところ|分けても打つ手が同じなら、そこで止める
3つ目が実務的です。分けた結果、対策が同じになるなら、分けた意味がありません。
末端には、確かめる方法を書く
末端まで下りたら、そこにどうやって確かめるかを1行書きます。「治具の固定を測る」「入荷記録を引く」「実際に作って見る」。これが書けない末端は、まだ抽象的です。
確かめた結果を図に書き戻す
調べた末端には、日付と結果を書きます。違っていた枝も消さずに残します。消すと、後から来た人が同じところをもう一度調べます。特性要因図と同じ扱い方です。
確率の計算は、必要になってから
FTA分析には、末端の発生確率から上の確率を計算する使い方もあります。ただし、現場の不具合解析では、確率まで出さなくても十分に働きます。数値の根拠がそろわないまま計算すると、桁だけが独り歩きします。
なぜなぜ分析やFMEAとの使い分け
似た道具が3つあるので、役目で分けて覚えます。
| 道具 | 向き | いちばん向く場面 |
|---|---|---|
| なぜなぜ分析 | 上から下へ1本 | すでに起きた不具合を1件掘る |
| FTA分析 | 上から下へ枝分かれ | 条件が重なって起きる。流出の構造を見る |
| FMEA | 下から上へ | 部位や工程から、何が起きうるかを洗う |
使う順番の目安はこうです。起きたことを掘るならなぜなぜ、たまにしか起きないならFTA、これから起きうることを洗うならFMEA。
なぜなぜで止まったらFTAへ移る
なぜなぜ分析を進めていて、「これとこれが重なったときだけ起きる」と分かったら、そこからFTAに書き直します。1本の線では書けない形に入った合図です。
変更点があるならDRBFMも見る
何かを変えた後に出た不具合なら、変更点に絞って心配点を出す進め方も併用できます。DRBFMで変更の影響を洗ってから、残った不明点をFTAで構造にすると、重複が減ります。
流出の側を書くと、対策が軽くなる
FTA分析でいちばん役に立つ使い方が、流出の構造を書くことです。
顧客に届いた不具合は、必ず2つが重なっています。作ってしまったことと、出荷までに気づけなかったこと。この2つを「かつ」でつなぐところから始めます。
この形を書くと、対策の選択肢が2倍になります。発生側を直すのに時間がかかるなら、先に流出側だけを止めるという判断ができます。
流出側をさらに下ろす
「気づけなかった」の下には、たいてい「または」が並びます。検査項目に無かった、見たが判定できなかった、記録はあるが誰も見ていない。それぞれが単独で流出につながるので、記号は「または」です。
気づける場所を1つ足す
流出側の枝を見ると、どこに気づける仕組みを足せばよいかが分かります。工程の中か、出荷前か、顧客の手前か。いちばん早く気づける場所に1つ足すのが、費用対効果の高い手になります。
出荷前の検査が抜取である場合、そこは「必ず気づく」枝にはなりません。AQLと抜取検査の考え方を踏まえて、抜取で通したものを全数確認したことにしないよう、図の上でも分けて書きます。
FTA分析が向かない場面
次の3つでは、図を書いても前に進みません。
| 場面 | なぜ向かないか | 代わりに使うもの |
|---|---|---|
| 原因の候補が1つも浮かばない | 下ろす枝が出ない | 特性要因図で候補を広げる |
| いま止まっていて急ぐ | 構造を書く時間が無い | 初動の対応を先に回す |
| 原因がはっきり1つに絞れている | 枝分かれが起きない | そのまま対策の検討へ |
図を大きくしすぎない
段が5つを超えると、紙に収まらず読めなくなります。3段から4段で、末端が確かめられる形になるのがちょうどよい大きさです。大きくなるなら、枝を1本取り出して別紙にします。
記号にこだわりすぎない
正式なFTAには、ここで挙げた2つ以外にも記号があります。社内で共有するだけなら、「かつ」と「または」の2つで十分です。記号の勉強に時間を使うより、書き分けを正しくするほうが結果につながります。
社内で回すための3つの決めごと
FTA分析を使うために決めることは、3つです。
- 記号の判定|「下の1つだけが起きたとき、上は起きるか」で決める。この1問を全員で共有する
- 末端の基準|確かめる方法を1行書けるところまで下ろす。書けなければもう1段
- 流出側を必ず書く|顧客に届いた不具合は、発生と流出を「かつ」でつないでから下ろす
この3つを紙の隅に印刷しておくと、書く人が代わっても同じ形になります。
図は手書きで足りる
作図の道具を用意する必要はありません。白板に四角と線を書けば成立します。写真を1枚撮って、末端と確かめる方法だけを文字で残します。
たまに起きる不具合の記録を集めておく
条件が重なって起きる形は、1件だけでは見えません。発生した日の条件を横に並べた表を持っておくと、3件たまったところで共通点が浮かびます。FTAを書くのはその後で足ります。
よくある質問
- Q. FTA分析となぜなぜ分析はどう違いますか。
- なぜなぜ分析は1本の線で掘ります。FTA分析は枝分かれさせられるので、2つ以上の条件が重なったときだけ起きる形を書けます。ここが決定的な違いです。
- Q. 「かつ」と「または」はどう見分けますか。
- 「下の1つだけが起きたとき、上は起きるか」と聞きます。起きるなら「または」、起きないなら「かつ」です。この1問でほとんど決まります。
- Q. FMEAとはどう使い分けますか。
- FMEAは部位や工程から上へ洗う向き、FTAは起きてほしくない事象から下へたどる向きです。これから起きうることを洗うならFMEA、たまに起きる不具合を解くならFTAです。
- Q. どこまで下ろせばよいですか。
- 確かめられて、手を打てるところまでです。それ以上分けても対策が変わらないなら、そこで止めます。末端には確かめる方法を1行書きます。
- Q. 確率の計算は必要ですか。
- 現場の不具合解析では、出さなくても十分に働きます。根拠のそろわない数値で計算すると、桁だけが独り歩きします。必要になってからで構いません。
- Q. たまにしか起きない不具合に使えますか。
- いちばん向く場面です。複数の条件が重なったときだけ成立していることが多いためです。発生した日の条件を並べて共通点を探すところから始めます。
- Q. 流出の分析にも使えますか。
- 使えます。顧客に届いた不具合は「作ってしまった」かつ「気づけなかった」でできています。片方を断てば届きません。対策の選択肢が2倍になります。
- Q. 記号を全部覚える必要がありますか。
- ありません。社内で共有するだけなら「かつ」と「または」の2つで十分です。記号より、書き分けを正しくするほうが結果につながります。
- Q. 図が大きくなりすぎます。
- 3段から4段が目安です。段が5つを超えると紙に収まらず読めません。大きくなるなら、枝を1本取り出して別紙にします。
- Q. 確かめて違っていた枝は消しますか。
- 消しません。日付と結果を書いて残します。消すと、後から来た人が同じところをもう一度調べることになります。
- Q. 作図の道具が必要ですか。
- 不要です。白板に四角と線を書けば成立します。写真を1枚撮って、末端と確かめる方法だけを文字で残せば足ります。
- Q. 1件目からFTAを書けますか。
- 条件が重なる形は1件だけでは見えません。発生した日の条件を横に並べた表を持っておき、3件たまったところで書くと当たります。
- Q. なぜなぜ分析の途中から移ってよいですか。
- 移ってよい場面です。「これとこれが重なったときだけ起きる」と分かったら、1本の線では書けません。そこからFTAに書き直します。
- Q. 起きてほしくない出来事は、いくつ置けますか。
- 1つです。上に2つ置くと、下の枝がどちらのものか分からなくなります。2つあるなら、図を2枚に分けます。末端が重なっても構いません。
- Q. 対策はどの段に打ちますか。
- 「かつ」でつながっているところが狙い目です。下のどれか1つを断てば、上は起きません。「または」の下は、全部にそれぞれ手を打つ必要があります。
- Q. 図はどれくらいの時間で書きますか。
- 1回30分で区切ります。その場で末端まで下りなくても構いません。確かめる担当を決めて、結果を持ってもう一度集まるほうが早く進みます。
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