重大製品事故の報告|10日以内の期限と判定の流れ、社内記録の作り方
製品を作ったり輸入したりしている会社にとって、事故の連絡はいつ来るか分かりません。販売店からの電話や、お客様窓口へのメールで届きます。ときには報道で初めて知ることもあります。
消費生活用製品(=主に一般の消費者が生活で使う製品)を作る・輸入する事業者には、報告の義務があります。重大製品事故を知った日から10日以内に、消費者庁長官へ報告するという決まりです(消費生活用製品安全法35条)。
この記事では、まず報告が要るかどうかの見分け方を整理します。そのうえで、10日の数え方と、報告書に書く項目を順に見ていきます。最後に、期限に間に合わせるための社内の記録の残し方をまとめます。
この記事の内容(10項目)
重大製品事故の報告とは
重大製品事故の報告は、製品の事故の情報を国が早く集めるための仕組みです。集めた情報で、消費者に危険を知らせます。国は必要があると認めるとき、製品名や事故の内容を公表します(36条)。
報告の義務があるのは、その製品を製造または輸入している事業者です。小売店や修理業者ではありません。報告する事項は、法律で4つに絞られています。
| 報告する事項 | 中身 |
|---|---|
| 製品の名称と型式 | 品名・ブランド名、機種・型式 |
| 事故の内容 | いつ・どこで・どんな事故か、人的被害、火災の有無 |
| 製造または輸入した数量 | その型式の製造・輸入の時期と数量 |
| 販売した数量 | その型式の販売の時期と数量 |
報告先は消費者庁長官です。期限と様式は、内閣府令(=法律の細かい決まりを書いた命令)で決まっています(35条2項、内閣府令3条)。報告書は日本語で書きます。
重大製品事故に当たるかの判定
報告が要るかどうかは、2段階で決まります。「製品事故か」と「重大か」です。
製品事故の範囲は広い
製品事故とは、消費生活用製品を使っていて起きた事故のことです。人の命や体に害が出たものが入ります。製品が壊れて、害が出るおそれがあるものも入ります。
大事なのは、法律の書き方です。欠陥によって生じたものでないことが明らかな事故以外は、すべて製品事故に入ります(2条6項)。欠陥があると決まったものだけが対象ではありません。「使い方が悪かったのでは」と思っても、それがはっきりするまでは製品事故として扱います。
重大の要件は5つ
施行令6条で、次のどれかに当たれば重大製品事故になります。
- 死亡
- 治療に30日以上かかるけがや病気
- 治ったとき(症状がそれ以上よくならない状態を含む)に、内閣府令で決まった体の障害が残るもの
- 一酸化炭素による中毒
- 火災
- 主に一般消費者が生活で使う製品かはい次へいいえこの制度の対象外
- 製品の欠陥が原因の可能性が残る事故かはい次へいいえ欠陥が原因でないとはっきりしている(製品事故に当たらない)
- 死亡・治療30日以上・後遺障害・CO中毒・火災のどれかかはい次へいいえ重大でない製品事故
- 自社が製造または輸入しているかはい報告義務ありいいえ製造・輸入事業者へ通知
知った日から10日以内に消費者庁長官へ報告
火災は、けが人がいなくても要件に当たります。製品から火が出て、床が焦げただけの事故もそうです。これも重大製品事故になりえます。この点は、社内で共有しておきたいところです。
報告の期限は「知った日」から10日
期限は内閣府令3条で決まっています。重大製品事故が起きたことを知った日から数えて10日以内に、報告書を出します。知った日を1日目として数えます。9月2日に知ったら、期限は9月11日です。
「知った日」を社内でそろえる
事故の情報は、品質保証の担当より先に、営業やお客様窓口に入ることがよくあります。担当に回ってくるまでに数日たつと、その分だけ残りの日数が減ります。
そこで、社内の誰かが最初に情報を受けた日を「知った日」とすると決めておきます。こうしておくと、期限を見誤りにくくなります。
治療期間が分からない間も期限は進む
けがの治療に30日以上かかるかどうかは、事故の直後には分からないことがあります。それでも、判定が決まらない間に期限は進みます。
そこで、判定中のまま報告の準備を並べて進めます。重大でないと分かった時点で止めれば、期限を過ぎる心配がありません。
重大製品事故の報告書に書く項目
報告書の形は、内閣府令の様式第一で決まっています。法律の4つの事項は、実際の様式では次のような欄に分かれます。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 製品名・機種・型式 | 品名(ブランド名)、機種・型式、生産地名 |
| 事故発生年月日 | 年月日と、午前・午後の時刻 |
| 火災・一酸化炭素中毒・製品被害 | それぞれ有・無 |
| 人的被害区分 | 死亡、治療30日以上、30日未満の人数と、後遺障害の種類ごとの人数 |
| 事故内容 | 事実関係、同じ型式の重大製品事故の件数、原因(10区分)、再発防止の措置(14区分)、原因を調査した機関、事故品を保管している機関 |
| 事故を認識した契機 | どこから知ったかと、認識した年月日・時刻 |
| 事故発生場所 | 都道府県からの住所と具体的な場所 |
| 製造・輸入・販売の時期と数量 | その型式について、それぞれの期間と数量 |
| 事業者の情報 | 名称・所在地・担当者、所属の業界団体、特定輸入事業者の場合は国内管理人 |
2025年12月25日に、法律の改正(令和6年法律第67号)が施行されました。海外から日本の消費者へ直接売る事業者への対応を強める改正です。そのため様式にも、特定輸入事業者(=海外から直接売る事業者)の国内管理人を書く欄があります。
数量の欄は、意外に時間がかかります。出荷の記録を、型式ごとにさかのぼる必要があるからです。判定と並べて、数量を集める担当を最初に決めておくと、報告書づくりが詰まりません。
原因が分からなくても報告は出す
10日以内に原因まで突き止めるのは、多くの場合できません。そのため報告書の原因欄には、「調査未着手又は調査中のため不明」という選択肢があります。これを選んだときは、調べる方針や時期など、今後の予定を書きます。
再発防止の措置の欄にも「検討中」があります。こちらは、対応の方針と時期を書きます。
原因が分かってから報告
- 調査に数週間かかる
- その間に期限を過ぎる
- 同じ型式の事故が続いても国は知らない
分かっている事実で報告
- 10日以内に出せる
- 原因は「調査中」とし予定を書く
- 分かった段階で追って伝える
報告をしなかったり、うその報告をしたりしたときは、国から命令が出ることがあります。内閣総理大臣(消費者庁)が、事故の情報を集めて管理し、伝えるための体制を整えるよう命じるものです(37条)。
この命令に違反すると、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です(58条5号)。法人にも100万円以下の罰金が科されます(60条2号)。
原因の調べ方は是正処置とはで、報告とは別の流れとして進めます。
販売店・修理業者・通販モールに求められること
報告の義務は、製造・輸入事業者にあります。ただ、事故の情報は販売や修理の現場に先に届くことが多くあります。そこで法律は、周りの事業者にも役割を決めています。
| 立場 | 求められること | 根拠 |
|---|---|---|
| 小売販売・修理・設置工事の事業者 | 重大製品事故を知ったら、製造・輸入事業者へ通知するよう努める | 34条3項 |
| 通販モールの運営者(取引デジタルプラットフォーム提供者) | 重大製品事故を知ったら、製造・輸入・小売の事業者へ通知するよう努める | 34条4項 |
| 販売事業者・通販モールの運営者 | 製造・輸入事業者がとる回収などの措置に協力するよう努める。命令を受けてとる措置には協力しなければならない | 38条2項・3項 |
製造・輸入事業者の側から見ると、販売店やモールから連絡が来た日も「知った日」になりうるということです。販売店との契約や連絡網に、事故の連絡を受ける窓口を1つ書いておきましょう。そうすれば、社内で情報が迷子になりません。
重大でない製品事故も記録に残す
重大の要件に当たらない製品事故には、35条の報告義務はありません。ただし34条1項に、努力義務(=できる限りそうするよう求める決まり)があります。製造・輸入・小売の事業者は、製品事故の情報を集めて、消費者にきちんと伝えるよう努めます。
重大でない事故では、同じ型式で何度も起きているかが大事な情報です。報告書の様式にも、同じ機種・型式で起きた重大製品事故の件数を書く欄があります。過去の事故を数えられることが前提になっているわけです。
経済産業省が受け持つ製品では、重大でない製品事故の情報をNITE(ナイト。製品の事故を調べる独立行政法人)が集めています。業界団体を通じて報告を求められているなら、その手順にも沿ってください。
「重大でない」と判定した事故も、判定した人と理由を添えて同じ表に残します。こうしておけば、あとで同じ型式の事故を数えるときに漏れません。クレームとして受けた件の初動は、クレーム初動対応の記事も参考になります。
重大製品事故の報告に備える社内の記録
報告書は、国に出すための書類です。受付から判定までの経過は残りません。そこで社内には、連絡を受けた日から報告した日までを1行で追う記録を別に持っておきます。そうすれば、期限の管理と、判定の説明が両方できます。
報告書(様式第一)
- 重大と判定したものだけ
- 消費者庁長官へ出す
- 1件1枚
- 提出した時点の内容
社内の判定・対応記録
- 連絡を受けた事故すべて
- 社内に残す
- 1件1行で一覧できる
- 知った日・期限・判定者まで残る
この記事の様式は、報告書の主な欄と同じ順に列を並べてあります。「知った日」を入れると、報告の期限が出ます。報告日を入れると、期限内だったかが表示されます。判定が「重大」になった行を見ながら、そのまま報告書を書き起こせます。
出荷ずみの品を止めるかどうかの判断も要るときは、出荷停止の判断基準とあわせて使ってください。止める範囲と報告の数量がそろいます。
重大製品事故の報告でつまずきやすい点
担当に届くまでに日数が過ぎる
お客様窓口が事故の連絡を受けても、品質保証に伝わるのは週明けの会議、という流れはよくあります。窓口の手順書に、1行だけ足しておきましょう。「火災・けが・一酸化炭素」の3語が出たら、その日のうちに品質保証へ回す、という1行です。これだけで数日を取り戻せます。
輸入品で海外の製造元の回答を待ってしまう
輸入した事業者にも、報告の義務があります。海外の製造元の調査結果を待っていると、10日はすぐに過ぎます。原因は「調査中」として、分かっている事実と数量で先に報告します。
「使い方の問題」と決めつける
欠陥によらないことがはっきりしない限り、製品事故に入ります。社内で使い方の問題だと考えても、裏づける事実がそろうまでは判定中として扱います。期限は数えておくほうが安全です。
よくある質問
- Q. 重大製品事故の報告は何日以内に行いますか?
- 製造・輸入事業者が重大製品事故を知った日から数えて、10日以内です(内閣府令3条)。知った日を1日目として数えます。
- Q. 重大製品事故の報告先はどこですか?
- 消費者庁長官です。報告を受けた内閣総理大臣(消費者庁)は、その内容を、製品を受け持つ大臣にも伝えます(35条3項)。
- Q. けが人がいない事故でも報告が要りますか?
- 火災が起きた場合は、けが人がいなくても重大製品事故の要件に当たります(施行令6条2号)。製品から火が出て周りが焦げた程度でも、判定の対象にしてください。
- Q. 報告しなかった場合の罰則はありますか?
- 報告をしないと、体制を整えるよう命じられることがあります(37条)。その命令に違反すると、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(58条5号)。
- Q. 輸入した製品の事故も報告が要りますか?
- 要ります。報告の義務は、製造した事業者と輸入した事業者の両方にあります(35条1項)。海外から日本の消費者へ直接売る特定輸入事業者の場合、報告書には国内管理人の情報も書きます。
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